研究課題/領域番号 |
23K13922
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
西尾 俊亮 福島大学, 食農学類附属発酵醸造研究所, 特任講師 (20825880)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 苦味受容体 / 苦味ペプチド / 日本酒 / ペプチド-受容体相互作用 / 発酵醸造食品 / タンパク質立体構造予測 / 味覚受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
品の味は、味蕾を構成する味細胞で認識される。味細胞はそれぞれが異なる味覚受容体を発現しており、食品に含まれる呈味物質と結合、活性化することで味覚情報を伝える。呈味物質はその分子量、性質などが多岐にわたるが、味覚受容体は限られた数しか存在しない。発酵醸造食品などの加工食品には苦味ペプチドと呼ばれる原料由来の呈味物質が含まれているが、これらを認識する受容体は未同定で、受容体に認識される機構も不明である。本研究では、日本酒に含まれる苦味ペプチド群をモデルに用いて、苦味受容におけるリガンド-受容体相互作用機構を構造予測と生化学実験とを組み合わせて実証する。
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研究実績の概要 |
食品の味は、生体成分に由来するアミノ酸やペプチドなどの呈味成分によって規定される。ヒトは、呈味成分を味蕾に存在する味細胞によって認識する。苦味は毒物あるいは腐敗物を想起させ、忌避すべきものであるが、一方で食品中の苦味は許容、嗜好される場合も多く、日本酒に含まれる10残基以上の分子量が大きい苦味ペプチドはその味に必須の要素である。本研究は、味覚における苦味ペプチド-苦味受容体の相互作用について、日本酒由来苦味ペプチド群をモデルに用いて、苦味受容体タンパク質との結合を網羅的に解析し、苦味ペプチドの構造的特徴と、受容体への結合活性との相関を明らかにする。 研究計画初年度となる今年度は、3種類の日本酒を用いて、質量分析による含有ペプチドの同定を行った。スピードバックで濃縮、乾固したサンプルを逆相HPLCで粗分画し、各画分をトリプル四重極型質量分析計で測定した。既知の苦味ペプチドであるイネグルテリン由来のペプチドに加え、共通のアミノ末端を持つもののカルボキシ末端が長いものが複数同定された。また、麹菌の細胞壁合成に関わるタンパク質由来の断片も複数同定され、日本酒中に含まれるペプチドは多岐にわたっていることが明らかとなった。 ヒト舌cDNAプールから一部のヒト苦味受容体遺伝子を増幅し、昆虫細胞発現用ベクターpMT/BiP/V5-Hisに挿入した。ショウジョウバエS2細胞へ導入し、細胞における発現を確認した。発現量が少ない苦味受容体については、タンパク質の発現量増加を目的として、Superfolder GFPとの融合タンパク質として発現させるためのコンストラクトを新たに構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販の日本酒から質量分析によって既知の苦味ペプチドを含む複数のペプチドを同定できた。また、コメや麹菌のゲノム情報を利用してオリジナルのデータベースを構築し、それらを参照することでより多くのペプチドが同定可能であると確認した。 LocalColabFoldによる、in silicoでのペプチド-苦味受容体の網羅的構造予測および結合を評価する解析系を立ち上げた。 25種類のヒト苦味受容体遺伝子のうち、17種類はヒト舌cDNAプールからクローニングできた。これらをショウジョウバエS2細胞で発現させるためのコンストラクトを構築し、S2細胞を用いた実験系を構築することができた。このような状況から研究は概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
苦味ペプチドの同定について、昨年度と同様の方法で調製したサンプルを、高精度なZenoTOF 7600システム(AB Sciex)で分析する。これにより、より多くの苦味ペプチドを同定し、異なる日本酒における含有量の違いを明らかにする。 次に、同定したペプチド群と苦味受容体タンパク質とのin silicoスクリーニングを行う。LocalColabFoldに加え、新しく発表されたRoseTTAFold-AAおよびAlphaFold3を用いて構造予測を実施し、複数の手法による予測結果を比較検討することで、ペプチドと受容体の相互作用を多角的に評価する。 一方、一部の苦味受容体遺伝子のクローニングでは、5'および3'末端配列の類似性が問題となっている。そこで、当該遺伝子については人工合成により調製し、コンストラクトを完成させる。さらに、これらの苦味受容体遺伝子を安定発現させたS2細胞株を樹立することで、受容体タンパク質を大量に調製できるようになる。そして、免疫沈降法やBLI法により、ペプチドと受容体の相互作用解析を行う予定である。
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