研究課題/領域番号 |
23K13929
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西村 和紗 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (60835453)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 育種学 / コムギ / 次世代シーケンス / 作物発育モデル / 倍数性 / MIG-seq / 合成六倍体コムギ / 開花期 |
研究開始時の研究の概要 |
コムギにおいて、ゲノミック予測によってある程度の精度で遺伝子型から出穂期を推定することができるようになった一方で、通常のゲノミック予測では既存の遺伝子の組み合わせかつモデル構築のために表現型を取得した環境における出穂期の予測しかできない。本研究では未利用遺伝資源である四倍体コムギ由来の合成六倍体コムギを用いてパンコムギの遺伝的多様性の拡張を行いつつ、作物発育予測モデルの品種固有パラメーターに関するゲノミック予測を行うモデルを構築し、パンコムギの任意の環境における出穂期を自在に制御する育種基盤を整える。
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研究実績の概要 |
本年度は、未利用遺伝資源である四倍体コムギ由来の合成六倍体コムギの出穂期の調査、およびMIG-seqによる遺伝子型の調査を進めた。本年度栽培した、366系統の合成六倍体集団の播種から出穂まで日数は150日~182日であり多様性を示した。MIG-seqによって取得した多型情報と播種から出穂まで日数を用いてGWASを行った結果、複数の有意なSNPが検出された。一方で、MIG-seqの結果、約半数の系統はヘテロ率が高く、他殖している可能性があった。今後は、各系統複数の種子を播種し、MIG-seqによってよって自殖している個体の選抜を進める。 次に、四倍体コムギにのみ分布しているVRN-A3の早生アレルを六倍体コムギに導入するために、新たな組み合わせの合成六倍体コムギの作出を進めたが、この四倍体コムギとタルホコムギとの交雑三倍体が雑種生育不全の表現型を示した。これまでの解析で、雑種生育不全の表現型を示す四倍体コムギ系統を4系統見つけており、四倍体コムギの遺伝資源としての円滑な利用のために、この原因遺伝子や作用機序を明らかにするための解析も並行して行った。四倍体コムギ系統NP29が保有する、雑種生育不全遺伝子に関してファインマッピングを進めた結果、候補領域を2A染色体の超腕側末端の5Mbの領域まで絞り込むことに成功し、この領域には22個の遺伝子が座乗していた。 最後に、ゲノミック選抜を苗の段階で行うための、MIG-seqの手法自体の改良を進めた。未精製DNAからのライブラリー構築を行うことのできるプロトコルの改良を進め、迅速に苗を選抜できる体制を構築することができた。この未精製DNAを用いたライブラリー構築手法およびMIG-seqに対して多型数を向上させることのできる改良法、dpMIG-seqを記載した論文がPlant J.誌に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が2023年度4月に岡山大学へ異動したため、当初計画していた交配を十分に行うことができなかった。現在、人工気象機および圃場条件において、合成六倍体コムギとパンコムギの交配を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の異動に伴い、当初計画していた京都大学農学研究科附属農場における大規模な栽培が困難になっているため、少ない個体数で効率良く作物発育モデルを構築する手法の検討を現在進めている。今後は、遺伝的多様性を維持しながら系統数を効率良く減らすために、合成六倍体集団のコアセットの選抜をMIG-seqのデータを用いて進める。 一方で、岡山大学の植物遺伝育種学研究室において解析を進めている、PCL1遺伝子の機能欠損によって極早生性を示す六倍体コムギなどの、多様な材料を用いることが可能となった。今後は、これまでに作出した合成六倍体コムギと超極早生性を示す六倍体コムギとの交雑を進めて、未利用遺伝資源による出穂期の多様化を進める。 合成六倍体コムギが三倍体の世代で他殖している可能性がある点に関しては、2024年度の秋からの栽培の際に、1系統6個体の苗を作り、苗の段階でMIG-seq解析を適用し自殖個体の選抜を進める。MIG-seqのプロトコルに関しては、未精製のDNAからライブラリーを構築することに成功しており(Nishimura et al., 2024)、苗の段階で問題なく選抜を実施できると考えている。 また、野生エンマーコムギ由来の合成六倍体集団の作出を並行して進めており、30組み合わせの交雑由来の、599個体の3倍体を現在栽培中である。次年度以降はこれらの個体から得られた合成六倍体の活用も進めていく予定である。
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