研究課題/領域番号 |
23K13938
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
寳川 拓生 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 熱帯・島嶼研究拠点, 任期付研究員 (70851260)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
|
キーワード | サトウキビ / 水利用効率 / 群落 / 葉面積指数 / ガス交換特性 / 気孔密度 / 下位葉 / 光合成 / 蒸散 |
研究開始時の研究の概要 |
沖縄では梅雨明け後に干ばつ状態となることや水源が豊富でない地域もあり、サトウキビのCO2固定能・生産性向上には効率的な水利用が必要である。生育期間が長く植物体サイズの大きいサトウキビの水利用効率(WUE)は複雑な要因により成立しており、個葉レベルのWUEに分解して生理学的理解を得る試みは進展していない。そのため、育種選抜に応用可能な形質についても確立されておらず、WUEの改良は停滞している。本研究では、生育ステージ毎に、個葉レベルのWUEを基とした群落内のガス交換WUEプロファイル(垂直分布)を構築し、サトウキビ品種育成に資する高WUEの成立機構の解明を試みる。
|
研究実績の概要 |
沖縄では梅雨明け後に干ばつ状態となることや水源が豊富でない地域もあり、サトウキビのCO2固定能・生産性向上には効率的な水利用が必要である。生育期間が長く植物体サイズの大きいサトウキビの重量ベースの水利用効率(WUE)は複雑な要因により成立しており、ガス交換特性により算出される個葉レベルの水利用効率(PWUE)に分解して生理学的理解を得る試みは進展していない。そのため、育種選抜に応用可能な形質についても確立されておらず、WUEの改良は停滞している。 本研究の目的は、生育ステージ毎に群落構造、葉身形態、群落内のPWUEを調査し、高いWUEを実現する系統の生理学的根拠を明らかにすること、である。本研究では、以下の2つの仮説を検証するために、石垣島にて圃場試験・ポット試験を実施する。仮説①:PWUEは群落内でグラデーションがあり、弱光下の群落下層で低い。仮説②:高WUE系統は、PWUEの低い群落下層への葉身分配が少ない立葉の群落構造を示し、群落下層に分配された葉身の実際の光環境(ambient)下におけるPWUEが低WUE系統に比べ高い。 群落下層のPWUEや形態により高WUEを特徴付けることが出来れば、育種選抜指標としての展開が見込めるだけでなく、水収支・成長モデルの改良の基礎資料となることも期待できる。 令和5年度は、サトウキビ品種群の個葉ガス交換特性から圃場試験用の3品種を選抜した。令和6年度春植え圃場試験向けた苗増殖、光センシングシステムの構築、群落葉面積評価に関する予備試験を実施した。光センシングシステムに関し、サトウキビと同様に大型であるソルガムでの先行研究実績のある広島大学大学院統合生命科学研究科を視察し、アドバイスを得た。加えて、ポット試験によりPWUEの対照的な2品種・系統のガス交換特性の環境応答を詳細に調査し、三重大学にて開催された日本作物学会にて一部発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
圃場試験では、先行研究を基に、以下の測定順序・年次計画に従い、各形質が対照的な3品種の群落PWUEプロファイルを構築する。本研究に必要な計測機器の価格高騰、令和5年度の苗増殖程度等を考慮し、供試品種数を6品種から3品種に、栽培方法を夏植え栽培から春植え栽培に、変更した。なお、これらの変更に伴い、若干の遅れが生じたものの、計測機器や苗の工面はほぼ完了し、最終年度までの本研究の成果の進展が著しく阻害されることはない。 測定順序:1)キャノピーアナライザーおよびライン光量子センサーを用いて葉面積指数および群落内の垂直光分布を測定し、日射利用効率を算出する。2)群落内光分布を基に測定光条件を設定し、PWUEの群落内分布を測定する。3)葉身形態(気孔等)の群落内垂直分布を評価する。4)生育中期に層別刈り取りを行い、群落構造・吸光係数を評価する。5)土壌水分・気象観測データおよび乾物生産量からWUEを得る。6)WUE、PWUE分布、群落構造のデータを整理し、WUEの成立機作について考察する。 年次計画:本研究は以下の通り4か年で春植え栽培を3作期実施し、各調査を行う。1年目(令和5年度):群落環境・土壌水分測定系の確立・試運転。次年度に向けた苗の増殖栽培を実施。2年目(令和6年度):育苗した苗を用いて4月より春植え栽培を開始(1作目)。7-8月に群落調査、2月に収穫調査(1作目)。3年目+4年目:1作目と同様に2作目、3作目を実施する。 令和5年度は、サトウキビ品種群の個葉ガス交換特性を調査し、前年度、前々年度の結果と併せて圃場試験用の3品種を選抜した。また、令和6年度春植え圃場試験向けた苗増殖、光センシングシステムの構築、群落葉面積評価に関する予備試験を実施した。加えて、ポット試験によりPWUEの対照的な2品種・系統のガス交換特性の環境応答を詳細に調査した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究に必要な計測機器の価格高騰、令和5年度の苗増殖程度等を考慮し、供試品種数や栽培方法を一部変更した。なお、これらの変更に伴い、若干の遅れが生じたものの、計測機器や苗の工面(他の研究室からの貸出、別センサーの購入、県内の別の増殖圃場からの採取)を進める等して対応可能であるため、最終年度までの本研究の成果の進展が著しく阻害されることはない。 令和6年度は4月に育苗した苗を定植して春植え栽培を開始する(1作目)。7-8月に層別刈り取りによる群落調査、2月に収穫調査(1作目)を実施する。その間、定期的に群落葉面積測定、光分布調査、個葉ガス交換測定、を行う。令和7年度以降は、1作目と同様に2作目、3作目を実施する。得られた成果を基に国際学会発表、国際誌への論文投稿を目指す。
|