研究課題/領域番号 |
23K13954
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大津 美奈 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80913590)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 植物寄生性線虫 / シストセンチュウ / 抵抗性 / 抵抗性遺伝子 / 生物間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
植物寄生性線虫の一種であるシストセンチュウに対する抵抗性メカニズムは殆ど明らかになっていない。そこで、本研究ではマメ科植物のシストセンチュウに対する抵抗性遺伝子の同定と線虫感染時におけるそれら抵抗性遺伝子の細胞内動態を知ることを目的とする。そのため、マメ科のモデル植物であるミヤコグサとクローバーシストセンチュウを用いて、シストセンチュウ抵抗性遺伝子を同定・解析するためのプラットフォームとなる実験系を確立し、その後、得られた候補遺伝子がどのように抵抗性を引き起こすのかを顕微鏡観察によって調べる。
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研究実績の概要 |
植物寄生性線虫の一種であるシストセンチュウは、世界の農業現場で甚大な被害をもたらす。重要な病害虫であるシストセンチュウ対する抵抗性メカニズムを理解することは、防除を考える上で必要不可欠であるが、シストセンチュウに対する抵抗性メカニズムの大部分は明らかになっていない。そこで、本研究では、シストセンチュウに対するマメ科植物の抵抗性メカニズムの全容解明を目指し、マメ科植物におけるシストセンチュウに対する抵抗性遺伝子の同定と、シストセンチュウ感染時におけるそれら抵抗性遺伝子の細胞内動態を知ることを目的とする。 そのために、まず、本研究ではマメ科のモデル植物であるミヤコグサ(Lotus japonicus)とミヤコグサを宿主とするクローバーシストセンチュウ(Heterodera trifolii)を用いて、シストセンチュウ抵抗性遺伝子を同定・解析するためのプラットフォームとなる実験系を確立する。そして、ゲノム情報の明らかになっているミヤコグサ野生系統100種を用いた接種実験と抵抗性の鍵となる細胞内免疫受容体NLR (Nucleotide binding-leucine rich repeat)に着目した比較ゲノミクス解析を組み合わせて、シストセンチュウに対する抵抗性遺伝子を単離する。その後、得られた候補遺伝子がどのように抵抗性を引き起こすのかを調べるため、シストセンチュウ感染時・非感染時の候補遺伝子の細胞内動態を顕微鏡下で観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、主にクローバーシストセンチュウに抵抗性を示すミヤコグサ系統の探索のために接種試験を効率よく行う方法について模索し、ミヤコグサ野生系統への接種試験を行なった。シストセンチュウの抵抗性を調べる際には(1)植物へ侵入できるか、そして(2)植物内で雌成虫へと成長できるかという2つのポイントがあり、このどちらかを満たすものが抵抗性を持つ植物であると考えられる。申請者はまず、ミヤコグサの実験系統であるMG20、Gifu B-129、そしてL. japonicusの近縁種であるLotus brutiiを用いてクローバーシストセンチュウの接種を行った。その結果、クローバーシストセンチュウは、MG20だけでなくGifu及びL. burtiiの根の内部においても雌成虫へと成長することがわかり、ミヤコグサの主な実験系統3種類は全て罹病性であることが示唆された。次に、ミヤコグサの野生系統16種類を用いて接種実験を行なった。その際にはMG20及びgifuを対照区として用いた。まず、クローバーシストセンチュウのミヤコグサ野生系統の根への侵入率を確認したところ、野生系統と罹病性であるMG20及びGifuの間に差は見られず、全ての植物においてクローバーシストセンチュウの侵入が観察された。次に、抵抗性・罹病性の指標である感染したシストセンチュウの雌成虫への変態割合をそれぞれの野生系統と対照区であるMG20について確認した。その結果、MG20と比較して、雌成虫の数が少ない野生系統がいくつか見られ、これらの野生系統(MG12、MG19など)は抵抗性遺伝子を持つ可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きミヤコグサ野生種を用いて、抵抗性・罹病性の判別を行う。そして、見出された抵抗性および罹病性のミヤコグサ系統間で、NLR遺伝子に着目したゲノム比較解析を行い、抵抗性の原因遺伝子の探索を行う。100種のミヤコグサ野生系統の系統では、NLR受容体遺伝子のアノテーションは不十分である。そこでまずは、それぞれのミヤコグサ系統の持つNLR遺伝子群をNLR-trackerによってアノテーションし、各系統の持つNLRを同定する。そして、罹病性と抵抗性系統がそれぞれ持っているNLR遺伝子群を比較することで、クローバーシストセンチュウの抵抗性に寄与しているセンサーNLRおよびヘルパーNLRの同定を行う。さらに、同定されたNLRが線虫感染時・非感染時にどのような挙動を示すのかをライブイメージングによって解析する。具体的には、まず見出したNLR遺伝子に蛍光タンパク質を融合させたコンストラクトを準備する。そして、A. rhizogenesによる形質転換法を用いてミヤコグサの毛状根に上記のコンストラクトを一過的に過剰発現させ、共焦点顕微鏡下で観察する。そして、線虫感染時のNLRの局在変化を確認するため、毛状根に線虫を感染させ、NLRの局在がどのように変化するのかを観察する。
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