研究課題/領域番号 |
23K13959
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
富田 駿 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00909343)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 生物的防除 / 非リボソーム型ペプチド / NRPS / メタゲノム / バイオコントロールエージェント / 活性汚泥 / 粘液細菌 / 生物防除 / 非リボソームペプチド / 非リボソームペプチド合成酵素 / バイオコントロール細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
バイオコントロールエージェント(BCA)を用いた農作物病害の防除は化学農薬の代替として期待されている。中でも非リボソームペプチド(NRP) を産生する細菌種は、植物病原菌に対して広範な生育阻害活性を示し、生物防除活性に重要な役割を担う。 従来のNRP産生菌の探索は、培養法により純粋分離しバイオコントロール活性を評価するという手法により行われてきたが、実際の環境中で機能しうる有用菌株が埋もれてしまう可能性がある。そこで本研究では、環境メタゲノム情報から新奇非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)遺伝子群を有するBCA候補を効率的に発見し、その代謝機能に基づき狙い撃ちして培養化することを目指す。
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研究実績の概要 |
初年度は、環境由来メタゲノム情報から新奇NRPS候補遺伝子を抽出し、菌株保存機関に登録されている微生物株の公開ゲノム情報に基づき候補遺伝子を有する微生物株を選抜してその生理活性を評価するという戦略により、環境中に埋もれた新奇バイオコントロールエージェント(BCA) の探索をおこなった。都市下水処理施設由来の活性汚泥のショットガンメタゲノム配列から再構築した180 個のドラフトゲノム(Bin)のantiSMASH 解析により、データベースに登録のない64 個の新奇NRPS を発見した。NRPSを保有するBinの門レベルでの分類学的分類については、上位3門としてProteobacteria、Myxococcota 、Bacteroidotaに属していた。その中で、まずProteobacteria のBurkholderiales目に分類された2つのBinが保有する新規NRPSに着目した。本NRPSをBlastpによる相同性検索を行い、その相同性が上位の菌株のNRPSアミノ酸配列を用いて、NaPDoSにより既知NRPSも含めた分子進化系統樹を作製した。その結果、得られたBinの新規NRPS遺伝子とその近縁の遺伝子群が単系統群を形成した。本系統群のうち、国内菌株保存機関に登録されている3株を用いて灰色かび病菌に対する抗真菌活性を評価したところ、全株で活性を確認できた。 さらに、上記メタゲノム解析によりNRPSを豊富に保有することが明らかになったMyxococcota門細菌(粘液細菌)の分離に取り組み、活性汚泥からは初となる粘液細菌 Corallococcus sp. KH5-1, NO1株の分離に成功した。また、KH5-1株、NO1株の培養液抽出物は、一部の植物病原菌に対して抗菌活性を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究実施計画に従い、「新奇NRPを生合成するBCAのメタゲノム情報からの発掘」「新奇BCA候補株のトマト病原菌に対する生育阻害活性評価」を実施した。「新奇NRPを生合成するBCAのメタゲノム情報からの発掘」においては、活性汚泥のショットガンメタゲノム配列から再構築した180 個のドラフトゲノム(Bin)のantiSMASH 解析から、データベースに登録のない64 個の新奇NRPS を発見した。また、「新奇BCA候補株のトマト病原菌に対する生育阻害活性評価」においては、見出した新奇NRPSのうち、Proteobacteria のBurkholderiales目に分類された2つのBinが保有する新規NRPSに着目し、これらのBinと相同性の高い既存の分離培養株を取得し、それらの灰色かび病に対する生育阻害活性を確認することができた。また、新奇NRPSを豊富にもつことが推定された粘液細菌群の分離培養にも成功し、これら分離株の植物病原菌に対する抗菌活性を確認できた。 以上の点から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「新奇NRPを生合成するBCAのメタゲノム情報からの発掘」「新奇BCA候補株のトマト病原菌に対する生育阻害活性評価」を引き続き実施しさらなるNRP産生BCA候補株を探索するとともに、得られたBCA候補株について、「トマト苗への新奇BCA候補株接種試験による発病抑制効果の検証」「新奇NRPの生成および化学構造の同定」を実施することで、新たな植物病害防除技術の創生を目指す。
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