研究課題/領域番号 |
23K13960
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上山 拓己 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (70974111)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 内部寄生蜂 / ニホンアソバラコマユバチ / 飼い殺し型寄生 / キイロショウジョウバエ / 細胞死 |
研究開始時の研究の概要 |
寄生蜂は、それぞれの種には特異的な宿主となる種が存在する一方で、宿主にごく近縁な他種であっても、寄生に抵抗性をもつ「非宿主」の存在が報告されている。このような寄生蜂の寄生成立の可否を決定づける分子基盤は未解明である。 本研究では、キイロショウジョウバエを宿主とする寄生蜂 Asobara japonica と、キイロショウジョウバエでは寄生が成立しない寄生蜂 Asobara rossica をモデルとし、解析を行う。宿主における寄生成立メカニズムと非宿主における寄生蜂抵抗性に着目し、 寄生の分子基盤を包括的に理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
Asobara japonica は、キイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster を含む多くのショウジョウバエ属昆虫に寄生を行う内部寄生蜂である。これまでの研究から、A. jcaponica はキイロショウジョウバエの幼虫に感染した際、卵と共に毒を打ち込み、特定の細胞腫においてアポトーシス、オートファジー、細胞分裂の停止を誘導することがわかった。 本年度の解析の結果、A. japonica 感染後に起こるアポトーシス、オートファジー、細胞分裂に必須の役割を果たすA. japonica の毒遺伝子を二つ同定した。この毒遺伝子をターゲットとしたRNAi 法による機能抑制実験の結果、毒遺伝子のノックダウンによりアポトーシス、オートファジー、細胞分裂の停止の全てが抑制されることがわかった。 A. japonica の寄生成功における毒遺伝子の機能を解析すために、毒遺伝子ノックダウンA. japonica を用いた感染実験を行った。野生型A. japonica を感染させた宿主幼虫からはショウジョウバエ幼虫が全く羽化しなかったのに対して、毒遺伝子をノックダウンしたA. japonica を野生型ショウジョウバエに感染させた結果、少数ではあるがショウジョウバエ成虫が羽化した。さらに、A. japonicaの毒遺伝子のノックダウンによる細胞死の抑制と、ショウジョウバエの変異体を用いた免疫系の強制的な活性化を組み合わせることで、A. japonica 感染後の宿主ショウジョウバエの羽化率が大幅に上昇した。これらの結果から、同定した二つの毒遺伝子はA. japonicaの寄生成功に重要な役割を果たす因子であると結論づけ、成果をまとめた論文を現在投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、A. japonica の寄生成功に必要な毒タンパク質に同定に成功した。この毒タンパク質に対する高感度抗体の作出にも成功し、A. japonica体内における毒タンパク質の細胞内局在の可視化および、産卵菅から分泌された毒液内からの検出を行うことができた。この毒タンパク質の寄生における機能解析も順調に進行した。これらの結果をまとめた論文を現在執筆中であり、投稿までの目処が立っているため全体として概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
同定した毒遺伝子の機能をより詳細に解明するために、毒遺伝子を発現するショウジョウバエ系統の作出および過剰発現実験を行う。これにより、毒遺伝子のがアポトーシス、オートファジー、細胞分裂の停止を誘導する宿主側のメカニズムをより詳細に解析する。 また、解析の過程において、A. japonica の毒タンパク質による細胞死の誘導は宿主免疫応答の抑制作用と組み合わさることで寄生成功に多大な影響を与えることが示唆された。そのため、A. japonica によるショウジョウバエの免疫抑制メカニズムが寄生成功に重要であると考え、A. japonica 毒による免疫抑制の分子メカニズムの解明および毒本体の同定を行う。
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