研究課題/領域番号 |
23K13967
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 冴月 京都大学, 情報学研究科, 助教 (80867656)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 外来種 / 環境DNA / メタバーコーディング / 魚類群集解析 / 胃内容解析 / コウライオヤニラミ / 群集 / 遺伝的かく乱 |
研究開始時の研究の概要 |
人や物の移動がますます活発化している今日、在来生態系は常に国外・国内からの新たな外来種の侵入の脅威に晒され続けている。しかし現状では、時間および労力的な制約により、外来種の侵入・拡散速度に対して、その対策はもちろん、在来種や在来個体群への影響評価もほとんど追い付いていない。そこで本研究では、省労力かつ高感度な生物調査手法として社会に浸透しつつある環境DNA分析を、より迅速かつ効率的な群集および遺伝子レベルでの外来種による在来種への影響評価手法として昇華させ、その把握や管理、予防に役立てることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、宮崎県大淀川水系における外来種コウライオヤニラミの分布状況の把握と、本種が魚類群集構造に与える影響の評価に取り組んだ。大淀川ダムより上流域に55地点の調査地を設定し、環境DNA分析のための採水調査を実施した。得られた環境DNA試料は、魚類環境DNA定量メタバーコーディングに供し、コウライオヤニラミおよびその他生息する魚類のDNA濃度を推定した。その結果、コウライオヤニラミの環境DNAが調査を行った大淀川ダムより上流のほぼ全域から検出され、本種が2017年の侵入以来、本流を通じて水系内の広い範囲に分布を拡大していることが明らかとなった。また、得られた魚類相の定量データを用いた群集解析では、コウライオヤニラミの在・不在、流域区分(上・中・下流)、およびこれらの交互作用が魚類群集構造に有意な影響を与えていることが示唆された。さらに、各魚種とコウライオヤニラミのDNA濃度を1:1で比較し、dHSIC(distance Hilbert-Schmidt Independence Criterion)により非線形関係を含む対の関係を評価したところ、9種において負の有意な関係が見いだされた。 大淀川支流の沖水川にて個体を捕獲し、胃内容調査を実施したところ、複数の魚類やエビ類、水生昆虫などが検出された。魚類については、個別にDNAを抽出し、MiFishプライマー(Miya et al. 2015)を用いた種判別を行った。その結果、環境DNA分析でも負の影響が示唆されたカマツカやオイカワなどが検出され、これらの種が捕食の影響を受けていることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた野外調査および環境DNA分析による群集解析を完遂することができた。また、胃内容解析は当初の計画に含まれていなかったが、協力者の参画により実現することができ、環境DNA分析の結果を補強する結果が得られた。さらに、コウライオヤニラミの環境DNAが研究計画時における想定よりも非常に広範囲から高濃度で検出され、本種の急激な分布拡大が示唆された。そのため、早急に本種の侵略性の高さについて警鐘を鳴らす必要性を感じ、初年度の成果を論文にまとめ、国際誌に投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
コウライオヤニラミの分布拡大モニタリングおよび、他水系への侵入監視のため、初年度に調査を行った55地点、および周辺の他水系も含め新たに設定する50地点の計105地点での環境DNA調査を実施する。また、コウライオヤニラミの遺伝的多様性についても環境DNA分析を用いて検討を行う。さらに、本種の生息適地モデリングにも着手し、九州全域における定着リスクについても検討を行う。
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