研究課題/領域番号 |
23K13970
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
森井 清仁 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 特別研究員 (10964249)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 分蜂 / ニホンミツバチ / 繁殖行動 / 保全 / 気候変動 |
研究開始時の研究の概要 |
「分蜂」は、ニホンミツバチが自然下でコロニー数を増やす唯一の手段である。事前調査により、1コロニーあたりの平均分蜂回数が、ここ20年で増加傾向にあることが示されたが、分蜂回数の増加はミツバチの存続に必ずしも有利であるとは限らない。本研究では、全国のニホンミツバチ飼育者から多量のデータを収集し「分蜂回数が増加した要因」および「分蜂後のコロニー生残率」について検証する。これらの結果をもとに、ミツバチの集団動態の将来予測のため、長期変動モデルを構築する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ニホンミツバチの分蜂回数が増加した要因と、その将来的な影響を評価することを目的としている。2023年度の研究成果は、①過去の分蜂データの解析および論文執筆と②分蜂データの収集の2つに大別される。 ①では、20名のニホンミツバチ養蜂者から集めた過去の分蜂データについて、コロニーごとの分蜂回数が2000年から2022年の間にどの程度変化したか、ベイジアンGLMにより解析した。その結果、分蜂回数は緩やかに増加(年間約1.03倍)したことが示された。また、解析した23年間で、分蜂開始日は早まったと推定された(平均して年間約0.44日)。さらに、一年の内、早い時期に分蜂を開始したほうが分蜂回数が多くなることが示された。特に、3月に分蜂を開始したコロニーの分蜂回数は、4月以降に分蜂を開始した場合よりも多く、分蜂開始日が早まったことで、ニホンミツバチの分蜂回数が増加した可能性が考えられた。近年、日本において冬から早春にかけての気温が上昇していることを考慮すると、採餌ができない低温期が短縮され、多くのワーカーが死亡することなく分蜂時期を迎えることが分蜂回数の増加の要因であると推察された。 ②では、2023年に分蜂したニホンミツバチ、336コロニー分のデータを計32県から収集した。「分蜂回数を決定する要因は何か」について検証するため、各コロニーの分蜂回数に加えて、2022年の飼育状況や分蜂前のワーカー数の指標である「巣の体積」など、コロニーの基礎的な情報を集めた。また、分蜂回数は巣の体積に有意な正の効果(GLM; Wald test, P<0.001)を受けており、ニホンミツバチの分蜂回数を決定する要因の一つは、分蜂前のワーカー数であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニホンミツバチ養蜂者が記録していた過去の分蜂回数・時期に関するデータを解析し、まとめることで、論文として公開した。これにより、計画段階で予定していた「過去の分蜂回数の変化」に関する研究は完了した。 本研究の計画段階では「ニホンミツバチ養蜂者から多量のデータを収集する」と予定していた。2023年の分蜂データを収集するために、ニホンミツバチ養蜂者に調査の協力を呼び掛け、200名弱の養蜂者に調査協力者として登録していただいた。そのうち、116名、計336コロニー分の分蜂データが集まった。ミツバチ属の分蜂を扱う上で、本研究のデータ数は世界最大規模であり、多量のデータを収集するという当初の計画通り研究が進行したと言える。 また、分蜂回数がコロニー生残率に与える影響を評価するために使用するデータとして、分蜂時のワーカー数の指標「分蜂蜂球(ワーカーが半球状に集合したもの)の体積」を養蜂者のデータから計507コロニー分について計算した。なお、コロニー生残率は、調査対象群を追跡する次年度の調査でデータを集めるため、解析は今後実施する。現時点で、当初計画していたデータは不足なく集まっており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度収集した分蜂データと土地利用情報や気象条件を結び付け、分蜂回数を決定する要因を一般化線形混合モデル(GLMM)により推定する。土地利用情報は、国土地理院のGISデータ、気象条件は農研機構のメッシュ農業気象データシステムのデータをそれぞれ利用する。この解析には、分蜂前のワーカー数の指標である巣の体積をモデルに組み込む。 さらに、分蜂データを収集したコロニーを対象に、その後の生残状況についてデータを収集する。コロニー生残率のデータを得た後、分蜂回数、分蜂時のワーカー数の指標である分蜂蜂球のサイズ、気象条件などをモデルに組み込み、分蜂回数がコロニー生残率に影響するか検証する。これら両モデルの結果をまとめ、論文として国際学術誌に投稿する。
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