研究課題/領域番号 |
23K13971
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
瀬古 祐吾 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 特別研究員 (60964236)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 真社会性 / 殺虫剤 / 行動 / 社会性昆虫 |
研究開始時の研究の概要 |
真社会性生物では、コロニーにとっての有害因子をもつ個体と他個体との相互作用が弱くなるような行動変化が観察され、結果的にコロニーの崩壊リスクを低減することが示唆されている。殺虫剤に曝露した個体も行動変化を示す一方、そのような行動変化が個体間の相互作用やコロニー内における殺虫剤の伝播、すなわちコロニーの存続/崩壊に与える影響については知られていない。本申請課題ではアリ類を対象とし、殺虫剤に曝露した働きアリの行動変化に着目することで、コロニーレベルにおける殺虫剤の作用機序について理解を深める。
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研究実績の概要 |
殺虫剤は個体間の接触を介してアリ類のコロニー内に伝播するため、コロニーメンバー間の相互作用の変化は、メンバーの生存率に影響する可能性が高い。本研究では以下の2つの仮説を検証するため、殺虫剤にばく露されていないコロニー(対照群)と、一部が殺虫剤にばく露されたコロニー(処理群)を用いた実験を行い、アリのコロニーにおける殺虫剤の作用機構について理解を深める。(1)殺虫剤にばく露されたメンバーはその他のメンバーとの相互作用が変化する。(2)その結果、コロニー内における殺虫剤の伝播が抑制され、コロニーメンバーの死亡が抑制される。 本年度は、主にトラッキングシステムのセットアップを進めたほか、トビイロシワアリのワーカー25個体のみで構成されたコロニーを用い、仮説(1)を予備的に検証した。処理群のコロニーメンバーのうち5個体に殺虫剤フィプロニルを経口ばく露させ、対照群のコロニーメンバーのうち5個体にはスクロース溶液を与えた。それらのコロニーを、巣および採餌エリアに二分された透明アクリルケース内に封入し、24時間撮影した。トラッキングソフト(anTraX)を用い、動画に映る各個体の位置座標データを取得した結果、殺虫剤にばく露した個体はその他の個体に比べ、巣外における滞在時間が長くなる傾向にあったことから、殺虫剤にばく露された個体はその他コロニーメンバーとの接触機会が減少したと考えられた。この結果は、仮説(1)を支持する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
トラッキングシステム等の研究計画を一部変更したため、本年度はそのセットアップに多くの時間を費やすこととなり、当初に予定していたデータの取得が遅延している。その一方、新たに実装した動画解析手法を用いることで、当初の想定よりも精緻な行動データを取得することが可能となった。次年度は、実験に使用するアリ類が準備でき次第、データを取得し、初年度の遅れを取り戻す。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、トビイロシワアリおよびトビイロケアリの女王1個体、ワーカー25個体およびブルード5個体で構成された実験コロニーを使用し、上述した処理条件で実験を行う。得られた位置座標データから個体間距離や接触頻度、接触時間等といった行動データを算出し、処理間で比較することにより、仮説(1)の検証に努める。また、仮説(2)の検証に向け、一部が殺虫剤にばく露された実験コロニーを狭小な実験容器に封入することで、ばく露個体とその他メンバーとの接触機会を制御する。上述した実験容器でも同様の操作を行い、コロニーメンバーの生残率を比較することで、コロニーメンバー同士の接触機会が殺虫剤の伝播に与える影響を評価する。
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