研究課題/領域番号 |
23K13981
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
柴田 嶺 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00802654)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ブナ / 天然更新 / 更新補助 / 広葉樹 / 間伐 / 薪炭林 / 森林管理 |
研究開始時の研究の概要 |
日本海側の多雪地を中心に広く分布するブナ二次林において、家具などに用いられるブナ材の生産が期待されている。しかし、これまで輸入に依存してきたブナ材の生産を国内のブナ二次林で実現するためには多くの課題が残されている。特に、低木層が発達した国内のブナ二次林において、伐採後に確実にブナ林を再生することは容易ではない。本研究は、ブナ二次林の間伐事業が進められている新潟県魚沼市大白川地区を対象に、ブナ二次林における間伐がブナの実生・稚樹の成長に与える影響について、低木樹種による被陰効果の違いに着目して調査・解析することで、ブナ二次林において天然更新施業を成功させるための鍵となる要因を明らかにする。
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研究実績の概要 |
初年度はブナ上層木の間伐からの経過年数の違いと、ブナ豊作年に合わせた林床植生層・低木層の刈り払い処理が、ブナ当年生実生の生存・成長・翌年への投資量に与える影響について明らかにすることを目的とした。2019年から2023年の各年度に間伐が実施された林分および未間伐林分を対象に、ブナ当年生実生の生存率・幹直径・冬芽長および地上部・地下部バイオマス配分を調査した。加えて、各林分の林床の光環境および林床植生層・低木層の調査を行った。 その結果、間伐からの経過年数が大きい林分、特に3、4年以上経過した林分では林床植生層・低木層が著しく繁茂するため林床の光環境が悪くなり、ブナ実生の生存率・成長量が低下するが、林床植生層・低木層の刈り払い処理を行うと生存率、幹直径の成長量、そして冬芽長(翌年への投資量)が大幅に増加することが示された。また、ブナ当年生実生は光環境が良好な場所では地下部バイオマスへの投資を増加させることが明らかとなった。そのため、間伐と刈り払い処理により光環境が改善した環境下では、根系を発達させることで2年目以降の成長量がさらに増大する可能性が示唆された。 これら結果から、間伐から3、4年以上が経過し下層植生が繁茂した林分において、豊作年に合わせて優先的に林床植生層・低木層の刈り払い処理を行うこと、そして間伐直後で下層植生が少ない林分であっても、可能な範囲で豊作年に合わせた刈り払い処理を行い、光環境を少しでも改善しておくことが有効な更新補助作業であると考えられた。 一方、上層木の間伐を実施していない林分は林床の光環境は非常に悪く、林床植生層・低木層の刈り払い処理を実施しても光環境はほとんど改善されなかった。そのため、未間伐林分の林床植生層・低木層の刈り払い処理はブナ当年生実生の生育状況改善効果は非常に小さく、効果的ではないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に加えてブナ実生の冬芽サイズ(次年度への投資量)と地下部バイオマス量の調査を実施し、間伐と林床の刈り払い処理により光環境が改善されると冬芽と地下部バイオマスへの投資量が増加することが明らかとなるなど、当初の計画以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は(1)豊作の後に間伐が実施された林分(2023年度間伐林分)におけるブナ実生の2年目の生存・成長を継続調査することで、生育途中に光環境が大幅に改善した場合のブナ実生の応答を明らかにすること、(2)ブナ実生の1年目の冬芽サイズ・地下部バイオマス量と2年目の成長量との関係性を明らかにすること、(3)低木層を構成する各樹種の形質を調べることで、それぞれの樹種の被陰効果(ブナ実生に対する生育阻害効果)の大きさを定量化すること、の3点を中心に調査・分析を行う。
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