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塩性湿地の生物生産に対する難分解性多糖類の貢献度評価:実験的手法による再検討

研究課題

研究課題/領域番号 23K14007
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分40030:水圏生産科学関連
研究機関島根大学

研究代表者

川井田 俊  島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60743581)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード塩性湿地 / 底生動物 / 安定同位体比 / セルロース分解能 / 濃縮係数 / 生物生産 / 難分解性多糖類 / カニ類 / セルロース分解酵素 / 飼育実験
研究開始時の研究の概要

塩性湿地では,セルロースに富む難分解性多糖類が環境中の主要な有機物源となっている。そのため,塩性湿地の生物生産構造を正確に評価するためには,難分解性多糖類が塩性湿地の代表的な生物群であるベントスにどの程度利用されているかを実験的に検証する必要がある。しかし,塩性湿地においては,上記のような実験的アプローチにもとづく研究は世界的にみてもまだほとんど行われていない。このような中,本研究は,これまで過小評価されきた可能性の高い塩性湿地の生物生産に対する難分解性多糖類の貢献度を,塩性湿地特有の生物濃縮過程を考慮して正確に評価することで,塩性湿地の高い生物生産性維持の主要なメカニズムを明らかにする。

研究実績の概要

耐塩生植物が生育する塩性湿地は陸と海の生態系をつなぐ連結点であり、そこに棲む多様な底生動物(ベントス)によって高い生物生産性が維持されることで、多くの生態系サービスが提供されている。しかし、塩性湿地の主要な有機物源である高等植物由来のセルロースを主成分とする多糖類(以下、難分解性多糖類)が、ベントスの餌資源やその後の高次生産にどの程度寄与しているのかについては直接的な検証がされておらず、塩性湿地の生物生産構造の実態はまだほとんどわかっていないのが現状である。そこで本研究では、塩性湿地の代表的なベントスであるカニ類を対象に、難分解性多糖類の利用能の高い種を特定するとともに、それらの成育(二次生産)に対する難分解性多糖類の寄与率を室内飼育実験により検証する。また、難分解性多糖類を同化するカニ類の高次生産への貢献度を明らかにするために、魚類の食性解析を行う。これらの実験的アプローチを主体とした研究により、塩性湿地の生物生産に対する難分解性多糖類の重要性を再評価することを目的としている。
本年度は、難分解性多糖類の分解・利用能をもつカニ類を特定するために、三重県津市の田中川干潟の塩性湿地を調査地とし、そこに生息するカニ類とそれらの餌となり得る有機物(堆積有機物、懸濁有機物、底生微細藻類、ヨシなど)を採取し、炭素・窒素安定同位体比分析を行った。
その結果、塩性湿地には、ヨシなどに由来する難分解性多糖類を餌として利用するカニ類(ハマガニやフタバカクガニ、クロベンケイガニ、アカテガニ、クシテガニなど)が存在することが示された。一方、干潟に生息するカニ類は、主に底生微細藻類を餌として利用していると考えられた。これらのことから、塩性湿地には難分解性多糖類の利用能が高いカニ類が多く存在することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

育児休暇取得に伴い、本年度に予定していたセルロース分解酵素活性測定を行うことができなかった。分析用サンプルはすでに採集・調製済みのため、2024年度に測定を行う予定である。

今後の研究の推進方策

本年度の研究により,塩性湿地には難分解性多糖類を利用するカニ類が多く生息することがわかった。今後は、難分解性多糖類が塩性湿地の生物生産にどの程度寄与しているのかを評価するための室内飼育実験および分析を行う。来年度は,カニ類-餌特有の濃縮係数(餌と捕食者間の安定同位体比の差)を算出するために,塩性湿地の難分解性多糖類の主な供給源であるヨシ,底生微細藻類,動物性タンパク質の3種類の餌となり得る有機物を用いて室内飼育実験を行い,カニ類と餌の炭素・窒素安定同位体比の経時的な変化を測定する。そして,本年度に得られた炭素・窒素安定同位体比と本研究で得られる濃縮係数の値をもとに統計解析を行い,カニ類による各種有機物の利用度を算出する。これにより、カニ類の餌としての難分解性多糖類の貢献率を算出する予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Food habits of fishes in salt marsh estuaries in the western Seto Inland Sea, Japan2024

    • 著者名/発表者名
      Nanjo K.,Kawaida S.,Doi H.,Yamamori T.
    • 雑誌名

      Ichthyological Research

      巻: 71 号: 2 ページ: 305-316

    • DOI

      10.1007/s10228-023-00936-y

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] First record of the sea cucumber Holothuria (Selenkothuria) erinaceus Semper, 1868 (Holothuroidea: Holothuriida: Holothuriidae) from a Japanese mangrove forest2023

    • 著者名/発表者名
      Kawaida, S., Yamana, Y., Tanita, I., Nanjo, K.
    • 雑誌名

      Laguna

      巻: 30 ページ: 61-70

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 中海・宍道湖における広域調査,モニタリング調査の概要と時間的・空間的な水質・底質環境2024

    • 著者名/発表者名
      瀬戸浩二・安藤卓人・仲村康秀・香月興太・金 相曄・川井田俊・辻本 彰・入月俊明・山口啓子・倉田健悟・南 憲吏
    • 学会等名
      島根大学 エスチュアリー研究センター(EsReC) 第31回汽水域研究発表会 汽水域研究会 第12回例会 汽水域合同研究発表会2024
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 2021 年広域調査: 河川調査チーム成果報告2024

    • 著者名/発表者名
      安藤卓人・金 相曄・仲村康秀・川井田俊・林 昌平
    • 学会等名
      島根大学 エスチュアリー研究センター(EsReC) 第31回汽水域研究発表会 汽水域研究会 第12回例会 汽水域合同研究発表会2024
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] サワガニは本当に雑食性なのか?:安定同位体比分析とDNA メタバーコーディングによる検証2024

    • 著者名/発表者名
      川井田俊・仲村康秀
    • 学会等名
      島根大学 エスチュアリー研究センター(EsReC) 第31回汽水域研究発表会 汽水域研究会 第12回例会 汽水域合同研究発表会2024
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ベントスの生息場としての塩性湿地の機能の解明:野外実験的アプローチ2023

    • 著者名/発表者名
      川井田俊,木村妙子,伊藤龍之介,HU PINYI
    • 学会等名
      2023年日本プランクトン学会・ベントス学会合同大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 宍道湖・中海におけるイサザアミ属(アミ目アミ科)2種の個体群動態解明2023

    • 著者名/発表者名
      仲村康秀・福山真菜・山口啓子・川井田俊,小木曽映里
    • 学会等名
      2023年日本プランクトン学会・ベントス学会合同大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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