研究課題/領域番号 |
23K14013
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
金 東仁 近畿大学, 水産研究所, 博士研究員 (80890946)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | マダイ / 個体発生 / 成長速度 / 遺伝育種 / 交雑第2世代 / QTL解析 / 選抜育種 / マーカーアシスト / エネルギー代謝速度 / 品種改良 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでのマダイの選抜育種法は、古典的な選抜育種法に依存していたため、選抜系統マダイと天然マダイの成長速度の違いをもたらす生理的特性やゲノム情報を利用した遺伝的な決定機構については未だに不明なままである。本研究では、選抜系統マダイと天然マダイの整理特性や成長速度の違いをエネルギー代謝速度と体サイズの関係を表す代謝スケーリング(metabolic scaling)と呼ばれる研究手法により比較し、順遺伝学手法により成長速度を決めるゲノム領域の特定を目指す。本研究によって効率的に優良経済形質を選抜育種する技術として、大いに貢献し得ると期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、魚類の成長速度に影響を及ぼす機構を解明することを目指し、マダイを対象として研究を行っている。成長速度は個体によって異なり、その背後にある代謝や成長の制御メカニズムは未だ解明されていない。そこで、本研究では、成長速度を決定するゲノム領域を特定するために、マダイの成長速度が約2倍速い選抜系の育種マダイと非選抜系の天然マダイを交配し、交雑第1世代(以下、F1世代)を作出し、さらにF1同士を交配して交雑第2世代(以下、F2世代)を用いて表現型データを収集しているところである。また、個体発生に伴う成長速度と代謝に関わるゲノム領域が異なる可能性を確認するため、すべての個体に個体識別タグを入れて飼育を続けている。魚類の代謝は様々な環境要因の影響を受けやすいことから、その成長や生活史において環境が重要な役割を果たしている。そこで、生理的形質である代謝と成長速度の関連性を調べる戦略の一つとして、飼料の魚粉含量や水温の変化など、環境条件を変化させて集団と家系による成長速度の違いをゲノム解析を用いて調べた。その結果、魚粉の含有量や水温の変化に関わらず、特定の親から無魚粉給餌条件下においても成長速度が速い個体が確認された。この結果は、高水温耐性の実験でも同様の傾向が見られた。以上の結果から、代謝という形質は、成長速度と同様に次世代に遺伝する可能性が考えられる。今後の研究では、ゲノム解析を用いて成長速度と代謝に関与するゲノム領域を探索する予定である。具体的には、成長速度と代謝に関与するゲノム領域をF2世代を用いてQTL解析(QTL=Quantitative Trait Loci:量的形質遺伝子座)を行うことで、成長速度の制御メカニズムや代謝に関わる決定機構を解明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、実験魚の飼育と成長速度に関するデータの取得は、予定以上に順調に進んでいる。しかし、代謝データの取得においては、当初の計画ではF2世代を用いてIn vivoでの代謝測定を予定していたが、呼吸チャンバーの操作や水温のコントロールが困難だったため、安定した測定が難しいと判断した。そのため、代替案として、飼料条件や高水温などの飼育実験を併用して、様々な観点から代謝関連データを取得している。
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今後の研究の推進方策 |
マダイを用いて、代謝・成長速度の決定機構を調査するために、まずF2世代の個体から中性脂肪(TG)を測定して代謝データを定量化する。また、成魚期の成長関連データを前年度の稚魚期と同じ測定方法を用いて取得する。最後に、これらの情報をもとに、トヨタ自動車が開発したGRAS-Di(Genotyping by Random Amplicon Sequencing-Direct)と呼ばれるジェノタイピングシーケンス解析を用いてQTL解析を行い、代謝・成長速度を決定するゲノム領域を絞り込む予定である。
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