研究課題/領域番号 |
23K14019
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辺 浩美 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (30962758)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 海洋天然物 / 生理活性タンパク質 / トロンボポエチン受容体 / レクチン / カイメン |
研究開始時の研究の概要 |
応募者はこれまでに海綿由来新規タンパク質トロンボコルチシン(ThC)がTPO受容体の糖鎖に結合することで活性化を引き起こすという、新規活性化機構の存在を立証した。さらに、ThCによる受容体活性化は、TPOとは異なる挙動を示したため、造血サイトカイン受容体には未知の多様な活性化機構が存在しているのではないか?と考えた。 予備実験において、函館産ソフトコーラル抽出物はTPO・ThCとは異なる活性を示し、これらの成分が造血サイトカイン受容体活性化の多様性を探る上で、極めて有用なケミカルプローブであることが示唆された。本研究では活性成分の単離・構造決定さらには活性化機構の詳細を理解することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は当初の計画通り、函館産未同定ソフトコーラルの活性成分の精製に着手した。本試料の水溶性高分子画分を各種クロマトグラフィーで分離し、得られた画分について活性評価を行った。しかし、いずれの分離法においても活性が集約されず、活性本体であるタンパク質の推定は難航している。 函館産ソフトコーラルを採取した直後に絞り、顕微鏡で観察したところ白色と紫色の2種の細胞の存在を確認した。この細胞懸濁液をセルソーターを用い、細胞の形態や自家蛍光を指標に分取したところ、顕微鏡で観察した2種の細胞を分離することに成功した。これらをそれぞれ抽出し、TPO様活性を評価したところ、紫色の細胞抽出物において強い活性が示された。したがって、活性成分は紫色の細胞由来である可能性が高い。 本抽出物のTPO受容体への活性メカニズムについての検討も進めた。まず、血球凝集活性を示さないことからレクチンであるThCとは異なる可能性が高いと考えられる。また、その他TPO受容体アゴニストとの相乗効果を調べたところ、既存のメカニズムでは説明のつかない現象も観察されたため、今後より詳しい実験が必要であるものの、新規のメカニズムによって受容体を活性化している可能性が考えられる。最近、これまで長い間未解明であったTPO受容体とTPOの複合体の立体構造がクライオ電子顕微鏡によって明らかにされた(Tsutsumi et al., 2023, Cell)。同時にTPO受容体とTPO複合体の立体構造の僅かな差が下流のシグナリングに大きな影響を与え、細胞の分化の方向を左右することも報告された。海洋生物由来の活性物質にも更に新しい機構が隠れている可能性もあり、新たな知見が得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
函館産ソフトコーラルの採集は夏期に順調に行うことが出来たたため、当面の実験に用いるのに十分な量を確保することができた。一方で、当初は初年度にミクロネシアへ海綿の採集に行く予定であったが、円安・物価高の影響で旅費や現地でのスキューバダイビング等の費用が計画当初に比べ大幅に値上がりしたため、初年度でのサンプル採集は見送った。さらに、上述の通り、当初の見込みに比べて活性成分の分離が進んでいないことも要因の一つとして挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
函館産ソフトコーラル抽出物からの活性成分の有効な分離方法が見つかっていないため、上述の紫色の細胞について、より詳細に調べることで手掛かりを得ることを試みる。初めに2種の細胞抽出物をLC-MSやSDS-PAGEなどを用いて比較し、紫細胞に特異的に含まれる物質を探索する。また、現時点では白と紫色の細胞がそれぞれどのような細胞なのか全く不明であることから、セルソーターで分離した後にそれぞれの遺伝子抽出を行う。しかし、絞り液は僅か数時間で鮮やかな紫色から茶色へと変色してしまうため、セルソーターを用い細胞を大量に分取することは容易ではない。さらに本試料は函館近郊の海域に生息しているものの、採集が難しく手軽に入手するのは困難なことから、水槽での飼育を試みる。 同時に、TPO受容体に対するメカニズムに関しても、活性成分の精製を待たず進めていく。
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