研究課題/領域番号 |
23K14043
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
渡辺 将央 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00975360)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | トラクタ / 非線形力学 / ドライブシミュレータ / 安全 / アクティブ制御 / 車軸サスペンション / 農用トラクタ / 農作業安全 / 仮想現実 |
研究開始時の研究の概要 |
農業では建設業や製造業などの他産業と比較しても、高い割合で死亡事故が発生している。また、事故発生件数も過去半世紀を通じて基本的に横ばい傾向である。なかでも農用トラクタの転倒転落事故は際立って多く、トラクタ作業の安全確立は喫緊の課題である。我が国では、水田稲作用小型トラクタが比較的狭い農地で使用される。その中で車輪の浮きあがりや横滑りなどの危険現象が頻発し、事故の誘因となっている。そのため、トラクタ作業は相当の熟練を要する作業となっている。本研究は、安全教育目的の普及型トラクタ・ドライブシミュレータを開発することで、トラクタ運転技術の安全教育および技術承継基盤を提供することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では,XR(クロスリアリティ)技術を活用し,安全教育用のトラクタ・ドライビングシミュレータの開発を目的としている。研究内容としては,1 モーションプラットフォームやVR(仮想現実)を可能とするヘッドマウントディスプレイなどのXR技術を農用トラクタ向けに開発・ローカライズ,および2 農用トラクタ特有の非線形力学を適切に再現可能な数理モデルに基づいたビークルダイナミクス・シミュレータの開発が必要となる。研究内容1に関しては,本年度は4自由度モーションプラットフォームを導入し,その動作・精度確認を行った。研究成果より,4自由度モーションプラットフォームを用いれば,特定のトラクタの危険挙動を安全教育用には十分な水準で再現できることが明らかとなった。一方,本モーションプラットフォームでは,x軸,y軸の挙動は十分に再現できないため,急加速や急ハンドルの挙動に関しては,更なる自由度が必要であることがわかった。トラクタモデルの開発においては,車軸サスペンションを具備したトラクタモデルの開発を重点的に行った。これにより,トラクタの車体構造変更により,動的な安定性がどの程度向上するのかといった設計論を議論することが可能である。開発モデルを用いて,農用トラクタの操舵安定性向上を議論するための基礎的な試験方法を開発した。開発試験方法の結果より,車軸サスペンションは特に前後輪あるいは前輪に具備することにより,安定的な操舵を可能とすることが明らかとなった。また,車体構造変更を伴わなくとも,実施できる安定性向上の試みとして,駆動力制御を数値的に行った。非線形制御手法の代表例であるDelayed Feedback制御により,トラクタ特有のカオス振動を安定化できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,1 モーションプラットフォームやVR(仮想現実)を可能とするヘッドマウントディスプレイなどのXR技術を農用トラクタ向けに開発・ローカライズ,および2 農用トラクタ特有の非線形力学を適切に再現可能な数理モデルに基づいたビークルダイナミクス・シミュレータの開発から構成される。1においては,モーションプラットフォームを既に導入しており,来年度以降,ヘッドマウントディスプレイやハンドルコントローラーを導入し,本格的なドライブシミュレータシステムを構築するための基礎を準備できており,順調に進展している。2については,異なる車体構造をもつトラクタモデルを表現可能な微分方程式を立式し,Matlab/Simulinkの形式で実装済である。今後は,モデルベースシステムスエンジニアリング(MBSE)の観点から,Matlab/Simulinkモデルで開発された因果的モデルを,SimscapeやModelicaなどの非因果的モデルに拡張予定であるが,これを行うための基本的なモデリングは既に済んでおり,順調な進展といえる。また,車体挙動を安定化させる制御手法に関しても,Delayed Feedback制御の実装に加えて,Sliding mode制御やExternal Forcing制御などの異なる制御手法の適用にも着手し,来年度以降理論的な考察を深める準備はできており,順調な進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の研究推進方策としては,まずトラクタドライブシミュレータシステムの本格的な構築が必須となる。XR技術を適用するための基本的なデバイス(ヘッドマウントディスプレイ,ハンドルコントローラー)を購入し,これをトラクタドライブシミュレータ向けに実装する。来年度は,実装したシミュレータを学内で挙動確認できるまで進展させる計画である。また,モデリングに関しては,トラクタドライブシミュレータに利用する基本的なモデル開発は終了しており,今後は非因果的モデル(Simscape, Modelica, Dymola)などに順次適用していく。開発モデルは本質的に非線形モデルであるため,非線形モデルの理論的な解析を来年度以降順次行っていく。これに関しては,学外や国外の非線形力学,カオス理論の専門家との理論的な検討を中心的に行い,数理の側面から農用トラクタの不安定性について議論を進めていく。制御手法に関しても,カオス制御を中心とした非線形制御手法の研究開発を進める。これに関しても,学外や国外の非線形制御,カオス制御の専門家と議論を進めていくつもりである。モデル・制御の理論的な解析が一通り済んだ時点で,安全やコストのバリアをクリアできると判断した場合は,トラクタ実機の検証を学外の研究機関と協力して行っていく予定である。
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