研究課題/領域番号 |
23K14051
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
村上 貴一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 研究員 (50813903)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 栽培暦 / 農業気象 / フェノロジー / コムギ / 作物モデル / 検定力分析 / climate change / field experiment / power analysis / ensemble simulation |
研究開始時の研究の概要 |
顕在化する気候変動のもと、食料生産の不安定化が危惧されている。食料安全保障の基盤となる育種あるいは栽培管理技術の向上といった研究開発の現場でも、新たな品種・技術は複数年の圃場実験での結果をもとに判断されることが主流である。しかし、年次不安定化が進行した場合、同一処理の年次反復間での分散が大きくなり、有効な品種・技術を検出するスループットが低下することが予想される。すなわち、処理効果の見逃しの確率や必要とされる年次反復数が増加する恐れがある。本研究では「気候変動は圃場実験を鈍化するのか?」を問い、 気候変動適応の根本となる研究開発が気候変動により鈍化されるという再帰的構造を解析する。
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研究実績の概要 |
本研究では、不確実性を内包するアンサンブル気象予測データを作物生育モデリングと組み合わせることで、気候変動による作物生産の年次不安定化を定量し、この年次不安定化が複数年をかけて品種改良と栽培技術開発を進める農業研究を鈍化させるのか?を明らかにすることを目的とする。2023年度はおもに気候に応じた作物の栽培暦の変化予測モデリングを実施した。 所与の気候のもとでの作物生産を推定するためには、作物の生育を表現したモデルに入力情報として栽培暦 (播種・収穫といったステージのスケジュール) を与える必要がある。本年度の研究では、越冬性主要穀物である秋まきコムギの将来気候のもとでの栽培暦を作成するため、まず道内多地点で記録された栽培暦データ・気象データを収集し、それを整理した。これらのデータをもとに、先行研究で考慮されていなかった越冬生存性と低温要求性を考慮することで栽培暦を精度よく作成する手法を提案した。提案手法を国外の寒冷地に適用したところ、作成された栽培暦がそれらの地域における実際の栽培暦と精度よく一致することが確認されたことから、提案手法は所与の気候のもとでの栽培暦の推定に汎用的に利用可能であると判断される。そこで、道内の将来気候のもとでの栽培暦を推定し、現在と比較した生育ステージのシフトを定量化した。また、栽培暦シフトと降水パターン変化により、遭雨による生産性低下リスクが増加する可能性があることを示した。 これらの計算シミュレーション的なアプローチに加え、現実的に生起しうる気象経過を再現した環境のもとでの栽培実験を行うための準備を行なった。具体的には、オープンに提供されている既存の気象データセットをサーベイし、再現対象として利用可能なデータセットのいくつかをローカル環境を整備した。また、栽培実験のための小型栽培チャンバのプロトタイプを設計し、栽培実験の実現可能性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
栽培暦データの収集および気象-作物応答のシミュレーションが当初予定通り進捗し、当初予定していなかった遭雨リスクの将来変化予測についての成果を得られた。一方、栽培実験に関しては再現対象となる気象データの選定・整備は予定通り進捗したが、栽培実験用の小型チャンバについては調整がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
将来における栽培暦と気象データセットを入力としてアンサンブル作物生育シミュレーションを実施し、秋まきコムギ生産性およびフェノロジーの年次不安定化を評価し、これらの形質の確率分布を作成する。現在・将来シナリオのもとでの形質の分散をもとに統計的検定力分析を実施し、圃場実験の年次不安定化によりこれらの形質の有意差を検出するのが困難になるのか?を議論する。小型栽培チャンバを利用した栽培実験に関しては実施規模を縮小し、より重要な成果を得られることが見込まれるためシミュレーション研究を重点的に実施する。
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