研究課題/領域番号 |
23K14057
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
篠塚 賢一 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 助教 (60831170)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 窒素循環 / 森林渓流水 / 林内雨 / 安定同位体比 / 森林 / 源流域 |
研究開始時の研究の概要 |
化石燃料の燃焼により大気中の窒素酸化物が増加し、森林流域での硝酸イオン濃度の増加がみられていた.最新の研究では、大気へ排出される窒素酸化物の減少により、渓流域からの硝酸イオン濃度が低下する報告がされている.しかし、近年、日本へ到達した大気塊は大陸上空を通過していない清浄ものであるという2つの見解がある.日本は、大陸の風下にあり長距離輸送の影響を受けやすい.さらに、国内で排出された窒素酸化物が、大都市近郊の森林へ近距離輸送される.本研究では、大気移動経路をパターン化した森林渓流域の調査地を設定し、降水、渓流水中の化学成分,硝酸イオン中の大気由来の硝酸割合を明らかにする.
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研究実績の概要 |
化石燃料の燃焼により、大気中へ放出される窒素酸化物が増加傾向にあり、森林から流出する渓流水中の硝酸イオン濃度の増加がみられている。しかし、過去に高濃度で硝酸イオン濃度が観測されていた地域において、近年では減少傾向にある報告もされている。この原因として、排出源の窒素酸化物の減少,気候変動による大気移動経路の変化の2つの見解がある。しかし日本は、大陸の西側に位置し、風下にあたることから長距離輸送の影響を受けやすいことは、現在も変わらない。さらに、標高が高い山岳へ到達する大気は、地表面との摩擦による影響が少ない自由大気であるため、汚染物質が長距離輸送されやすい特徴を持つ。日本国内においても、大都市では国内で排出された窒素酸化物が、都市近郊の森林へ近距離輸送される。この結果、近隣に農地や市街地などの窒素負荷源がない山岳や島嶼域で、渓流水中の硝酸イオン濃度の増加が報告されている。屋久島,福岡,岐阜の広域かつ多地点で調査地を設定し、負荷源からの距離で分けることにより、森林源流域の渓流水の硝酸イオンの起源を明らかにすることを目的とした。今年度は、これらの地域を流れる森林渓流水を広域でサンプリング調査した。さらに岐阜市近郊に位置する森林で降水サンプリングを開始した。広域かつ多地点で実施した水質調査から、福岡市近郊(82地点),屋久島山岳域(101地点)の渓流水中に含まれる硝酸イオン濃度の空間的分布が明らかになった。屋久島の西部域を流れる渓流水を標高別でサンプリングを行ったところ、冬季に硝酸イオン濃度が高かった。さらに、霧が発生する確率が高い露点標高で、硝酸イオン濃度が60 μmol L-1を示し、大気起源のものを大半が占めていることが明らかとなった。また、岐阜市近郊の照葉樹林で2023年9月から開始した林内雨の調査では、硝酸イオン,アンモニウムイオン濃度と沈着量の季節変化を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は大気負荷源からの大気の移動パターンを地域ごとに区分し、福岡,屋久島,岐阜県の広域で渓流水を評価することを研究目的としている。本年度は、これらの3地点の森林渓流水のサンプリングを実施した。降水のサンプリングは、計画通りに岐阜県での設置が完了しておりサンプリングを9月から開始している。そのため、これらの渓流水・降水の試料水取集は順調に進んでいる。しかし、研究計画時に使用する予定であった分析機器が老朽化により故障し、初年度に予定していた試料分析が大幅に遅れた。現在は、測定分析が可能になり順次サンプリング試料の分析を行っている。そのため、サンプルの濃度情報が必要な安定同位体比測定や水質データ解析が遅れており進捗状況を(3)やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、福岡県,屋久島,岐阜県においてサンプリングや予備調査を実施した。今後は、これらの水質分析を行い、大気を介した長距離輸送と近距離輸送のデータ解析を行う。次年度は、当初の計画の通り、降雨と広域での渓流水の現場観測を引き続き継続し、時系列的な水質変化を明らかにする。さらに、降雨の時系列的なサンプリングを開始する。初年度の研究により、渓流水中に含まれる硝酸イオン濃度の空間的分布が明らかになってきた。初年度に明らかになった硝酸イオンの空間的分布から、調査対象流域を絞り詳細な大気の移動経路を含めたGIS解析を行う。
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