研究課題/領域番号 |
23K14069
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梅原 崇 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (60826858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 生殖 / 精漿 / アンドロゲン |
研究開始時の研究の概要 |
精漿は,精子の直進運動を導き,体内受精を成立させる必須因子である.しかしながら,人工授精では,精液を希釈,あるいは精漿を除去することが一般的である.そこで,本研究では,人工授精の低い繁殖成績が精漿に起因すると仮設立て,①アンドロゲン作用を制御した“精漿産生器官”と“腺上皮細胞の体外培養系”の対象としたGC-MS解析と網羅的な遺伝子発現解析②マウスと同様に“子宮に精漿が入り多胎である”ブタとの比較解析③バイオアッセイによる重要因子群の評価と最重要因子の絞り込みを行うことで,動物種間で共通する“精子直進運動を導く精漿内因子とその産生機構”を同定し,人工授精の受胎率を高める人工精漿の開発に挑戦する.
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研究実績の概要 |
本年度は,アンドロゲン依存的な精漿産生臓器である精嚢腺や前立腺の機能を明らかとするため,野生型マウスとアンドロゲンが恒常的に低値であるライディッヒ細胞特異的NRG1欠損マウス,そしてアンドロゲン受容体の抑制剤であるフルタマイドを連続投与したマウスの比較解析を実施した.マウスでは射出精液を回収することが難しいため,精嚢腺や前立腺を採取し内部に含まれる液成分を擬似精漿として解析を行った.アンドロゲン濃度が高い擬似精漿において,精子が高い直線運動を示すことは本研究の開始時点で既に明らかとなっていたが,その誘導因子を明らかとするため,質量分析法を用いて内容因子の比較を行った.その結果,血中アンドロゲン濃度と擬似精漿中の脂質やクレアチン濃度が正の相関を示すこと,反対に血中アンドロゲン濃度と擬似精漿中の酸化ストレスマーカーである8OHdG濃度は負の相関を示すことが明らかとなった.このアンドロゲン標的因子の重要性について,脂質では特にコレステロールが精子細胞膜のみならずミトコンドリア膜の安定化を促し,精子機能を改善すること,擬似精漿中に含まれるオレイン酸が栄養源となって精子運動性を高めることを見出した.また,クレアチンはマウス精子において精子の運動性を向上させることが明らかとなっている.したがって,アンドロゲンが精漿成分を制御し,精子運動を制御していることが本研究より見出された.さらに,脂質合成を促すACLYが精嚢腺上皮細胞で発現し,アンドロゲン依存的に制御されていることや,クレアチン合成酵素遺伝子の発現が精嚢腺で高値であることも見出し,アンドロゲンによる精漿機能を高める主要臓器が精嚢腺,特に上皮細胞であることも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施する計画であった“アンドロゲンの標的因子を探索すること”と“アンドロゲンの標的臓器を同定すること”という2つの目標が達成された.さらに,本年度に見出したアンドロゲンとクレアチンの関係から,クレアチンの副産物として産生されるオルニチンやその周辺因子が精漿中に含まれ,重要な役割を担っている可能性も見えつつあり,想定通りの進展をしていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
想定通りに進展していると共に,新しい候補因子も見えてきたことから,それらの合成機構,役割の探索を進めていくと共に,マウスの基礎研究成果を産業家畜であるブタに展開するため,ブタ精漿を用いた研究も行っていく計画である.そして,マウス・ブタの比較解析から抽出される多胎動物の精漿に共通する重要因子を見出し,その機能性を評価していく.
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