研究課題/領域番号 |
23K14071
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤井 貴志 岩手大学, 農学部, 准教授 (60609105)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ウシ / 胚 / 低温保存 / 低温傷害 / 微小管 / ミトコンドリア / リソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
胚の非凍結低温保存法は、特別な機器や技術、液体窒素を必要としない他、凍結保存過程で起こる種々の傷害を回避でき、高い利便性と高受胎率が望めるウシ胚の保存法としてその潜在価値は高い。しかし、現行の非凍結低温保存法で安定してウシ胚を保存できる期間は短く、その実用場面は限られる。本研究では、低温環境下で引き起こされるミトコンドリアおよびリソソームへのストレスを介した微小管変性に着目し、ウシ胚における低温傷害の発生機序を明らかにする。また、その人為制御によるウシ胚の低温耐性向上技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、ウシ胚における低温(4℃)傷害の発生機序を明らかにすることを目的に、体外受精(IVF)由来ウシ低温保存胚の保存-培養後の生存性を調査し、新鮮胚および低温保存胚における微小管の構成タンパク質であるβ-tubulin性状およびリソソーム内に存在するタンパク質分解酵素の一つであるカテプシンBの活性を比較解析した。3日間および7日間低温保存したウシIVF胚の24時間培養後の生存率は、それぞれ100%(21/21)および68.8%(22/32)であり、透明帯からの脱出率はそれぞれ33.3%(7/21)および12.5%(4/32)であった。また、新鮮および7日間低温保存したIVF胚におけるβ-tubulinの蛍光免疫染色を実施したところ、低温保存胚では、β-tubulinの蛍光シグナルの減弱が認められ、微小管の変性が起こっていることが示唆された。さらに7日間低温保存したIVF胚は新鮮IVF胚と比較して、カテプシンBの活性が高く、低温ストレスによりリソソームからの不必要なタンパク質分解酵素の漏出が起こっていることが示唆された。以上のことから、低温ストレスがリソソームからの過剰なタンパク質分解酵素の漏出を引き起こし、それがウシIVF胚の微小管変性と関連している可能性が示された。また、アポトーシスおよびタンパク質品質管理に関わる遺伝子群のmRNA発現量を定量的RT-PCR法により解析するための実験系を確立するとともに、新鮮および低温保存したIVF胚のRNAサンプルを蓄積し、現在解析を実施しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当研究計画の初年度であったが、研究代表者の所属が2023年6月から変更になり、新たな所属先での研究環境の立ち上げに時間を要したため、研究の進捗はやや遅れている。現在は、胚の培養系や低温傷害の評価系等を立ち上げ、研究環境も整いつつあるため、今後の試験は予定通り実施できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、低温保存胚における活性酸素種の産生、アポトーシスの発生状況およびアポトーシスやタンパク質品質管理に関わる遺伝子群のmRNA発現動態を明らかにし、ウシ胚における低温傷害の発生機序についてより詳細に検討する。また、低温保存液への抗酸化剤およびタンパク質分解酵素阻害剤の添加が、ウシ胚の低温傷害に及ぼす影響を解析する。
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