研究課題/領域番号 |
23K14083
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神田 雄大 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (50964649)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | ボルナ病ウイルス / RNA修飾 / 病原性メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
ボルナ病ウイルス1型(BoDV-1)はヒトを含む広範な哺乳動物に感染し、致死性の脳脊髄炎を引き起こすRNAウイルスである。BoDV-1は多くのRNAウイルスと異なり、感染細胞を傷害することなく持続感染することを特徴としているが、持続感染や病原性に関するメカニズムは明らかになっていない。これまでの研究で、BoDV-1のゲノムRNAは複製後に未知の宿主因子によって5'末端が脱リン酸化されることが示唆されている。本研究では、BoDV-1のゲノムRNA 5’末端修飾と宿主の自然免疫という観点からBoDV-1の病原性メカニズムの解明を試みる。
|
研究実績の概要 |
本研究は、ボルナ病ウイルス1(BoDV-1)のゲノムRNAの5'末端脱リン酸化反応を触媒する因子を探索し、この反応がBoDV-1の感染動態や宿主の免疫応答にどのように影響しているのかを明らかにすることを目的としている。 まず、CRISPR/Cas9システムを用いて、RIG-I遺伝子をノックアウトしたOL(ヒトオリゴデンドログリオーマ)細胞を作製し、12株のシングルクローン細胞を樹立した。通常のOL細胞に、5'末端に3つのリン酸基が結合したRNA(5'-pppRNA)を導入したところ、RIG-Iの発現と細胞死が観察された。一方で、作出した細胞に5'-pppRNAを導入しても、RIG-Iの発現や明らかな細胞死は観察されなかったことから、作出した細胞においてRIG-Iがノックアウトされていることが確認できた。また、他のRNAウイルスにおいて、ゲノムRNAの5'末端脱リン酸化反応に関与していることが報告されているDXO、DUSP11、NUDT2といった宿主因子に着目し、これらがBoDV-1の感染にも影響するのか検討した。siRNAを用いてこれらの因子をノックダウンしたOL細胞にBoDV-1を感染させ、3日後に感染細胞数とウイルスRNAのコピー数を測定したが、通常のOL細胞と比べ、有意な差は検出されなかった。BoDV-1はゆるやかに複製するウイルスであり、感染3日後に感染細胞数とウイルスRNAのコピー数を測定するだけでは、対象因子の影響を十分に検出できなかった可能性が考えられた。そこで現在は、これらの因子をノックアウトした細胞を作製するとともに、BoDV-1のゲノムRNAの5'末端に結合するリン酸基の数を直接検出する方法を検証している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画調書に従い、BoDV-1が感染嗜好性を示す中枢神経系由来の細胞株(OL細胞、HMC-3細胞、SVG-A細胞)を選定し、これらの細胞にBoDV-1が感染できることを確認した。また、RIG-IをノックアウトしたOL細胞を作製し、実際に、RIG-Iがタンパク質レベルでノックアウトできていることを確認した。一方で、BoDV-1のゲノムRNAの5'末端修飾に関与する因子を特定するには至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
現在検討中のBoDV-1のゲノムRNAの5'末端に結合するリン酸基の数を検出する方法を確立する。また、Thermo Fisher Scientific社のHuman Phosphatase siRNA Libraryを購入し、BoDV-1のゲノムRNAの5'末端修飾に関与する因子を網羅的に探索していく。必要であれば、CRISPR/Cas9システムを用いてこれらの因子をノックアウトした細胞株を作製し、BoDV-1の感染動態に与える影響を詳細に解析する。
|