研究課題/領域番号 |
23K14114
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田口 純平 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (30849873)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 細胞初期化 / リプログラミング / 老化 / 若返り / エピゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
老化細胞の蓄積は、臓器機能の低下や加齢関連疾患の発症の原因となることが明らかとなってきた。近年、マウス生体内においてiPS細胞誘導に必要な転写因子を全身性に発現させたところ、臓器機能の亢進や寿命の延長が報告され、個体老化には可逆的な側面が存在する可能性が示唆されている。本研究では、個体レベルで積極的に老化を誘導し、出現した老化細胞特異的に初期化を誘導可能な独自の遺伝子改変マウスを用いることで、生体内老化細胞のリプログラミング過程で生じる変化を細胞レベルで明らかにする。特に可逆的な挙動を示す「転写・エピゲノム状態」に焦点を当て、新規の抗老化戦略としてヒトに応用可能な作用点を見出す。
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研究実績の概要 |
本研究で独自に作製した早期老化マウスは、生後2週齢までは全身性に大きな組織学的・生理学的な変化は認められない一方で、4週齢頃から老化に関連した表現型を複数示し、8週齢を前に全例が死亡した。組織学的解析の結果、心臓心室壁の顕著な菲薄化/線維化がこの死の直接的な原因と考えられたため、心筋細胞特異的に山中因子を発現するシステムを作製し、生体内心筋細胞のリプログラミングによって、心臓における老化関連表現型の減弱/改善・寿命の延長が可能であるか検討を試みた。早期老化マウスにおいて老化関連表現型が出現する前段階から山中因子発現を誘導し、4週齢時点で組織学的解析を行ったところ、まず心臓において山中因子をタンパクレベルで発現する心筋細胞が多数観察でき、系がワークしていることが確認できた。また、4週齢時点で観察されていた心室壁の菲薄化/線維化の程度が有意に抑制されており、寿命についても10週齢を超える個体が複数匹確認できた。このことから、心筋細胞における山中因子の発現は個体レベルでの老化形質を減弱(予防)できることが示唆された。この分子基盤を明らかにするために、心臓におけるscRNA-seq解析を行った。その結果、早期老化マウス心筋細胞において高発現していたDNA傷害/ストレス応答に関連した遺伝子群が山中因子の発現によって、野生型心筋細胞と同等レベルまで発現抑制できることが明らかとなった。また、システム上山中因子を発現しない線維芽細胞や内皮細胞においても老化関連の発現変化が減弱していたことから、老化を誘導された心筋細胞が液性因子を介して周囲環境に影響を与えていること、また心筋細胞のリプログラミングによってそれらを解除できうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに心臓に顕著な表現型を示す早期老化マウスを作製することができ、さらに初期化因子を心筋細胞特異的に発現させることで老化形質の減弱および寿命の延長が認められたことから、心臓は細胞初期化による抗老化戦略を考える上で有用な標的臓器となりうることが示唆された。さらにscRNA-seq解析では初期化因子の発現によりDNA傷害/ストレス応答に関連した遺伝子群の発現上昇の抑制が観察され、この結果が個体レベルでの抗老化作用に寄与している可能性が示唆された。心筋細胞の安定的な採取法および次世代シーケンサーを用いた解析法等も確立できており、現在までの個体-臓器-細胞レベルでの実験から、今後は遺伝子-分子レベルでの解析に大きな問題なく進むことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
scRNA-seq解析の結果から心臓における老化関連表現型の誘導過程の上流で機能する転写因子候補を同定した。現在、候補転写因子のノックアウト実験を実施し、心臓において山中因子発現時と類似した老化形質の減弱が観察できるか検証を行っている。また、山中因子は転写因子であることから、早期老化マウス心筋細胞および山中因子発現心筋細胞におけるChIP-seq解析を計画しており、初期化因子の結合位置から直接的な標的遺伝子群を同定することで、本研究の最大の目的である細胞初期化を介した個体レベルでの老化形質減弱機構の分子基盤を明らかにできると考えている。
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