研究課題/領域番号 |
23K14117
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
三浦 健人 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (70802742)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | T細胞 / TCR / クローンマウス / シングルセル / dual TCR T細胞 / TCRレパトア解析 / 体細胞核移植 / レパトア解析 |
研究開始時の研究の概要 |
【目的】 2種類のT細胞受容体 (TCR) を発現するdual TCR T細胞の生体内での役割を解明する。 【課題】dual TCR T細胞は自己免疫疾患の発症原因となる可能性がある。しかし、その機能を既存技術で解析することは難しい。 【解決方策】 全身で単一のTCRを発現するT細胞クローンマウスを活用することで、dual TCR T細胞を効率的に解析できる実験モデルを樹立する。また、dual TCR T細胞由来のクローンマウス個体を作出し、各種免疫疾患におけるdual TCR T細胞の役割に迫る。 【期待される成果】新たな免疫研究領域の創成に寄与する実験モデルを、核移植技術を利用して確立する。
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研究実績の概要 |
本研究はdual TCR T細胞の生物学的役割と疾患との関連性を解明することを目的としている。dual TCR T細胞は2種類のT細胞受容体 (TCR) を同時に発現する特殊な細胞であり、これが自己免疫疾患等の疾患の発症原因となる可能性が指摘されている。しかし、生体内での出現頻度が低く、その機能を解析するのが困難であったため、その生物学的意義や疾患関連性の解明は遅れてる。本年度は全身で単一のTCRを発現するT細胞クローンマウスを用いて、dual TCR T細胞の機能を効率的に解析するための実験モデルの確立を行った。これまでのbulkでのTCRレパトア解析の結果から、卵白抗原に対して応答性を持つT細胞クローンマウスおよびそのT細胞に対してダニ抗原で感作・刺激培養を行うことで、dual TCR T細胞が高頻度で出現することが示唆されていたが、実際にシングルセルレベルでdual TCR T細胞の出現確認はされていなかった。そこでダニ抗原での感作・刺激培養を行った卵白抗原応答性T細胞クローンマウス由来のT細胞を用いてシングルセル解析を実施した。その結果、対照群と比較して、感作・刺激培養を行ったクローンマウスのT細胞には2種類のTCRを同時に発現するdual TCR T細胞が多く含まれることが明らかとなった。この結果は、T細胞クローンマウスを用いて「dual TCR T細胞の機能を効率的に解析するための実験モデル」を確立する本研究の目的達成を大きく後押しするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究はdual TCR T細胞の生物学的役割と疾患との関連性を解明することを目的としている。本年度は全身で単一のTCRを発現するT細胞クローンマウスを用いて、dual TCR T細胞の機能を効率的に解析するための実験モデルの確立を行った。これまでのbulkのTCRレパトア解析の結果から、「ある抗原に特異的に反応する再構成済みTCRアレル」と「再構成前 (野生型) TCRアレル」を持ったT細胞クローンマウスとそのT細胞に対して、反応性を持たない別の抗原で感作・刺激培養を行うことでdual TCR T細胞の出現頻度が増加することが示唆されていた。しかしながら、bulkでの解析ではdual TCR T細胞の出現を直接的に証明することはできなかった。本年度は別抗原で感作・刺激培養を行ったT細胞クローンマウスのT細胞を用いてシングルセル解析を行うことで、dual TCR T細胞の出現頻度の増加を直接的に証明し、T細胞クローンマウスを用いてdual TCR T細胞を効率的に解析できる実験系が作出できることを示した。本年度の成果は、本研究が目的とするは「dual TCR T細胞の生物学的役割と疾患との関連性を解明」を大きく後押しするものであり、本年度のシングルセルデータをより詳細に解析することで、dual TCR T細胞の出現機構の解明にもつながりうるものである。以上より、本年度の進捗状況は非常に順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は「ある抗原に特異的に反応する再構成済みTCRアレル」と「再構成前 (野生型) TCRアレル」を持ったT細胞クローンマウスとそのT細胞に対して、反応性を持たない別の抗原で感作・刺激培養を行うことでdual TCR T細胞が高頻度で出現することを、シングルセル解析により示した。次年度以降は、本年度のシングルセルでのTCRレパトア解析およびRNA-seq解析を詳細に行い、dual TCR T細胞の出現に関与する遺伝子の解明を進める。特にTCR再構成関連遺伝子の発現変動に注目し、解析で変動が見られた遺伝子を標的としてゲノム編集等の技術を用いて発現制御を行い、dual TCR T細胞の出現頻度の変化を明らかにすることを試みる。以上の知見を基に「dual TCR T細胞を効率的に作出可能な実験系の樹立」を試み、「T細胞に由来するクローンマウス作出条件の最適化」と合わせて「dual TCR T細胞に由来するクローンマウス (dual TCRマウス) 作出」を目指す。dual TCR マウス作出後は、「dual TCRマウスが有するdual TCR T細胞のTCRレパトアや遺伝子発現変動の解明」を行う。またdual TCRマウスの各臓器に2種類の抗原を単独あるいは同時に暴露し、血中抗体濃度の測定、臓器の炎症反応や炎症細胞浸潤の評価、臓器付属リンパ組織へのT 細胞浸潤や炎症サイトカイン産生を評価し抗原応答性や炎症反応を明らかにすることで「dual TCRマウスの疾患モデルとしての有用性を評価」を行う。
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