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線虫C. elegansを用いた凍結融解耐性機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K14126
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分43010:分子生物学関連
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

大野 奈緒子 (酒井奈緒子)  東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30957238)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワードクチクラコラーゲン / 凍結融解 / 浸透圧耐性 / ヒストン修飾 / Caenorhabditis elegans / 凍結保存 / クロマチン / コラーゲン
研究開始時の研究の概要

凍結保存技術は、食品保存から研究試料の保存、臓器や細胞移植に渡る多くの分野で用いられており、その技術の発展は多くの分野の発展に寄与することが期待できる。本研究では、主に線虫Caenorhabditis elegansを用いて、生物の凍結融解耐性を制御する機構の解明を目指す。具体的には、線虫の凍結融解耐性を制御する分子を順遺伝学、逆遺伝学的手法により探索し、それらの分子メカニズムの解明を目指す。さらに、線虫で凍結融解制御に関わることが明らかになった分子について、他の生物でも同様の働きをするか確かめるため、培養細胞を用いて各分子と凍結融解耐性の関係を評価する。

研究実績の概要

本研究では、線虫C. elegans (以下線虫とよぶ)の凍結融解への耐性を制御する分子機構を解明することを目的として実験を進めている。凍結保存技術は、食品保存から研究資料の保存、臓器や細胞移植に渡る多くの分野で用いられている。凍結保存技術の向上は多くの人の生活の利便性を向上させるだけではなく、医療の発展にも貢献する。他の生物種の凍結保存に関しては、小さな単細胞組織(ヒト卵、精子など)についてはガラス化凍結法が成果を挙げているが、魚卵や家畜動物の生殖細胞、多細胞組織、器官の凍結保存に関しては、いまだ課題が多く残っている。
遺伝学のモデル生物である線虫は、土壌中に生息する非寄生性の線形動物である。ゲノムサイズが小さく、飼育と繁殖が容易な上、生活サイクルが短いという、優れた実験動物である。線虫は多細胞生物でありながら、適切な凍結保護剤存在下では-80℃の極低温下で半永久的に個体丸ごとの凍結保存が可能であるという特徴を持つ。生殖細胞ではなく個体そのものの凍結保存が可能な多細胞生物は非常に珍しいが、線虫の凍結耐性を制御する分子機構はこれまでほとんど調べられてこなかった。そこで、本研究では、変異体解析を中心に線虫の凍結融解後の生存率が変異体ごとに異なる原因を究明し、凍結融解への耐性あるいは感受性を制御する機構を解明する。また、医療応用につなげるべく、哺乳類培養細胞を用いた実験も行う。線虫の凍結融解耐性分子が他の生物種の細胞でも同様の効果を示すかを調べ、生物に普遍的な凍結融解耐性制御の仕組みを探索する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の準備段階では、一部のクチクラコラーゲン分子の変異体 dpy-7とdpy-10の変異体で凍結融解耐性が著しく低下すること、ヒストンメチル化関連分子であるwdr-5.1変異体で凍結融解後の生存率が上昇することを突き止めていた。本年度は、更に様々な変異体をもちいて凍結融解耐性を調べ、線虫が浸透圧制御とヒストン修飾という異なるメカニズムで凍結融解耐性を制御しているらしいことを突き止めた。
線虫の体表は、クチクラコラーゲンを主成分とするクチクラ層によって覆われ、これが外骨格として機能している。一部のクチクラコラーゲンの変異体は高浸透圧への耐性が高いという報告があったため、高浸透圧耐性を示すクチクラコラーゲン変異体群に加えて高浸透圧耐性を示す細胞外マトリックス構成分子(osr-1, osm-7)の変異体群で凍結融解後の生存率をしらべた。その結果、高浸透圧耐性を示す変異体群では野生型に比べて著しく低い凍結融解耐性を示した。一方、クチクラコラーゲン変異体の中でも、高浸透圧耐性が野生型と同程度であるdpy-5, dpy-13変異体は、野生型と同程度の凍結融解耐性を示した。この結果は、浸透圧調節が凍結融解耐性制御に重要であることを示唆する結果である。
ヒストンメチル化分子についても表現型解析を進めたところ、wdr-5.1と同様にH3K4のメチル化に関わるCOMPASS複合体の構成分子であるset-2、ash-2変異体でも野生型に比べて高い凍結融解耐性が見られた。H3K4me3はオープンクロマチンのホールマークとされており、オープンクロマチン構造の変化が凍結融解耐性の制御に関与している可能性がある。一方、クローズドクロマチンで見られるH3K9me3のメチル化分子であるmet-2, set-25変異体では野生型と同程度の凍結融解耐性を示した。

今後の研究の推進方策

研究の進行に伴い、凍結融解耐性の制御には「浸透圧制御による凍結融解耐性制御」と、「ヒストン修飾関連分子による凍結融解耐性制御」の異なる二つの機構が働いているであろうことが明らかになった。今後は、この二つの機構について並行して検証していく。
浸透圧制御と凍結融解耐性制御については、主に高浸透圧暴露下での形態変化を顕微鏡下で観察することにより進める予定である。凍結における細胞ダメージの主要な要因の一つが細胞内での氷結晶の形成であり、線虫は浸透圧の制御により細胞内での水分量を調節することで氷結晶の形成を防いで凍結ダメージを防いでいる可能性がある。これを検証するため、凍結保存液に暴露した際の線虫の体積変化を、野生型と凍結融解耐性が低い株で比較する。また、凍結保護剤の取り込み量を蛍光標識したトレハロースにより比較する。更に、様々な種類の凍結保護剤をもちいて凍結保存液を作成し、より効率よく凍結保存できる凍結保存液の作出を試みる。
ヒストン修飾関連分子による凍結融解耐性制御に関しては、さらに変異体解析を進める。これまで、ヒストンメチル化関連分子を中心に範囲体解析を行い、オープンクロマチン化に関わる分子の変異体で凍結融解耐性が上昇することが示唆される結果を得た。今後は、ヒストンアセチル化、脱メチル化、脱アセチル化酵素についても検証していく。また、飢餓シグナルとの関連も調べていく予定である。飢餓時に凍結融解耐性が上昇することをすでに示しているが、飢餓情報伝達因子とヒストン修飾分子の関連については調べていない。ヒストン修飾関連分子がインスリンシグナル伝達経路などの飢餓シグナル関連分子の発現制御を介して凍結融解耐性を上昇させている可能性を検証していく。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Elucidation of Factors Affecting Freeze-Thaw Tolerance in C. elegans2023

    • 著者名/発表者名
      Naoko Sakai, Sawako Yoshina, Shohei Mitani
    • 学会等名
      24th International C. elegans Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 線虫 Caenorhabditis elegans の凍結融解耐性を制御する遺伝子の探索2023

    • 著者名/発表者名
      酒井奈緒子, 吉名佐和子, 三谷昌平
    • 学会等名
      線虫研究の未来を創る会 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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