研究課題/領域番号 |
23K14130
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小野 宏晃 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (80908591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 合成生物学 / RNAセンサー / ナンセンス変異依存mRNA分解 / RNA / 冬眠 / RNA編集 |
研究開始時の研究の概要 |
生命システムを理解するためには、多様な細胞種のふるまいを識別することが必要である。細胞種を特徴づけるRNAを検知して目的遺伝子の発現に反映させる技術(RNAスイッチ)によって細胞種を自在に識別できる可能性がある。本研究では、Qrfp陽性神経細胞の興奮によって誘導される冬眠様状態(QIH)をモデルとして、「プログラマブルな性質」と「発現漏れの制御」を両立するRNAスイッチを新規開発する。本研究によって、既存技術では識別困難な細胞種も制御できるようになり、細胞種制御の新しい方法論を提示する。
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研究実績の概要 |
本年度は、以下の記載する(1)RNAセンサーとなる発現ベクターの作製、(2)提案手法のproof-of-concept (POC)の実証を遂行した。 まず、細胞にRNAセンサーを発現させるために、汎細胞プロモーターの下流にセンサー配列と蛍光タンパク質(mCherry)をタンデムに並べた配列を作製した。ここで、センサー配列は蛍光タンパク質とin-frameなATGを欠いているが、標的RNAが存在するときは内在性のRNA編集によってATGが生成されるようになっている。このRNAセンサーは標的RNAが存在するときだけ、蛍光タンパク質が翻訳されるようになっており、mCherryの蛍光強度によって標的RNAの存在を検出できる。本年度は、Qrfp mature-mRNA配列のセンサーを複数作製した。 次に、上記RNAセンサーのPOC実証を行った。細胞に標的RNAとRNAセンサーを共発現させることで、標的RNAに応じてセンサー下流の蛍光タンパク質が発現するかを確認した。その結果、予想外に標的RNAがない条件でも蛍光タンパク質の発現が強いことが判明した。これは、CUG・GUG・UUGといったnon-AUGコドンからの非典型翻訳による発現漏れを無視できないことが原因と思われる。これを回避するために、non-AUG開始コドンになりうるコドンに変異を入れたが、発現漏れを抑制することはできなかった。 そこで、開始コドンを生成する設計から、終止コドンを除去させる設計に変更した。この設計方法に基づいたRNAセンサーは過去に報告されているが、低レベルの発現漏れがあることが知られている。そこで、内在性のナンセンス変異依存mRNA分解を利用することで、標的RNAが存在しない場合のRNAセンサーを積極的に分解する機構を搭載したRNAセンサーを考案し、現在作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の主目的は、「バックグラウンドシグナルが極めて低いRNAセンサーを作製すること」であったが、予想外にバックグラウンドが高いRNAセンサーであることが判明した。しかし、計画の一部を変更することによって、より高性能なRNAセンサーの仕組みを着想することができた。現在作製している、RNAセンサーの発現ベクターは、計画変更前に作製していたベクター骨格から容易に作出することが可能であることと、RNAセンサーと標的RNAの発現系は転用可能であることから、研究計画の遅れは最小限にとどめることができている。従って、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、内在性のナンセンス変異依存mRNA分解を搭載したRNAセンサーの性能をin vitroの培養細胞系で評価する。ここでの主目標は、既存のRNAセンサーのバックグラウンドシグナルよりも低レベルなRNAセンサーにすることである。そのうえで、任意のRNAを検出できる性質(programmability)や内在性のRNAを検出できる性質(high-sensitivity)を確認していく。さらに、ウイルスベクターを用いて動物個体内での動作確認も重要である。ここでは、in vivoのQrfp mRNAに応答して、DREADDシステム(hM3Dq)を発現するRNAセンサーを作製することを目指す。視床下部のQrfp発現神経細胞を刺激するとマウスは休眠状態になることが知られている。この表現型を指標にして、野生型マウスのQrfp神経細胞をRNAセンサーのみを使ってターゲッティングする技術を開発する予定である。
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