研究課題/領域番号 |
23K14141
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 啓也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60888105)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | トランスポゾン / 生殖細胞 / 相分離 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類をはじめとした生物のゲノムには、遺伝情報を損なう可能性のある「動く遺伝子」トランスポゾン(TE)が存在する。特に生殖細胞において、TEの抑制は不稔を防ぐために欠かせない。哺乳類の精子形成過程で胎仔期に経る前駆細胞ゴノサイトでは、新規DNAメチル化がTEを含むゲノム領域で起こる。DNAメチル化によるTE抑制に関与するタンパク質としてMorc1が知られてきた。最近の解析によりDNAメチル化とは別に、転写抑制に関わるヒストン修飾であるH3K9me3をMorc1が維持することでTE抑制を担うことが示唆された。Morc1が核内で形成する流動性の低い顆粒とTE抑制メカニズムの関係の解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究は生殖細胞でのトランスポゾン転移を抑制し、ゲノム安定性を守る機構について、核内で流動性の低い顆粒体を形成するタンパク質Morc1に焦点を当てて解明を目指すものである。 本年度は、1. Morc1が形成する核内顆粒(Morc1顆粒)の低流動性に寄与する因子の解明及び、2. Morc1のH3K9me3修飾への寄与について研究を進めた。 1. Morc1顆粒の低流動性に寄与する因子の解明: Morc1の全長の大腸菌精製を試みたが収量が十分でなかったため、これまでにMorc1顆粒の形成に関わるドメインとして同定した天然変性領域(IDR)を大腸菌を用いて精製し、in vitro相分離アッセイを行った。この結果、Morc1がIDRの疎水相互作用を介して相分離し、Morc1顆粒を形成することが示唆された。実際にMortc1のIDRは、他の相分離タンパク質と比較して多くの疎水性アミノ酸を有しており、これがMorc1の低流動性に寄与すると考えられる。 2. Morc1のH3K9me3修飾への寄与: クロマチン免疫沈降法により3T3細胞で発現させたMorc1のクロマチン上での局在を調べたところ、顆粒形成依存的な転写開始点への結合が見られた。さらにH3K9me3修飾を担うSETDB1の相互作用タンパク質Trim28のゲノム局在データとMorc1のゲノム局在データの比較から、Morc1がTrim28と協働することが示唆された。Morc1の免疫沈降を行ったところTrim28との結合が確認され、免疫染色によりMorc1顆粒へのTrim28の共局在も観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画していた1. Morc1顆粒の低流動性に寄与する因子の解明及び、2. Morc1のH3K9me3修飾への寄与について十分に進展を得ることができた。これらのさらなる解析を行うとともに、次年度計画を進めることで、Morc1顆粒の低流動性とトランスポゾンの抑制メカニズムの関係に迫れると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
1. Morc1顆粒の低流動性に寄与する因子の解明に関して、アミノ酸置換変異体を用いたin vitro相分離アッセイにより更なる解析を行っていく。 2. Morc1のH3K9me3修飾への寄与に関して、Morc1-Trim28複合体を介したH3K9me3修飾メカニズムの解明を、複合体タンパク質の同定及び、Morc1、Trim28の変異体解析・クロマチン免疫沈降法により目指す。 3. Morc1のクロマチン局在機構の解明: 修飾ヒストンとの結合及び、PIWIタンパク質との相互作用を解析することで、Morc1がクロマチンの特定部位(トランスポゾン)へ局在するメカニズムを明らかにする。
|