研究課題/領域番号 |
23K14147
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
伊藤 和義 創価大学, 糖鎖生命システム融合研究所, 講師 (10838204)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ムチン型糖鎖 / 先天性糖鎖合成異常症 / ショウジョウバエ / 神経筋接合部 / 糖鎖 / 難治性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
主要なO-結合型糖鎖の1種であるムチン型糖鎖は、哺乳類中枢神経系シナプスのモデルであるショウジョウバエ神経筋接合部の形態形成に機能することがわかっている。ムチン型糖鎖の合成に関わる糖ヌクレオチド輸送体の1つであるSLC35A2の欠損は、先天性糖鎖合成異常症(SLC35A2-CDG)を引き起こす。しかしながら、その病態メカニズムは不明であり、有効な治療法は確立されていない。本研究では、SLC35A2のショウジョウバエオーソログであるUgaltのノックアウト体が示す神経筋接合部の形態形成異常の分子メカニズムを解明することによって、SLC35A2-CDGの病態メカニズムの解明に迫る。
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研究実績の概要 |
主要なO-結合型糖鎖の1種であるムチン型糖鎖は、哺乳類中枢神経系シナプスのモデルであるショウジョウバエ神経筋接合部の形態形成に機能することをこれまでに見出した。しかしながら、その分子メカニズムは全く明らかになっていない。ムチン型糖鎖の糖鎖合成に関与する糖ヌクレオチド輸送体SLC35A2の欠損は、先天性糖鎖合成異常症(SLC35A2-CDG)を引き起こす。しかしながら、その病態メカニズムは不明である。本研究は、ムチン型糖鎖の欠損によって引き起こされる神経筋接合部の形態形成異常の分子メカニズムを解明することによって、SLC35A2-CDGの病態メカニズムの解明に迫ることを目的としている。 まず、SLC35A2のショウジョウバエオーソログであるUgaltのノックアウト体を作製したところ、ムチン型糖鎖の発現量が野生型に比べて減少しており、神経筋接合部の形態形成異常が認められた。さらに、神経筋接合部の表現型解析から、Ugalt遺伝子とムチン型糖鎖を合成する糖転移酵素遺伝子との間に遺伝学的相互作用があることを見出した。これらの結果から、ショウジョウバエにおいてUgaltは神経筋接合部の形態形成に機能するムチン型糖鎖の合成に関与することが明らかになった。そこで、ムチン型糖鎖がどのような分子メカニズムによって神経筋接合部の形態形成に関与しているかを明らかにするために、ムチン型糖鎖を合成する遺伝子の突然変異体における遺伝子発現をRNAシーケンスにより網羅的に解析した。その結果、突然変異体においてJAK-STATシグナルの標的遺伝子の発現量が顕著に上昇していた。このことから、ムチン型糖鎖がJAK-STATシグナルを抑制することによって神経筋接合部の形態形成に寄与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ムチン型糖鎖をもつコアタンパク質を同定するために、質量分析を行う予定だったが、実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記の実験を行うことによって、ムチン型糖鎖が神経筋接合部の形態形成に機能する分子メカニズムを明らかにする予定である。 (1) ムチン型糖鎖をもつタンパク質を網羅的に同定するために、ショウジョウバエから抽出したタンパク質をムチン型糖鎖に結合するレクチンを用いて精製し、質量分析を行う。次に、同定されたタンパク質の中から神経筋接合部の形態形成に機能するタンパク質を探索するために、それらのタンパク質をコードする遺伝子をノックダウンし、神経筋接合部の形態形成異常が起こるかどうかを検討する。形態形成異常が認められた場合は、そのタンパク質がムチン型糖鎖をもつかどうかを生化学的に明らかにする。このようにして、神経筋接合部の形態形成に関わるムチン型糖鎖のコアタンパク質の探索および同定を行う。 (2) RNAシーケンス解析から、ムチン型糖鎖の合成に関与する遺伝子の突然変異体においてJAK-STATシグナルが亢進することが明らかになったため、実際に突然変異体の神経筋接合部においてJAK-STATシグナルが活性化しているかどうかを明らかにする。JAK-STATシグナルが活性化していた場合は、突然変異体においてJAK-STATシグナルの構成要素を抑制することによって神経筋接合部の形態形成異常が救済されるかどうかを検討する。このようにして、神経筋接合部の形態形成においてムチン型糖鎖が制御するシグナル伝達経路を明らかにする。
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