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人工細胞内アクチン重合光操作が可能にする細胞運動原理の構成的解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K14150
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分43040:生物物理学関連
研究機関東北大学

研究代表者

松林 英明  東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (00853061)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワードアクチン / タンパク質化学操作 / タンパク質光操作 / リポソーム / 人工細胞 / 細胞運動 / アクチン細胞骨格
研究開始時の研究の概要

本研究では、真核生物の主要な細胞運動機構である、アクチン細胞骨格によるアメーバ運動を、分子で再現し、その構築原理を明らかにすることを目指す。申請者が開発してきたアクチン重合の光操作系を細胞サイズリポソームの系に応用し、細胞運動時の極性をもったアクチン重合と力発生を再現する。さらに、細胞運動に必要な因子と物理条件の構成的理解に迫る。

研究実績の概要

本研究では、細胞運動を構成的に理解することを目指している。本年度は、まず、細胞が運動する際に見せる非対称なアクチンの重合をリポソーム型人工細胞の内部で再構築することについて進展が得られた。アクチン重合の操作を可能にするために、アクチン重合核形成促進因子と化合物依存型タンパク質二量体化系や、光依存型タンパク質二量体化系とを組み合わせた手法について、細胞内で応用について共著論文として発表した。さらに、化合物依存型タンパク質二量体化系をリポソーム型人工細胞内で応用し、非対称なアクチン重合や膜変形が観察された。この結果について、BioRxivで報告した。光依存型タンパク質二量体化系をリポソーム型人工細胞内に応用した方法についても研究を進め、大きく進展した。特に、アクチンの局在を光で制御する方法とその条件が見出され、さらに、特定の条件において光刺激方向に脂質膜が突出する結果が得られた。今後、非対称なアクチンの操作による膜の突出について、最小因子の同定などさらに解析を進める予定である。また、細胞の運動原理の理解についても、細胞骨格機能の上流の制御に関わるPI3Kの解析から新たな知見が得られ、その成果を報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

主要な成果として、本研究の基盤技術であるアクチン重合の操作について、共著論文を発表した(PMID: 37734382)。またこの実験系をリポソーム型の人工細胞に応用し、結果をBioRxivで公開した(PMID: 37790449)。
研究で用いるアクチン結合タンパク質について、精製タグを改良し、複数種類のアクチン結合タンパク質を統一した精製タグと精製手順で精製できるよう実験系を構築した。論文投稿中である。 これまで6種のアクチン結合タンパク質について、この方法で精製できることが明らかとなり、それぞれのタンパク質について、蛍光分光器、超遠心、全反射顕微鏡などを用いた解析から各タンパク質の活性が確かめられた。
細胞運動の再構築については、リポソーム型人工細胞の実験系において、光刺激方向にアクチンが局在化する条件が見出された。さらに、実験系に加えるタンパク質の組み合わせとその濃度、脂質組成、溶液の浸透圧、ガラス基板の修飾条件、分子混雑因子の有無、なども検討することにより、光刺激方向に脂質膜が突出する結果が得られた。より詳細な解析を目指す目的で、アクチンの蛍光修飾分子の検討を行ったが、新たに検討したJanelia 646 修飾アクチンは、これまで用いてきた Alexa 647 修飾アクチンに比べて輝度が低い結果が得られ、検討を中止した。
PI3Kの新規制御機構については、PI3Kの制御サブユニットである p85beta のiSH2ドメインと、エンドサイトーシスのアダプター分子であるAP2とが結合することを、AlphaFold2の構造予測と、精製タンパク質を用いたプルダウンの解析から明らかにした(PMID: 38521786)。

今後の研究の推進方策

脂質膜の突出について、最小因子の同定と、各タンパク質の至適濃度の探索を進める予定である。リポソーム型人工細胞での検討も進めるが、上記に加えて、より効率的な比較検討を行う目的で、マイクロビーズの滑走アッセイ系の再現を行う予定である。表面にアクチン重合核形成促進因子をコートしたマイクロビーズをアクチンとアクチン結合タンパク質が含まれる溶液に入れると、ビーズ表面のアクチン重合によってビーズが滑走することが知られている。ビーズの移動速度や溶液の粘性から、各条件でのアクチンの力発生の程度を定量することで、アクチンによる力発生に必要な因子とその濃度条件の最適化を図る。これらの実験で得られた知見を、リポソーム型人工細胞に応用し、各因子の膜変形や人工細胞の運動に対する寄与を解析するとともに、それらの原理解明を目指す。さらに、アクチン結合を追加することで、それらの因子の力発生や膜変形への効果を検証することを予定する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (17件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Johns Hopkins University(米国)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Non-catalytic role of phosphoinositide 3-kinase in mesenchymal cell migration through non-canonical induction of p85β/AP2-mediated endocytosis2024

    • 著者名/発表者名
      Matsubayashi Hideaki T.、Mountain Jack、Takahashi Nozomi、Deb Roy Abhijit、Yao Tony、Peterson Amy F.、Saez Gonzalez Cristian、Kawamata Ibuki、Inoue Takanari
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 号: 1 ページ: 1-16

    • DOI

      10.1038/s41467-024-46855-y

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] ActuAtor, a Listeria-inspired molecular tool for physical manipulation of intracellular organizations through de novo actin polymerization2023

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Hideki、Rho Elmer、Lee Christopher T.、Itoh Kie、Deng Daqi、Watanabe Satoshi、Razavi Shiva、Matsubayashi Hideaki T.、Zhu Cuncheng、Jung Eleanor、Rangamani Padmini、Watanabe Shigeki、Inoue Takanari
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 42 号: 10 ページ: 113089-113089

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2023.113089

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 試験管内合成とタンパク質光操作による人工細胞膜の機能拡張2023

    • 著者名/発表者名
      松林英明
    • 学会等名
      第61回日本生物物理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 人工細胞内でのアクチン重合光操作と細胞運動の再構成2023

    • 著者名/発表者名
      松林英明
    • 学会等名
      SPEED Journal Club
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Synthesizing motility in artificial cells by asymmetrically reconstituted actin polymerization2023

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Matsubayashi, Shiva Razavi, Willow Rock, Hideki Nakamura, Daniel A. Kramer, Tomoaki Matsuura, Shin-ichiro M. Nomura, Baoyu Chen, Takanari Inoue
    • 学会等名
      Gordon Research Conference, Directed Cell Migration(オーラル)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Synthesizing motility in artificial cells by asymmetrically reconstituted actin polymerization2023

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Matsubayashi, Shiva Razavi, Willow Rock, Hideki Nakamura, Daniel A. Kramer, Tomoaki Matsuura, Shin-ichiro M. Nomura, Baoyu Chen, Takanari Inoue
    • 学会等名
      Gordon Research Conference, Directed Cell Migration(ポスター)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 人工細胞内でのアクチン重合光操作と細胞運動の再構成2023

    • 著者名/発表者名
      松林英明
    • 学会等名
      生物物理学会サブグループ「人工細胞モデル&分子ロボティクス」第4回研究会(招待講演) 提
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 人工細胞の指向性運動の実現に向けた高出力アクチンアクチュエー タの作成2023

    • 著者名/発表者名
      中島 大地, 野村 M. 慎一郎, 松林 英明
    • 学会等名
      第7 回分子ロボティクス年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 人工多細胞系での時空間情報処理を目指した DNA 振動回路の構築2023

    • 著者名/発表者名
      高橋風雲,野村 M. 慎一郎,村田智,川又生吹,松林英明,安部桂太
    • 学会等名
      第 7 回分子ロボティクス年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 多孔質ゲルを用いた高イオン強度溶液中での GUV 大量生産法の研究2023

    • 著者名/発表者名
      古澤拓実, 安部桂太, 松林英明, 村田智, 野村 M. 慎一郎, Richard James Archer
    • 学会等名
      第 7 回分子ロボティクス年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 油中分子ロボットの構築に向けた細胞サイズ逆ベシクルの作製2023

    • 著者名/発表者名
      仮屋 陽太,安部 桂太,村田 智,野村 慎一郎,松林 英明
    • 学会等名
      第 7 回分子ロボティクス年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] cDICE 法による GUV へのタンパク質封入条件の検討2023

    • 著者名/発表者名
      宮島章太,松林英明,安部桂太,村田智,野村慎一郎
    • 学会等名
      第 7 回分子ロボティクス年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 人工細胞光操作系を用いた基板の接着力と細胞運動の構成的理解2023

    • 著者名/発表者名
      中島大地,Shiva Razavi,井上尊生,野村 M.慎一郎,松林英明
    • 学会等名
      第 61 回 日本生物物理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アクチン細胞骨格の光操作による細胞運動の再構成2023

    • 著者名/発表者名
      松林英明,Shiva Razavi,中島大地,中村秀樹,Daniel A. Kramer,松浦友亮,Baoyu Chen,野村M.慎一郎,井上尊生\
    • 学会等名
      ケミナス47
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 人工細胞のアメーバ運動を実現する接着分子の設計と評価2023

    • 著者名/発表者名
      中島大地,Shiva Razavi,中村秀樹,松浦友亮,井上尊生,野村 M.慎一郎,松林英明
    • 学会等名
      第63 回 生物物理若手の会夏の学校
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 細胞運動のアクセルである酵素PI3Kに秘められたブレーキを発見

    • URL

      https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/03/press20240327-03-cell.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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