研究課題/領域番号 |
23K14159
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西尾 天志 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70964138)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 長鎖DNA一分子観察 / DNA高次構造 / 遺伝子発現活性 / ゲノムサイズDNA / 一分子観察 / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、細胞内外の環境変化を想定し、個々の生体分子(ポリアミン、Na+やK+等の1価カチオンなど)の濃度変化が引き起すゲノムサイズDNAの動的変化(二次構造、高次構造、ブラウン運動の様相など)が、遺伝子発現活性にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである。ゲノムサイズDNAの一分子観察手法を主軸として、DNAの高次構造変化のみならず、ゲノムサイズDNAの動的変化(ブラウン運動の様相など)が遺伝子発現活性にどの様な影響を与えるのかについて究明する。
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研究実績の概要 |
ポリアミン(スペルミン)によって、遺伝子発現活性を様々に制御した条件下で、無細胞系遺伝子発現に対する抗がん剤ダウノマイシン(DM)の作用を調べた。その結果、低濃度DM存在下での弱い発現促進と、DM濃度依存的に引き起こされる発現の抑制という二相性の効果が観察された。さらに、原子間力顕微鏡により、ゲノムサイズDNAの高次構造に対するDMの作用を調べたところ、DM低濃度ではDNAの伸張を引き起こし、一方、高濃度ではスペルミンによって形成されたFlower-like structureを破壊することが明らかにした。DMが引き起こすDNA高次構造あるいは二本鎖切断によって遺伝子発現活性が影響を受けるという本研究成果は、従来の研究では知られることの無かった、DMのDNAへの直接的な作用を明らかにした新規性の高いものとなっている。 DNAの二本鎖切断は細胞内で最も毒性が強く、ゲノムの不安定化をもたらし、がんや細胞死を引き起こすことが知られている。本研究では、蛍光顕微鏡を用いた100キロ塩基対を超える長鎖DNAの溶液中一分子観察により、DNAの二本鎖切断をリアルタイムに観察し定量的に評価することを行った。その結果、コーヒー、お茶、ワインや野菜に多く含まれている天然ポリフェノールのクロロゲン酸が、数マイクロMレベルの低濃度でも二本鎖切断を抑制する、つまり、DNAに対して顕著な保護作用を示すことを見出した。さらに、一本鎖切断がDNA鎖に沿ってランダムに起こることによって、二本鎖切断が引き起こされるといった、切断のメカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞内外の環境変化を想定し、ポリアミンの濃度変化によって長鎖DNAの高次構造を変化させた上で、実際に抗がん剤として使用されている、DMがDNAの高次構造と遺伝子発現活性にどのような影響を与えるのか検討を進めたところ、DMが引き起こすDNA高次構造あるいは二本鎖切断によって遺伝子発現活性が影響を受けるという、当初想定していた以上に興味深い結果が得られ、その究明を進めたため。また、DNAの高次構造や遺伝子発現活性に影響を及ぼすファクターの新たな候補を探索するための予備的実験を進める中で、クロロゲン酸がDNAの二本鎖切断に対して保護効果を示すという、想定外の興味深い現象を見出し、その究明を進めたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、上記以外にも、予備的な段階ではあるが、予想外に興味深い結果が多く得られた。そのため、今後の研究の推進方策として、これらの成果をより発展させ国際論文誌への投稿を進める。同時に、ヒストンたんぱくと長鎖DNAの複合体を作成しより発展的な研究を推進していく。
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