研究課題/領域番号 |
23K14161
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木下 佳昭 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30879846)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | アーキア / べん毛 / in vitro再構成 / ATPase活性 / 回転計測 / 回転モーター / 化学力学共役 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではアーキアべん毛を対象にして、in vitroでの1分子計測系を自主開発すると伴に、アーキアべん毛の回転運動における化学・力学共役関係を素過程レベルで解明することを目指す。具体的には、アーキアべん毛の運動を1分子単位の高い空間・時間分解能 (ナノメートル/ ミリ秒)で解析できる技術基盤を確立し、更には、in vitroならではの化学的な摂動を与えることで、その力学的な応答の1分子解析から、ATP加水分解の各反応素過程 (ATPの結合、分解、生成物の解離)と回転運動の共役スキームを完成させる。
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研究実績の概要 |
運動マシナリーは細胞運動の根源であり、その作動機構を理解するためには、鍵となる『化学・力学間の異種エネルギー変換機構の解明』が最重要課題である。運動マシナリーの力学的な仕事は、ATP加水分解の自由エネルギーから生み出されており、この反応は細胞内で起こるため、細胞内のATP加水分解反応を制御することは、細胞膜といった物理的な砦のため難しい。従って、細胞ベースの先行研究は上記の課題をクリアできず、実験系運動マシナリーの力学特性を評価することに終始していた。本研究では細胞から運動マシナリーを単離・精製し、in vitro下で、『化学・力学間の異種エネルギー変換機構の解明』を目指す。in vitro再構成系は物理・化学的特性を同時に評価でき、速度論およびエネルギー論的な定量解析を実現できる。誰も達成していない挑戦的な課題であるが、成功した暁には運動マシナリー作動機構の普遍性に関する理解を深化させる。 初年度では、in vitro再構成系に必要なタンパク質の取得・精製を目標に実験を行ってきた。具体的には、アーキアべん毛を構成するFlaI・FlaJを精製し、ATPase活性の定量を目的とし実験を行ってきた。本年はATPase取得を行うべく、BLASTを介したインフォマティクスアプローチを導入した。その結果、一部のバクテリアはFlaI, FlaJを保持することが判明し、合成遺伝子サービスを介して、バクテリア由来のFlaI, FlaJのDNAを取得した。大腸菌を用いた精製の結果、目的のタンパク質を取得・精製することはできなかった。来年度以降、メタン菌という実績のあるサンプルに絞って機能解析を行い、タンパク質を取得した暁には、ATPase活性、および、回転測定の実験を遂行していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はin vitro再構成系に必要なタンパク質の取得・精製を目標に実験を行ってきた。具体的には、アーキアべん毛を構成するATPase (FlaI: 軸受け)、および、FlaJ (軸)を精製し、ATPase活性を定量をすることを目的とし実験を行ってきた。 過去の実験から、アーキアを基にしたFlaI, FlaJの精製を行うことで、目的としたバンドをSDS-PAGE上で確認している。ただし、収量が極端に少ないため、本年は近縁種からのATPase取得を行うべく、BLASTを介したインフォマティクスアプローチを導入した。その結果、興味深いことに一部のバクテリアはFlaI, FlaJを保持することが判明した。そこで、合成遺伝子サービスを介して、バクテリア由来のFlaI, FlaJのDNAを取得し、pETベクターに導入した。その後、大腸菌を用いることで、クローニングしたFlaI, FlaJを精製した所、目的のタンパク質を取得・精製することはできなかった。来年度以降は、メタン菌という、アーキアべん毛の他の構成因子において、結晶構造で実績のある宿主由来のFlaI, FlaJに絞って機能解析を行う。タンパク質を取得した暁には、ATPase活性、および、回転測定の実験を遂行していく。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は誰もがなしえていない挑戦的課題である。従って、ATPase測定に限ったとしても、成果取得が困難な可能性も考えられる。そこで、メタン菌由来のFlaI, FlaJに検証対象を広げることに加えて、最低限の課題として代替案も進めていく。 1つめはアーキアべん毛のin situ実験系であるが、ゴーストという半in vitro assay系であるがATPase、および、回転計測は実行可能である。過去の研究から進展させるために、1分子ごとの定量計測を可能にするstep解析等を実行していく。2つめは、先に挙げたようにメタン菌のFlaI, FlaJに解析対象を拡大することで、当初の目標としているFlaI, FlaJのin vitro再構成系を立ち上げる。3つめの案として、FlaIのホモログの解析を進めていく。具体的には、AAA+のホモログであり、現在の生物学でホットトピックとなっているバクテリア免疫系のATPaseを解析対象とする。この対象に関して、ATPase活性を既に確認していると伴に、先行研究の構造解析において、回転する可能性が示されている。本来アーキアべん毛のATPaseで行おうとするべく進めた研究であるが、免疫研究のホモログを解析することで、新奇回転ATPaseの発見と伴に、回転機構の普遍性・特異性の理解を深化させていく。
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