研究課題/領域番号 |
23K14172
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43060:システムゲノム科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武居 宏明 九州大学, 医学研究院, 助教 (60912053)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 遺伝子重複 / 多重遺伝子族の創成 / 縦列反復 / nCas9 / 変異原性 / 多重遺伝子族創成 / 組換え修復 |
研究開始時の研究の概要 |
進化における遺伝子重複の重要性は、近年のゲノム科学の進展によって、より一層強く認識されるようになった。一方で、ゲノム進化の実験的再現や構成的アプローチ、進化工学の新しい局面を切り拓くためには、多重遺伝子族の創生を実現できるほどに高い遺伝子重複効率を持ち、かつ、変異誘発とも相性の良い新規遺伝子重複手法が必要である。本研究では、申請者らが開発した、縦列反復した遺伝子を高度に重複伸長できる技術BiTRExを変異誘発条件下で行うことによって、重複と多様化の同時進行による遺伝子機能の多様化、多重遺伝子族創成に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究は、申請者らが開発した、縦列反復した遺伝子を高度に重複伸長できる技術Break-mediated replication-induced Tandem Repeat Expansion(BITREx)を変異誘発条件下で行うことによって、重複と多様化の同時進行による遺伝子機能の多様化、多重遺伝子族創成に挑戦するものである。 これらを行うために、BITRExによる重複が起こった場合にのみ両遺伝子の転写が生じるように設計した、蛍光遺伝子および選択マーカー遺伝子にて構成された遺伝子アレイを出芽酵母のCUP1遺伝子座に導入した細胞株を作製した。我々は、ナノポアシークエンサーを利用して得られた大量のリードからターゲット領域の各塩基ごとにおける変異率を解析できる手法を構築した。シトシンをウラシルに変換するバイサルファイト存在下でBITRExを行ったところ、遺伝子アレイの伸長と共に、バイサルファイト非存在下での培養株と比較して、遺伝子アレイ配列中のシトシンおよび相補的塩基のグアニジンにおける変異率の顕著な増加が認められた。対して、アデノシンおよびチミンの変異率の変化は認められなかったことから、変異原存在下でのBITRExによって、重複と多様化の同時進行が可能であることが示唆された。 現在は、単離した細胞の蛍光強度と栄養選択性から、変異によって各遺伝子からコードされるタンパク質の表現型が変化した個体を選出し、ナノポアシークエンスにて変異が生じた遺伝子アレイの抽出を試みている。これらの結果が得られることで、BiTRExと変異誘発の組み合わせを利用して、実際の生物進化よりも遥かに短い期間での遺伝子機能の多様化・多重遺伝子族の創成を人為的に引き起こすことの達成が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れの原因としては、多重遺伝子族の創成を評価するための菌株の選択にある。 計画当初の目標では蛍光タンパク質遺伝子2コピーからなるアレイでCUP1遺伝子座を置換したゲノム編集菌株を作成し、隣接領域にnCas9をターゲットして遺伝子の重複伸長を確認する予定であった。しかしながら、蛍光タンパク質遺伝子のみのアレイではマーカー選択による伸長および変異導入の評価が困難という理由から、現在のところは、伸長することで選択マーカーとして機能する遺伝子配列および蛍光タンパク質遺伝子で構成されたアレイに変更した。 この菌株にてアレイの伸長と変異導入が両立する可能性を示唆する結果が得られているものの、多重遺伝子族の創成を評価するための、より最適な菌株の作製は依然として課題が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は上記の最適な菌株を選出したうえで、多重遺伝子族の創成に適した変異導入環境を構築することを基盤に研究計画を進める。具体的には、効率的に遺伝子伸長が誘発可能になることが分かっているヒストンアセチル化関連遺伝子RTT109をノックアウトした菌株を使用することで、変異導入発生の機会を増やすことの有効性を検証する。 変異導入の環境が整った後に、異なる遺伝子アレイへの適用と、よりBITRExで伸長する領域選択性の高い変異導入法を開発することで、更なる多重遺伝子族創成に展開できる可能性を探っていく予定である。
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