研究課題/領域番号 |
23K14207
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 義宣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10869390)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自家不和合性 / 植物生殖障壁 / タンパク質複合体 / カルシウムイオン |
研究開始時の研究の概要 |
多くの植物は、自己の花粉・雌しべを認識し拒絶することで自殖を防ぐ (自家不和合性)。ケシ科植物では、雌しべ側シグナル分子PrsSと花粉管側受容体PrpSによる自己認識機構が存在する。自己花粉のPrsSがPrpS受容体に認識されると、花粉管にカルシウムイオンの流入などの生理応答が起こり、最終的に花粉管の伸長が止まる。本研究では、PrpS受容体を含むケシ科自家不和合性装置の構成を明らかにすることで、ケシ科植物の自家不和合性のメカニズム理解を目指す。
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研究実績の概要 |
多くの植物は、自己の花粉・雌しべを認識し拒絶することで自殖を防ぐ (自家不和合性)。ケシ科植物では、雌しべ側シグナル分子PrsSと花粉管側受容体PrpSによる自己認識機構が存在する。自己花粉のPrsSがPrpS受容体に認識されると、花粉管にカルシウムイオンの流入などの生理応答が起こり、最終的に花粉管の伸長が止まる。本研究では、PrpS受容体を含むケシ科自家不和合性装置の構成を明らかにすることで、ケシ科植物の自家不和合性のメカニズム理解を目指す。本年度は、ケシ科植物の自家不和合反応がタバコ葉でも再現可能であることを見出し、生化学的に取り扱いやすく大量に準備しやすい環境を構築した。また、PrpS受容体を含む膜タンパク質複合体を生化学的に分離・検出する系の立ち上げを行った。このケシ科自家不和合反応を担う分子装置は、Blue Native-PAGEでは泳動中に崩壊が起こるものの、large pore Clear Native-PAGEを適用することによって複合体構造を壊すことなく、分離することが可能になった。その結果、ケシ科自家不和合性装置は約300 kDa程度の分子サイズを有することが明らかになった。PrpSタバコ葉において共免疫沈降によるPrpS受容体との相互作用候補因子を見出した。現在、機能検証を行うべく、同様にケシ科自家不和合反応を再構成可能なシロイヌナズナにおいて、当該遺伝子の欠損変異体の作成を進行させている。またクライオ電子顕微鏡によるPrpS複合体構造へと繋がるnative条件での複合体精製・溶出を可能にする条件を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、シロイヌナズナにおいて、相互作用因子の同定に向けた共免疫沈降などの実験を計画していた。ケシ科自家不和合性を再構成したシロイヌナズナ形質転換体の作出を進めていたが、植物体の準備期間中に先行してタバコ葉における予備的な生化学解析の条件検討に着手した。その結果、タバコ葉においてもケシ科自家不和合反応は再構成されること、ケシ科自家不和合性装置の複合体分離が可能であることを見出すことができ、シロイヌナズナを材料とするよりも迅速に実験条件を立ち上げることに成功した。また複合体分離条件の最適化も完了し、当該複合体が約300 kDa程度の分子サイズを有することが明らかとなった。タバコ葉におけるケシ科自家不和合反応を担うPrpS受容体の共免疫沈降の条件も確立することができ、PrpSの他、いくつかの特異的なバンドが相互作用因子の候補として検出された。さらにPrpS複合体を構造を保ったままnativeな状態で溶出する実験系を確立することができ、これによりクライオ電子顕微鏡による複合体構造解析への足がかりを生み出すことができた。構造解析は当初の計画にはない実験であり、成功すれば得られる知見は研究計画の目標以上のものになることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
同定した因子が実際にケシ科自家不和合性に関与するか検証を行う。当該因子をコードする遺伝子の欠損変異体をシロイヌナズナにおいてゲノム編集により作出する。さらに、再構成したケシ科自家不和合性が失われるかどうか、受粉試験及びYellow Cameleon 3.6による細胞内カルシウム濃度のモニタリングによって検証を行う。並行して、PrpS複合体の機能解析を行う。すなわちPrpS複合体そのものがカルシウムイオンの流入に直接関与するか、検証を行う。明らかにしたケシ科自家不和合性に関わる必須因子群を緑藻クラミドモナス (Chlamydomonas reinhardtii)、もしくは酵母 (Saccharomyces cerevi siae) にて共発現させ、ケシ科自家不和合反応の再構成を試みる。再構成した生物の粗細胞膜画分を使用して、リポソームを再構成しCa2+の流入能を検証する。また、生化学的に精製された膜タンパク質複合体もリポソーム再構成からも可能である (Kikuchi et al. 2013)。精製したPrpS複合体を用いたリポソーム再構成も検討する。PrpS複合体の精製に関して、スケールアップの条件検討を行い、クライオ電子顕微鏡による構造解析に向けたサンプル調製の条件確立を進行させる。
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