研究課題/領域番号 |
23K14215
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 千愛 筑波大学, 下田臨海実験センター, 研究員 (20962541)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 有性生殖 / 精子 / シグナル伝達 / cAMP / 鞭毛 |
研究開始時の研究の概要 |
精子は鞭毛をリズミカルに拍動させ遊泳することで卵へとたどり着き受精する。次世代を残すために必須である鞭毛運動の調節にはcAMPによるシグナル伝達が関与していることが、動物では報告されている。一方、植物では精子の鞭毛運動調節に関与するシグナル分子はほとんど明らかにされていない。本研究では遺伝子組換えが容易であり、精子が大量かつ容易に得られる陸上植物ゼニゴケを用いて、cAMPが植物精子の運動性を調節するメカニズムの解明を目指す。また、動物で得られている知見と比較することで、動植物精子におけるcAMPシグナル系の役割とcAMPシグナル系構成因子の共通性と多様性の理解に繋げる。
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研究実績の概要 |
本研究はコケ植物ゼニゴケを用いて、精子の運動調節における細胞内シグナル伝達物質の1つであるサイクリックAMP(cAMP)の役割の解明を目指すものである。特に、2023年度はゼニゴケ精子におけるcAMPシグナル伝達機構の解明に取り組んだ。ゼニゴケのゲノムおよびトランスクリプトームデータを用いて、cAMP結合部位をもつcAMP効果器を探索し、14のcAMPシグナリング関連候補タンパク質を発見した。このゼニゴケcAMPシグナリング関連候補タンパク質の中には動物で精子の運動性に関与していることが報告されているものや、これまでに報告のないドメイン構造を持った新規タンパク質が含まれていた。本研究課題ではcAMPシグナリング関連候補タンパク質のうち、ゼニゴケのトランスクリプトームデータにより精子をつくる器官で発現量が高いものを選定し、なかでも、多くの生物でcAMPの主要なターゲットとして知られるcAMP依存性リン酸化酵素(PKA)について機能解析をおこなった。PKAの調節サブユニットを欠損させた株の精子は、形態は正常であるにも関わらず、野生株に比べて運動性が著しく低下することがわかった。cAMPを合成および分解する酵素(CAPE)の機能欠損株も同様な表現系を示すことから、ゼニゴケにおいてCAPEとPKAという2つのcAMPシグナル伝達系因子が精子の遊泳を制御するために重要であることが明らかになった。 もう1つの軸である、植物においてcAMPがどこで・どのように機能しているかの解明については、CAPE機能欠損株と野生株でのcAMP動態の観察を予定していた。しかし、CAPE機能欠損株でトータルcAMP量が野生株と同じレベルであるという予想外な結果となった。薬剤でcAMPレベルをコントロールする方法や新たなCAPE機能欠損株の作製を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゼニゴケ精子の運動調節に関連するcAMPシグナル伝達系因子を明らかにし、論文にまとめた。CAPE機能欠損株と野生株を用いてcAMP動態の解析を行う予定であったが、CAPE機能欠損株でトータルcAMP量が変化しないという予想外の結果が出たため、計画を変更する必要が出た。
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今後の研究の推進方策 |
PKA依存的にリン酸化される標的タンパク質についてさらに解析を進める。また、cAMP動態の解析については、薬剤でcAMPレベルをコントロールする方法の探索や新たなCAPE機能欠損株の作製により解決を試みる。
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