研究課題/領域番号 |
23K14228
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤岡 春菜 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (40943535)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 社会性昆虫 / 概日リズム |
研究開始時の研究の概要 |
ほとんどの生物は、約24時間周期の概日リズムを示す。しかし、アリでは繁殖や育児ときに採餌に関連して、行動レベルの概日リズムを失う。社会的要因によって誘導される常時活動性がどのように生み出されるのか、そのメカニズムはほとんど分かっていない。そこで本研究では、トゲオオハリアリを用いて、常時活動性を示す個体の概日時計の振動挙動と概日時計の下流で働く被駆動系を調べることで、常時活動性を生み出す分子基盤を解明する。
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研究実績の概要 |
ほとんどの生物は、24 時間周期で繰り返される昼夜サイクルに適応した、概日リズムを備えている。この概日リズムに影響を与えるのは、光や温度などの非生物的な環境要因だけでなく、個体間の相互作用など生物的要因も含まれる。しかし、この生物的要因がどのように個体の概日リズムに影響を与えるかは未解明な点が多い。近年、アリやミツバチなどの社会性昆虫において、概日リズムと社会的環境が強く関連する個体間の同調現象に加え、繁殖や育児さらに成虫間相互作用に関連して起こる概日リズムの消失が報告されている。
本研究課題では、概日活動リズムの表現型が既知のトゲオオハリアリを材料に、常時活動性が概日時計が止まることで引き起こされるのか、概日時計の下流にある系が変化することで引き起こされるのかを明らかにすることを目的とする。トゲオオハリアリでは、未成熟個体との相互作用によって、常時活動性へと行動が変化する。この常時活動時に概日時計が動いているのかを明らかにするため、概日リズムを生み出す中核となる時計遺伝子と時計タンパク質の日周的発現振動を解析する。さらに、概日時計が動いているにもかかわらず、常時活動性が起こる場合を考慮し、概日時計の下流で働く2つの神経伝達物質の局在と日周的発現振動も調べることで、概日時計と被駆動系の双方から、常時活動性を生み出す分子機構の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アリ類で報告されている8つの概日時計遺伝子(period , cycle , timeless, clock, cryptochrome-m, vrille, par domain protein 1, clockwork orange)の日周発現振動を解析する。(1)単独条件の内勤個体、(2)常時活動性を示す幼虫と同居させた内勤個体、(3)単独条件の外勤個体から、4時間ごとに計7回サンプリングした。頭部からRNAを抽出し、定量PCRで各時計遺伝子の発現量を測定し、1日を単位とした時計遺伝子の発現振動を調べた。トゲオオハリアリが概日活動リズムを示す条件では、ほとんどの遺伝子で、24時間周期の発現振動が認められた。さらに一部の時計遺伝子において、常時活動時に発現振動がなかった。 概日時計の下流で働く神経ペプチドの発現・局在の日周性の分析を進めている。トゲオオハリアリの脳内において、昆虫の概日時計細胞の下流で働く神経ペプチドとして最もよく知られる、Pigment dispersing factor(PDF)の発現・局在を確認した。さらに、キイロショウジョウバエで、概日時計細胞から時刻情報の出力に関わる神経ペプチド short Neuropeptide F(sNPF)では、時計細胞であると考えられている脳領域で、陽性が確認できつつある。
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今後の研究の推進方策 |
概日時計の働きを考察する上で、時計タンパク質PERIOD の時間的挙動が重要であると考えている。PERIODの抗体が不足してしまったため計画を変更し、新たに免疫組織染色のための抗体の作成を試みている。抗体作成が成功したのち、PER、PDF、sNPFを用いて各陽性細胞の位置を確認し、発現強度(蛍光)の日周性を調べる。
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