研究課題/領域番号 |
23K14231
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大内 彩子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員 (40888187)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 嗅内皮質 / 空間ナビゲーション / 格子細胞 / 海馬 / 位相前進 |
研究開始時の研究の概要 |
空間ナビゲーション機能は、主に海馬や嗅内皮質と呼ばれる脳領域によって司られると考えられている。これらの脳領域においては、ニューロンの発火活動により過去・現在・未来の空間情報が圧縮表現される現象(位相前進)が生じる。すなわち、位相前進は物体の位置や場所などの空間情報を圧縮表現することで記憶痕跡の情報保管を担うと認知されており、空間ナビゲーション機能の形成・発揮に寄与することが想定される。しかし、位相前進の制御機構は明らかでない。 申請研究では、海馬-嗅内皮質回路構造に着目し、目的地を目指して走行するラットより、海馬および嗅内皮質から大規模な神経活動の同時記録を試みることで位相前進の制御機構に迫る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は空間ナビゲーションにおける未来の情報表現に着目し、海馬-嗅内皮質回路で観測される位相前進の制御システムを解明することである。 空間ナビゲーション機能は、主に海馬や嗅内皮質などの脳領域によって司られる。特に嗅内皮質は空間認知機能や動物自身の走る速度および頭の方向を表象する機能を有するが、空間情報を予測し将来の経路決定に関わるのかは不明だった。本研究では、申請書に記載した実験課題を改良し、広い2次元空間において動物に多方向を直線上を往復する実験課題を構築し、自由行動下のラットより海馬および嗅内皮質から大規模に神経活動を同時記録するin vivo実験技術を組み合わせた。その結果、嗅内皮質において将来の位置に対して空間予測符号化を行う予測型格子細胞を発見したことを報告する。 予測型格子細胞は、動物の進行方向に対して手前方向に発火する位置がシフトすることで未来の空間情報を表現する。また、予測型格子細胞は直線に走行する際だけでなく空間を自由に探索させた際にも、将来の位置に対して空間を予測性質を持つことがわかった。さらに、従来の格子細胞とは異なる海馬シータ波の位相で発火することで、これらの活動が協調し現在から未来の情報表現に関与することを明らかにした。加えて、予測型格子細胞と海馬CA1野場所細胞の機能的結合を確認できたことから、予測型格子細胞が海馬へ未来の情報を伝達する可能性が高い。これらの結果は、予測型格子細胞が将来の経路を予測し決定するメカニズムに寄与することを示唆する。 当該研究成果を第一著者として論文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者は、申請書に記述した実験課題を改良し、新たな実験課題において、新種の格子細胞を発見した。嗅内皮質に存在する将来の位置を予測する格子細胞の発見は、神経科学分野において大きなインパクトをもたらすものであると確信している。当該研究成果は、第一著者として現在論文誌に投稿中であり、追加実験および解析を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は論文の受理に向けて追加実験および解析を引き続き遂行する。加えて、申請者が発見した格子細胞の他領域への投射や、新種の格子細胞が海馬-嗅内皮質回路全体でどのように情報を統合していくのかを調べ、本研究の目的である海馬-嗅内皮質経路における位相前進のメカニズムの解明を目指す。
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