研究課題/領域番号 |
23K14255
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
野尻 太郎 順天堂大学, 大学院医学研究科, 学振特別研究員(PD) (40968921)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 喉頭 / 鳴胞 / キクガシラコウモリ類 / 迷走神経 / エコーロケーション / コウモリ類 / 胎子期発生 / 生物音響学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は超音波の音響特性と喉頭発生の種間変異の関連性を検討し, コウモリ類の超音波の多様性を創出した発生基盤の解明を目指す. 超音波能力の異なるコウモリ類系統間で喉頭を構成する 3 軟骨 (輪状軟骨, 甲状軟骨, 披裂軟骨), 3筋肉 (輪状甲状筋,輪状披裂筋, 甲状披裂筋), 2 神経 (前喉頭神経, 反回神経)の発生を記載・比較し, 系統樹上で超音波の音声型との対応関係を構築する.
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研究実績の概要 |
今年度はキクガシラコウモリ類を対象に、マイクロCT、連続組織切片、神経細胞内の微小管を特異的に標識するアセチル化チューブリン抗体を用いた免疫組織化学染色法を用いて、喉頭の筋骨格神経形態の三次元再構築およびマウス胚との比較分析を行った。結果、キクガシラコウモリ類の内喉頭筋のひとつである輪状甲状筋が背側と腹側とに分化しており、迷走神経の前喉頭神経の新奇分枝が生じていることが判明した。つぎに、キクガシラコウモリ類やカグラコウモリ類の系統の第1-2気管軟骨の両外側に備わっている袋状気管、 "鳴胞"の発生学的解析を行った。軟骨細胞分化マーカーであるSox9抗体を用いた免疫組織化学染色法により、キクガシラコウモリ類胚の喉頭・気管領域の軟骨細胞を標識した結果、鳴胞が輪状軟骨の腹側部から膨出していることが判明した。コウモリ類のなかでキクガシラコウモリ類と同亜目に属するオオコウモリ類の系統ではこうした袋状の器官が見られないことを考えると、鳴胞はキクガシラコウモリ類の系統で超音波発信能力の獲得に付随して輪状軟骨の形態変化により構築された新奇の喉頭軟骨であることが示唆された。また、前述の輪状甲状筋の腹側部が鳴胞に付着していたことから、輪状甲状筋の分化、前喉頭神経の新奇分枝は鳴胞の獲得に付随して生じたことが考えられる。また、キクガシラコウモリ類の生後0日齢、14日齢、20日齢、30日齢、44日齢、成体の各ステージでの舌骨喉頭の軟骨結晶化過程を超音波パルスの発達過程と対照させたところ、超音波パルスが初めて観察された14日齢以降に鳴胞軟骨の結晶化が生じていたことが判明した。したがって、鳴胞軟骨の結晶化は超音波パルスの発達を裏打ちする発生学的イベントであることが明らかとなった。本研究はすでに1報の論文としてまとめ、出版済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は前年度採集したキクガシラコウモリ類の胚サンプルの組織学的・発生学的解析のほかに, 生後個体の超音波パルスの発達過程における生物音響学的解析に着手することができ, 本研究課題の要であった超音波パルスの多様性を創出する舌骨・喉頭の形態変化を明らかにするうえでの基盤固めを計画以上に伸展させることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 発生学ー生物音響学の統合研究をコウモリ類の1系統内での分析からコウモリ類全体へと拡張し, コウモリ類内での舌骨・喉頭の形態形成過程の網羅的比較, 超音波パルスの変異との対応関係の構築を行うことで, コウモリ類の超音波パルスにおける音響学的多様性を創出した発生学的イベントの解明を行う所存である.
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