研究課題/領域番号 |
23K14290
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森原 隆太 岡山大学, 大学病院, 講師 (40895257)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 液-液相分離 / fused in sarcoma / アルギニンメチル化 / 筋萎縮性側索硬化症 / 質量分析法 / FUS / 相分離 / 前頭側頭型認知症 |
研究開始時の研究の概要 |
RNA結合蛋白の一種であるFUSは、相分離により可逆的に形態を変化させるが、相分離が破綻するとFUSは異常凝集して神経障害を引き起こし、家族性筋萎縮側索硬化症6型(ALS6)と前頭側頭型認知症(FTLD)の発症に関与する。FUS異常凝集にはFUSアルギニン残基のメチル化異常が関係しているとされるが、分かっていないことも多い。そこで本研究では、ALS6とFTLDの剖検脳を質量分析に供することで、各疾患で特異的にメチル化しているアルギニン残基と、それに影響を及ぼすFUS相互作用タンパク質を同定するとともに、それらがFUS相分離異常にどう関わるのかを相分離アッセイを用いて明らかにする。
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研究実績の概要 |
RNA結合蛋白の一種であるfused in sarcoma(FUS)は、相分離により可逆的に「分散状」「滴状」「ゲル状」に形態を変化させるが、相分離が破綻するとFUSは異常凝集して神経障害を引き起こし、家族性筋萎縮側索硬化症6型(ALS6)と前頭側頭型認知症(FTLD)の発症に関与する。FUS異常凝集にはFUSアルギニン残基のメチル化異常が関係しているとされるが、分かっていないことも多い。本研究では、まずALS6 (n=2), FTLD (n=6)、control (n=6)の剖検脳を質量分析に供することで、疾患ごとに各アルギニン残基のメチル化状態の違いを明らかにしたところ、FUSの全53のアルギニンのうち、FTLDでは6つのアルギニンがcontrolと比較して有意に脱メチル化していた。FUSはC末に多数存在するアルギニンとN末のチロシンとの間にカチオンπ相互作用が生じることで相分離が形成されるが、この相互作用はアルギニンが脱メチル化することで増強されることが分かっている。FTLDにおいてFUSが凝集する原因にこの6つのアルギニンの脱メチル化が関与しているのではないかという推測の元、これら6つのアルギニンをアラニンに変換することでカチオンπ作用を消失したベクターを作成し、野生型と変異型のFUSリコンビナントタンパク質を作成して相分離状態を比較したところ、変異型では野生型と比べて相分離が抑制されて異常なFUS凝集が減少していることが分かった。今後は同様の変異を起こしたベクターを培養細胞に導入し、FUS相分離とFUS凝集にどのような違いがあるかを見ていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、ALS6, FTLD, controlの3群の剖検脳からの質量分析法により各群に特異的なアルギニンのメチル化異常を明らかにするとともに、これら疾患特異的なアルギニン残基をアラニンに変異させたリコンビナントタンパク質を作成して相分離状態の違いを比較するところまで行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
FTLDで特異的に脱メチル化している6つのアルギニンをアラニンに変異させたリコンビナントタンパク質の相分離は野生型と比べて抑制されており、FUS異常凝集も減少しているという結果に基づき、同様の変異を導入したベクターを培養細胞に導入する。FUSは生理的には核内に存在し、凝集体を形成しない。ここで脱メチル化酵素(AdOX)を導入するとFUSは核外に移動して凝集体を形成する。カチオンπ相互作用を減少させて相分離を抑制させた変異型が、野生型と比べてFUS凝集にどのような違いが生じるのかを見ていく予定である。
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