研究課題/領域番号 |
23K14300
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上岡 雄太郎 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任助教 (20961204)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | レザバー計算 / 行動シミュレーション / 神経科学 |
研究開始時の研究の概要 |
生物は過去の感覚刺激の履歴を持った上で現在の感覚刺激に応答するため、同じ刺激に対しても行動は常には画一的にならない。これは生物の行動の特徴である。この原理を解き明かすため、脳との類似性が示唆されるレザバー計算(再帰的ニューラルネットワークの一種)による行動生成シミュレーションを行う。時系列データを処理するためにRNNが機械学習の分野では使われるが、これを用いて時系列タスク中のマウスの全身行動生成を行った研究は未だ無い。実際のマウスの神経活動データを用い、生物の脳を模倣したネットワークの構築を行い、これを通じて生物の時系列データの処理方法の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
脳の機能の一つは行動を制御することである。マウスを用いたシステム神経科学の課題では従来、マウスの行動を数秒程度の一定の区間で区切り、その区間毎に解析することが多かった。実験のパラダイムがマウスに区間毎に特定の行動・選択を促すものであるため、区間ごとに解析すること妥当であったが、一方で脳は数秒毎に行動を生成するわけではなく、連続時間で行動を生成する。このため、脳を理解するためには、全身の行動の連続時間での解析が必要と考えられる。 本研究では音識別タスク中のマウスの全身行動を連続時間粒度で予測する生物模倣型の人工ニューラルネットワークの構築を目指した。 レザバー計算ニューラルネットワークを構築し、ここにマウスと同様の外界刺激を入力しマウスの行動を再現して出力するようにネットワークを訓練した。この結果、従来のベースラインモデルと比較しレザバー計算モデルは良い精度を達成した。更に、この人工ニューラルネットワークにマウスの神経活動を追加で入力することで、神経活動を入力していない場合と比較し、行動予測精度が更に高まることが分かった。レザバー計算モデルに神経活動を入力した際の人工ニューラルネット内の素子の活動を観察すると、実際のマウスの神経活動と類似した活動が生成されることが確認された。 このことから、人工ニューラルネットワークはマウスの脳活動に類似した活動を伴いマウス様の行動を生成していると想定される。人工ニューラルネットワークの素子の活動を解析することで、マウスの脳内での情報処理を理解する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工ニューラルネットワークに入力できる形へのデータの成形と、人工ニューラルネットワークの構築を完了し、神経活動を人工ニューラルネットワークへ導入し、モデルの精度を比較した。この結果として、行動の予測精度が神経活動を加えることによって向上することが確認された。更にネットワークへ神経活動を入力することによってマウスの神経活動と類似の活動を行う素子がネットワーク内に増えていることが分かった。 現在、この人工ニューラルネットワークの行動予測精度が神経活動の入力によって上昇する理由を調べている。これによって実際のマウスが行動する際の脳内での情報処理メカニズムに関する知見が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
人工ニューラルネットワークには現在のデータしか入力していないにも関わらず、この情報が人工ニューラルネットワーク内の素子間で伝播することで、情報の保持かつ編集が行われる。マウスも同様に、内的な状態として保存された過去の情報と現在の外界から取得された情報を統合することで適切な行動を取ることが可能となる。 マウスの実際の行動の解析を詳細に行うことによって、マウスの行動が外界入力に依存しているのか、内的状態に依存しているのか、その様式を調べる。 また、その後に、人工ニューラルネットワークから生成された予測行動でも同様に外界入力と内部状態にどの様に依存しているかを調べる。 さらに、この依存が人工ニューラルネットワークのどういった素子の活動から生成されるのか確認することで、マウスの脳内で行動生成する際の情報処理の一端を理解する。
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