研究課題/領域番号 |
23K14305
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
荻澤 翔平 日本大学, 歯学部, 助教 (10804883)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 島皮質 / パッチクランプ / インスリン |
研究開始時の研究の概要 |
島皮質は摂食に関する多様な感覚情報を処理している。またインスリンは血糖値の調節に働くことが知られている。島皮質にはインスリン受容体が密に発現しており,インスリンによって島皮質ニューロンの発火特性に影響を与えることが報告されている。しかしインスリンの島皮質における細胞間のシナプス伝達への影響については不明である。そこで,興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを同定するために抑制性ニューロンが緑色蛍光タンパクVenusで標識された遺伝子改変動物を使用し,ホールセル・パッチクランプ法にて複数の細胞から同時に脱分極性パルスによって生じるシナプス応答を記録することで,インスリン投与による変化を明らかにする。
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研究実績の概要 |
インスリンは,血糖値の上昇を抑制するために働く食後分泌されるホルモンとして広く知られている。近年,中枢神経系においてインスリンは,食欲を抑制する働きが報告されている。島皮質は,大脳皮質の側頭葉と前頭葉の境界に位置し,味覚や内臓感覚を統合処理することや認知機能に関わることが知られている。そして,島皮質は意欲や報酬系にはたらく側坐核のmedium spiny neuronに強くシナプス結合している報告されている。したがって,島皮質は,味覚情報処理を行うほか,満腹感などの内臓感覚の情報処理と併せて,摂食行動に関与すると考えられる。島皮質には,インスリン受容体が密に発現しており,インスリンについては,島皮質興奮性ニューロンの活動性が上昇することは明らかになっているものの,シナプスレベルにおける生理学的働きは,いまだ不明のままである。そこで,島皮質における局所回路に対するインスリンの抑制性シナプス伝達の影響を解析すべく,実験を行った。皮質ニューロンにおける発火特性に対するインスリンの効果の解析を行った。手順としては,GABA作動性抑制性ニューロンと興奮性錐体細胞を同定できるVGAT-Venus遺伝子改変ラットを用いてラットの脳から急性脳スライス標本を作製し、混合ガスを含ませた人工脳脊髄液中で神経細胞を生かし、蛍光顕微鏡観察下でGABA作動性抑制性ニューロンと興奮性錐体細胞を区別して記録を行いインスリンを灌流投与してその効果を検索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱分極性ならびに過分極性電流パルスによる発火特性・膜応答特性の違いからニューロンのタイプを同定し,インスリン投与による発火特性の変化を解析した。その結果,fast-spikingニューロンの発火特性に対するインスリンの効果は、静止膜電位および入力抵抗の変化は認めなかったが、基電流を低下させ、発火頻度を増加させた。続いて,島皮質ニューロンにおけるuIPSCに対するインスリンの効果の解析を行ったところ,インスリンはuIPSCの振幅を増大させ、一発目と二発目の振幅の比(PPR)を減少させた。以上の通り、実験は計画どおり進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,以下の順で研究を行う。①島皮質ニューロンにおけるuEPSCに対するインスリンの効果の解析を行う。具体的には,VGAT-Venusラットを用いて急性脳スライス標本を作製し,興奮性ニューロンに脱分極パルスを与えて興奮性ニューロンからuEPSCを記録する。コントロールと比較してインスリン投与時の振幅の変化と短時間で2発刺激した際の応答の振幅からpaired-pulse ratioを求め,シナプス伝達効率について検討する。②シナプス伝達特性の変化をもたらす細胞内カスケードの同定を行う。uIPSCまたはuEPSCに対するインスリンによる変化を認めた場合に,その効果をもたらす細胞内カスケードを同定するべくブロッカー試薬を用いてその効果を検討する。
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