研究課題/領域番号 |
23K14313
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 顕斗 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (20966262)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 光触媒 / 遷移金属触媒 / 二酸化炭素 / 光励起 / 酸化還元 / ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
光酸化還元触媒は、一電子酸化還元反応で従来とは異なる反応経路を促進するため、CO2を活性化する新手法への応用が期待される。本研究では、可視光レドックス触媒を2回励起してCO2をアニオンラジカルへ還元する手法を開発し、特殊アミノ酸の網羅的合成に取り組む。まずその手始めとして、アニオンラジカルのアルケンへの付加反応を利用し、β-アミノ酸の網羅的合成に取り組む。本活性化法が実現すれば、将来的にα-アミノ酸やγ-アミノ酸合成への応用も期待でき、これら特殊アミノ酸による持続可能な医薬品探索に貢献すると期待される。
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研究実績の概要 |
当初の予定通り、可視光励起と光触媒存在下でCO2からラジカルアニオンを発生させ、アルケンに付加させることでカルボン酸を得る過程までは確認できた。この結果生じるラジカル中間体を窒素官能基化して、特殊アミノ酸へと変換可能な遷移金属触媒を現在探索中である。計画では、ラジカル中間体を遷移金属上に捕捉して、窒素求核剤の配位と還元的脱離でアミノ酸前駆体へと誘導する予定であったが、現在までの検討では困難であった。今後は当初の想定機構だけではなく、配位子同士のラジカルカップリングまたはSH2機構も考慮し、銅触媒や反応基質を再検討することで、研究目的である、特殊アミノ酸の網羅的合成へとつなげていく。 また、この遷移金属触媒の探索の過程でコバルト触媒を用いた際、想定外ではあったが不飽和アミド化合物へ、オキサコバルタサイクル経由でのCO2の固定化に成功し、特殊アミノ酸前駆体合成に成功した。この反応は、光触媒とコバルト触媒から生じる低原子価活性種こ、CO2と炭素多重結合が酸化的環化付加したメタラサイクル中間体を経由していると考えられる。実際にこの反応と同様の触媒系において、オキサコバルタサイクルを経由するアルキナールの還元的環化反応を見出し、国内学会で発表するとともに国際学術誌へ発表した(10.1021/acscatal.3c06206)。また、このCO2固定化の際、多重結合の還元反応が副反応として起きたため、これを抑えるために詳細な検討を行ったところ、犠牲還元剤由来のラジカルがヒドリド源となっていることが明らかになった。本成果に関しても国内学会で発表し、現在国際学術誌へ投稿準備中である。これらの知見を複合的に活用し、オキサコバルタサイクル経由での特殊アミノ酸の合成も発展させ、研究目的の達成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2からラジカルアニオンを発生させる過程は確認できたため、適切な遷移金属触媒の選定が上手くいけば、当初の研究計画は達成が見込めると考えているため。また、本研究のゴールである、特殊アミノ酸を合成するという観点では、光触媒とコバルト触媒を用いる新たな手法を見出した。こちらの反応も同時に発展させることで、中分子医薬品の原料となりうる、特殊アミノ酸をCO2から網羅的に合成可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CO2のラジカルアニオンがアルケンに付加する段階までは進行しているが、生じたラジカル中間体を遷移金属触媒上に捕捉し、窒素求核剤の配位による還元的脱離が想定通り進行しない。そこで、中間体を金属上に捕捉するのではなく、配位子同士のラジカルカップリングまたはSH2機構も視野に入れて、遷移金属触媒の検討を続ける。 また、最近見つかった光触媒とコバルト触媒を用いる、不飽和アミド化合物へのCO2固定化では、引き続き反応収率の向上とメカニズム解析を進め、特殊アミノ酸の網羅的合成法へと発展させていく。
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