研究課題/領域番号 |
23K14315
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長澤 翔太 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50846425)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | かご型炭化水素 / 生物学的等価体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は高歪みかご型炭化水素の医薬化学的利用価値を拡張するための有機化学的方法論を開拓するための基礎的研究について,下記の2つの題目に分けて実施する. 1.キュバンの新規ラジカル的官能基化手法を開発し,本手法によって得られる多置換キュバンが多置換ベンゼンの生物学的等価体となるか検証する. 2.キュバンの異性化により得られるかご型炭化水素である 1,3-置換クネアンの選択的合成法を見出し,メタ置換ベンゼンの生物学的等価体として提案する.
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研究実績の概要 |
高歪みかご型炭化水素のユニークな反応性,分子特性の理解を基盤として,その医薬化学的利用価値を拡張するための有機化学的方法論を開拓するために以下に示す2つの具体的方策を検討した. 「キュバン C-H 結合をラジカル的に切断し,様々なラジカルアクセプターと反応させるための一般的手法を開拓する」検討においては,種々検討の結果,タングステン酸光触媒を用いることで,触媒的なラジカル的キュバンC-H結合の切断が進行し,ラジカル受容体とのカップリングが進行することを見出した (Org. Lett. 2024, 26, 658).この結果は,ベンゼン環の生物学的等価体として知られるキュバンを精密に修飾するための新規な手法であり,この反応を用いた種々の医薬品アナログ等の合成における基盤技術となりうる. 「1,3-置換クネアンを,その構造的類似性と分子の剛直性に鑑み,メタ置換ベンゼンの生物学的等価体として提案する」検討においては,キュバン上の置換基が異性化に与える影響を精査することで,高選択的に1,3-置換クネアンを得る手法を見出した.この1,3-置換クネアンを原料とし,メタ置換ベンゼンを有する抗炎症薬であるケトプロフェンのクネアンアナログを合成することで,その生物活性の比較に成功した.さらに得られた生物活性の結果についてインシリコ解析を行うことでその解釈も行った(Chem. Eur. J. 2024, 30, e202303548).本研究の遂行過程で,2つの異なる研究グループより類似の内容の論文が報告され,また得られたアナログは「生物学的に等価」と言えるほどの活性を保持していなかったものの,申請者らはクネアン骨格を有する化合物の生物活性評価に世界で初めて成功した.本成果は,医薬分子設計の新たな指針を示唆するものであり、創薬科学研究の進展への寄与が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開始1年足らずで,それぞれの検討事項の概念実証と言える検討を終え,論文化を達成した.このことは申請者の想定以上の速度で検討が進んでいることを意味する.一方でこの論文化は,競合論文が報告されたため急遽行った側面が否めないため,申請者の求めるより包括的かつ網羅的なレベルでの報告には満たない.よって「当初の計画以上」とはいえないことから本評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
一年目で得た基盤技術をより発展させる方向で検討を行う. 「キュバン C-H 結合をラジカル的に切断し,様々なラジカルアクセプターと反応させるための一般的手法を開拓する」検討においては,異なるラジカル受容体を連結させる手法の開拓および位置選択的なラジカル官能基化を行う方法論の開発を行う.開発した手法を多置換キュバンを合成するための包括的方法論として体系化し,これを用いて多置換ベンゼン構造を有する医薬品のキュバンアナログの合成・活性評価を行い,キュバンを生物学的等価体として用いる創薬研究の基盤となる情報を集める. 「1,3-置換クネアンを,その構造的類似性と分子の剛直性に鑑み,メタ置換ベンゼンの生物学的等価体として提案する」検討については,より多様なアナログの合成と生物活性評価を行うとともに、不斉異性化反応も検討し,クネアンのキラリティーが生物活性に与える影響について精査する.
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