研究課題/領域番号 |
23K14316
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小関 良卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80780634)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 有機合成 / プロドラッグ / 抗がん剤 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、がん細胞内に豊富に存在する複数の化学種をトリガーとして、逐次的に活性化される新たなプロドラッグを提案し、がん細胞内選択的な薬物放出とそれに伴う副作用リスクの軽減化を目的とする。具体的には、活性酸素種との反応により生じる生成物に、さらにグルタチオンが反応することで薬物放出が可能となる刺激応答性置換基を組み込んだプロドラッグを設計する。作製したプロドラッグの細胞・動物実験による薬理活性試験、副作用評価を通じて、医薬品としての有効性を提示し、副作用の無い理想的な抗がん剤の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
がん細胞内や腫瘍組織に高濃度に存在する、活性酸素種、グルタチオン、β-ガラクトシダーゼ、水素イオン(低pH)等の化学的な刺激のうち、いずれか1つの刺激に応答したプロドラッグ設計が数多く報告されているが、単一の刺激では正常細胞との差別化が困難である。また、複数の刺激応答を利用するプロドラッグでは、刺激の種類毎に刺激応答性置換基を組み込んだ、いわば万能ナイフのような分子設計が報告されているが、このような設計の場合、薬物以外の成分の割合が大きくなる。一方、本研究で取り組むタンデム型プロドラッグでは逐次的な反応によりプロドラッグの活性化が可能であるため、有効成分以外の置換基の割合を削減した分子設計が可能となる。今年度はタンデム型プロドラッグ分子の合成を行った。本プロドラッグはヒドロキシ基を有する抗がん剤と刺激応答性置換基をエーテル結合により連結させた分子であり、活性酸素種による変換と続くグルタチオンとの反応により生じたフェノールの電子供与性により抗がん剤が放出される。実際に、抗がん剤としてSN-38を用いて、グルタチオンと反応可能なプロドラッグ中間体の合成に成功した。合成したSN-38プロドラッグ中間体の薬物放出性を評価するために、リン酸緩衝生理食塩水中にてグルタチオンを添加したところ、速やかにSN-38分子が放出されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重要中間体の合成が完了し、グルタチオンの添加により薬物放出が起こることを確認できた。一方、当初の予想に反して、プロドラッグの合成法の確立に時間を要したため、薬理効果の評価は次年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、タンデム型プロドラッグ分子の合成、ナノ・プロドラッグの作製、薬物放出性の評価、in vivo薬理活性評価を行う予定である。薬物放出性試験では、作製したナノ・プロドラッグの薬物放出性をROSおよびGSHの添加実験により検証する。設計通りの挙動を示す場合、本ナノ・プロドラッグはROS、GSHの両方が薬物を放出するために必要となる。また、腫瘍組織、および腎臓、肝臓等の正常組織をホモジナイズした破砕物を用いて、ex vivoにおける薬物放出性を評価する。組織破砕物とナノ・プロドラッグを混合後、SN-38プロドラッグおよびSN-38の量をHPLC-MS/MS分析により経時的に定量し、腫瘍組織内で選択的に薬物放出が起こることを証明する。in vivo薬理活性を明らかにするために、本研究では膵がん由来のがん細胞により調製したモデルマウスによる評価を行う。膵がんは腫瘍組織の線維化が強く、薬剤の到達性が特に大きな課題となっている疾患である。作製したナノ・プロドラッグをモデルマウスへ尾静脈注射により投与後、腫瘍の経時的な体積変化を指標に抗腫瘍活性を評価し、SN-38の関連物質で実用化されている塩酸イリノテカンと比較して高い活性を示すことを確認する。
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