研究課題/領域番号 |
23K14324
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
海東 和麻 名古屋大学, 情報学研究科, 特任助教 (10955488)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ケミカルスペース / 核内受容体 / ドッキングシミュレーション / 次元削減 / Cytochrome P450 / 機械学習 / バーチャルライブラリ / 創薬化学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、機械学習とドッキングシミュレーションを用いて、ドラッグライクな化合物から構成されるバーチャルライブラリ(VL)を構築する。ADMET 関連タンパク質-リガンド相互作用を高速かつ網羅的に評価し、ケミカルスペース中の ADMET 特性が優れた構造式 が多い領域を選択する。選択したケミカルスペースに対応する化合物の構造式を化学構造発生アルゴリズムである構造生成器により網羅的に発生させ、VL を構築する。構築した VL に含まれる化合物は ADMET の特性に優れ、構造活性相関の取得が容易であるため、この VL を探索することで医薬候補化合物創製が加速されると期待される。
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研究実績の概要 |
本年度は、化合物の特徴量設計と次元削減手法の確立を中心に研究を進めた。化合物の特徴量として、部分構造をバイナリーベクトルとして表現する Morgan Fingerprint と、分子量や水素原子受容体の数などの物理化学的特徴を検討した。また、次元削減手法として、principal component analysis(PCA)、uniform manifold approximation and projection (UMAP)を検討するために、これらの手法を実行するコードを構築した。 ドッキングシミュレーションソフトウェアである Autodock Vina を Python で実行する環境を整え、CYP を誘導する核内受容体である pregnane X receptor(PXR) と constitutive androstane receptor (CAR) に対して、ドッキングシミュレーションを実施した。公共データベースである ChEMBL より取得した PXR リガンド 524 化合物と CAR リガンド 60 化合物それぞれについて網羅的にドッキングシミュレーションを行い、実験的に得られた EC50 とシミュレーションにより得られた結合自由エネルギーとを比較した。EC50 と結合自由エネルギーが共に高い化合物として、核内受容体リガンドとして知られている T1317 類縁体が多く見られた。ドッキングシミュレーションにより得られたコンフォメーションを確認したところ、X 線結晶構造解析により得られたリガンドのコンフォメーションと類似した立体配座を取ることが明らかとなった。 ChEMBL 全体のケミカルスペースと PXR、CAR リガンドのケミカルスペースを比較したところ、PXR は比較的広範な分布を示したのに対し、CAR の分布は局所的であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特徴量を算出する方法として、化合物の部分構造に由来する fingerprint や、化合物の物理化学的性質を特徴量として用いたアプローチを予定通り実装、検討できた。さらに、次元削減手法として PCA と UMAP を実装し、ケミカルスペースの比較も行なった。 ADMET 関連タンパク質への網羅的ドッキングシミュレーションを実施するコードも完成しており、PXR と CAR に対する網羅的シミュレーションも実施済である。CYP に対するドッキングシミュレーションはまだ実施していないが、次年度には問題なく実施できる見込みである。 以上の観点から、予定よりやや遅れている箇所が若干ある一方、当初の予定より進展した部分もあることから、全体として概ね順調に研究は進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、CYP3A4 並びに CYP2D6 に対する網羅的ドッキングシミュレーションを実施する。相互作用を予測するモデルについては、アンサンブル機械学習手法の利用や、転移学習の活用も視野に入れて QSAR モデルの性能を向上させることを検討する。 また、構築した機械学習モデルの性能検証並びに学習データ追加を意図して、モデル化合物の有機合成並びに in vitro アッセイによる CYP 阻害作用検証を発展的に行うことも視野に入れる。
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