研究課題/領域番号 |
23K14341
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鄭 ミン境 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (00855760)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 超硫黄分子 / 抗ウイルス効果 / チオールプロテアーゼ / レドックス制御 / スパイクタンパク質 / 抗ウイルス / ポリスルフィド化タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
超硫黄分子は生体内で豊富に生成され、レドックスシグナル制御活性や抗炎症作用など多彩な生理機能を発揮する。一方、新型コロナウイルスは、感染した宿主内で複製して増殖するには自身が有するチオールプロテアーゼが必須である。研究代表者は最近、超硫黄分子がSARS-CoV-2のチオールプロテアーゼを阻害して抗ウイルス活性を発揮することを見出した。さらに興味深いことに、生体内の殆どのタンパク質はポリスルフィド化(超硫黄化)しているのに対し、ウイルス性チオールプロテアーゼは超硫黄化してないことが判明した。本研究課題では、ウイルスプロテアーゼのレドックス制御による抗ウイルス戦略の構築に向けた基礎研究を行う。
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研究実績の概要 |
研究代表者らはこれまで、超硫黄分子が生体内で豊富に生成され、レドックスシグナル制御活性や抗炎症作用など多彩な生理機能を発揮することを明らかにしてきた。一方、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ウイルス自身のゲノムに2つのチオールプロテアーゼ(PLpro、3CLpro)を有し、これらのプロテアーゼに依存して宿主内で複製・増殖することが知られている。研究代表者は、超硫黄分子の一つであるグルタチオントリスルフィド(GSSSG)が、SARS-CoV-2チオールプロテアーゼ活性を強力に阻害することを見出した。また、生体内の殆どのタンパク質は超硫黄化しているのに対して、ウイルスチオールプロテアーゼは超硫黄化していないことを明らかにした。本研究課題では、ウイルス性プロテアーゼのレドックス制御による抗ウイルス戦略の構築に向けた基礎研究を行う。 当該年度の解析により、GSSSGのみならず、無機超硫黄分子(Na2S2、Na2S3、Na2S4)がウイルスチオールプロテアーゼの活性中心に結合して阻害活性を示す一方、生体内のチオールプロテアーゼであるカテプシンBに対しては、大きな阻害活性を示さないことを明らかにした。さらに、超硫黄分子によって阻害されたチオールプロテアーゼに還元剤を処理したところ、ウイルスプロテアーゼの活性は回復しなかった。従って、超硫黄分子はウイルスチオールプロテアーゼ選択的に強力な阻害活性を発揮することが示唆された。また、無機超硫黄分子はウイルス表面のスパイクタンパク質の構造維持に重要なジスルフィド結合を切断し、構造変化を引き起こすことで、本ウイルスの感染性を抑制する可能性が示唆された。以上のことから、超硫黄分子による抗ウイルスメカニズムは、今後レドックス制御による新規抗ウイルス戦略に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実施計画に沿って、超硫黄分子によるウイルスチオールプロテアーゼ活性の阻害作用について解析を行った結果、GSSSGあるいは無機超硫黄分子がウイルスチオールプロテアーゼに対して強力な阻害活性を示すことを見出した。また、超硫黄分子によって阻害されたチオールプロテアーゼに還元剤を処理したところ、高度に超硫黄化されているカテプシンB(生体内チオールプロテアーゼ)やパパイン(植物チオールプロテアーゼ)は完全に活性が回復する一方、超硫黄化されていないウイルスチオールプロテアーゼの活性は回復しなかった。従って、チオールプロテアーゼの超硫黄化レベルが超硫黄分子による阻害の選択性に大きく寄与することが示唆された。さらに、超硫黄分子は、当初の想定を超えてウイルスのチオールプロテアーゼのみならず、スパイクタンパク質も標的にして抗ウイルス効果をもたらすことが明らかとなり、超硫黄分子によるSARS-CoV-2の抗ウイルスのメカニズム解明に関する知見を深めることができ、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
感染細胞における超硫黄分子による抗ウイルス活性を解析するため、超硫黄分子の主な産生酵素であるミトコンドリア型システイニルtRNA合成酵素(CARS2)をノックダウンしたVeroE6/TMPRSS2細胞を作製してSARS-CoV-2を感染させた後、GSSSGあるいは無機超硫黄分子を処理する。その後、plaque assay又はRT-PCRを用いて超硫黄分子の抗ウイルス活性を評価する。また、最近研究代表者らは、呼気中に無機超硫黄分子が多く放出されることを見出した。そこで、本ウイルスを様々な超硫黄分子種と反応させた後、細胞に感染させてplaque assayを行うことで、呼気中に放出される超硫黄分子がウイルスの感染性を抑制かを検討する。 さらに、感染動物における超硫黄分子の抗ウイルス活性を解析するため、ヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を発現するACE2トランスジェニックマウス(ACE2-Tgマウス)及びCARS2欠損ACE2-Tgマウスを作製し、本ウイルスを気管内感染させ、内因性超硫黄分子の影響について解析を行う。また、GSSSGの抗ウイルス効果を検討するため、SARS-CoV-2感染シリアンハムスターにGSSSGを投与し、体重変化・肺病変部の改善度について詳細に解析する。
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