研究課題/領域番号 |
23K14370
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
川田 敬 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (40973772)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 蒼朮 / 抗神経炎症 / BV2細胞 / 細胞外小胞 / マウスミクログリア由来細胞 / ELNs / 新規抗神経炎症治療 / 神経炎症 / ミクログリア細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
神経変性疾患発症への関連が報告されている神経炎症に対する創薬研究で困難な点は血液脳関門バリアにより薬剤が脳に到達できない点である。近年、植物由来ELNsには他生物への生理活性や特異的な臓器移行性、脂質二重層内に薬物を取り込む性質が報告されている。申請者は複数のELNsの脳内への移行性及びミクログリア細胞に対する抗炎症作用、さらにステロイド系抗炎症薬Dexamethasoneを封入できることを見出している。本研究ではELNs固有の抗神経炎症作用に加えて効率的に脳に移行する薬物送達の担体としてDexamethasoneを封入することで新規抗神経炎症治療薬を創ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
2023年度は本研究の目的である新規抗神経炎症治療の開発のため、複数の植物由来Exosome like nano-particles(以下ELNs)のうち、最も強い抗神経炎症作用の活性が認められた蒼朮由来ELNsの薬理作用について検討を行った。 ALR-ELNはマウスミクログリア由来BV2細胞(以下BV2細胞)に取り込まれることを確認した。ALR-ELNは抗炎症活性を持つ可能性のあるmicroRNA (ath-miR166f、ath-miR162a-5p、およびath-miR162b-5p)を含有しており、BV-2細胞をALR-ELNで前処理すると、一酸化窒素、IL-1β、IL-6、TNF-αのレベルが有意に低下し、Lipopolysaccharide(LPS)刺激による炎症促進作用が抑制された。特に、LPS暴露により増加したBV-2細胞中のIl1b、Il6、iNos、ctl2、ctl10のmRNAレベルは、ALR-ELN投与により有意に減少した。またヘムオキシゲナーゼ1、Irf7、ccl12、Irg1のmRNAレベルもALR-ELN処理投与に有意に増加した。さらに、マウス初代ミクログリア細胞をALR-ELNで前処理すると、一酸化窒素レベルが有意に低下することにより、LPS刺激による炎症促進作用が抑制された。この結果は、ALR-ELNがマウスミクログリア細胞に対して抗炎症作用を示すことを示している。本研究成果はFrontiers in Pharmacologyにタイトル"Atractylodes lancea (Thunb.) DC. [Asteraceae] rhizome-derived exosome-like nanoparticles suppress lipopolysaccharide-induced inflammation in murine microglial cells"として報告し、2024 年 4 月 15 日に受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定していた実験結果が順調に得られており、現在のところおおむねに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ALR-ELNsの抗炎症作用を示す薬理作用について、 1.次世代シークエンス解析を用いて蒼朮由来ELNsがミクログリア細胞に対して及ぼす遺伝子調節機能を網羅的に検討する。炎症誘導するためにLPS刺激を行ったBV2細および蒼朮由来ELNsを前処置後にLPS刺激を行ったBV2細胞において、それぞれmRNAを抽出する。各サンプルについて次世代シークエンス解析により遺伝子発現変化を比較する。2.ALR-ELNsに3つの成熟miRNAが含有されることを明らかとしているため、公共データベース(psRNATarget: A Plant Small RNA Target Analysis Server)を用いて、ALR-ELNsに含有される成熟miRNAが、ミクログリア細胞のどの遺伝子をターゲットとし作用するのかを検討する。3.1.2の結果より、共通する遺伝子について検討を行う。具体的には、リアルタイムPCR解析を用いてターゲットとするmRNA発現を確認する。4.最後に、ALR-ELNsに含有される成熟miRNAを人工的に合成し、ミクログリア細胞に導入することで、蒼朮由来ELNsと同様に抗神経炎症作用を示すかを検討する。 以上の検討より、ミクログリア細胞に対し、蒼朮由来ELNsが示す抗神経炎症作用機序を明らかとする。 また、ALR-ELNsへの効率的なデキサメタゾン封入方法について条件設定の検討を行う。
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