研究課題/領域番号 |
23K14372
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
|
研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
北村 雅史 城西大学, 薬学部, 准教授 (10825392)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | 生薬 / 漢方薬 / COVID-19 / SARS-CoV-2 / 合胞体 / リポジショニング |
研究開始時の研究の概要 |
COVID-19患者に認められる細胞同士の不可逆的な融合(合胞体形成)は重症化や後遺症の一因であり、分子メカニズムに基づいた治療薬開発が期待されている。本研究は培養細胞を用いた簡易スクリーニングにより合胞体形成阻害効果が認められた生薬「シャクヤク(芍薬)」と「カンゾウ(甘草)」に着目し、阻害効果の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。「シャクヤク、カンゾウが何故、SASR-CoV-2 スパイクタンパク質(Sタンパク質)による合胞体形成を抑制するのか?」という疑問を解決することで、既存薬との組み合わせや漢方薬の有用性を分子メカニズムの観点から提案する。
|
研究実績の概要 |
COVID-19患者に認められる細胞同士の不可逆的な融合(合胞体形成)は重症化や後遺症の一因であり、分子メカニズムに基づいた治療薬開発が期待されている。本研究では、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質(Sタンパク質)が細胞に発現することにより引き起こされる合胞体(細胞同士が融合し複数の核が集まった細胞)形成過程において、シャクヤクエキス、カンゾウエキスによる抑制効果を定量的に明らかとし、分子メカニズムの解明を試みることを目的としている。まず、HEK293細胞にスパイクタンパク質を形質導入し、形成される合胞体化した細胞を免疫染色により定量化した。免疫染色により合胞体形成を定量化したところ、シャクヤク及びカンゾウ存在下で合胞体形成が有意に抑制された。次に、Sタンパク質発現したHEK293細胞をドナー側の細胞として、furinを発現させた細胞をアクセプター側の細胞として、これらを共培養することにより合胞体形成モデルを樹立した。加えて、蛍光タンパク質並びに免疫染色による定量化の条件検討を行い、アクセプター/ドナー細胞の共培養により形成される合胞体を定量化した。シャクヤク及びカンゾウ、並びにその主要成分(ペオニフロリン、アルビフロリン及びグリチルリチン酸など)による合胞体形成抑制効果を評価したところ、ドナー(Sタンパク質)とアクセプター(furin)の合胞体形成モデルにおいて、シャクヤクとその一部の成分が合胞体形成を有意に抑制した。現在、これらの効果について、合胞体形成に関与する因子の個別解析を実施している。今後、網羅的な解析(mRNA発現解析やプロテオーム解析)を実施し、形成抑制効果の分子メカニズムについての統合的な解析を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度実施予定の項目は実施がすることができた。また、次年度予定している計画について一部前倒しで、条件検討を実施している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、計画通り、シャクヤク、カンゾウによる合胞体形成阻害効果について、個別解析と網羅的解析の両面から、その分子メカニズムを明らかにする。シャクヤク及びその成分では、アクセプター側としてfurinを強制発現した細胞で阻害効果が認められたことから、ウエスタンブロットによるSタンパク質のプロセシング抑制効果に関する評価に加え、無細胞系によるfurin活性阻害評価を実施する。シャクヤク、カンゾウ存在下による発現変動を解析するため、mRNA発現解析やプロテオーム解析を実施し、形成抑制効果の分子メカニズムについての統合的な解析を進める予定である。併せて、SARS-CoV-2の複製に関わるウイルス由来プロテアーゼ[キモトリプシン様プロテアーゼ(3CLpro)活性やパパイン様プロテアーゼ(PLpro)]に対する生薬エキスの阻害効果について評価することで、既存薬との組み合わせや漢方薬の有用性について分子メカニズムの観点から解明を試みる。
|