研究課題/領域番号 |
23K14392
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
溝井 健太 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (70849546)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 胆汁排泄 / 薬物-生体内基質間相互作用 / 薬物相互作用 / 排出系トランスポーター / 薬物性肝障害 / 相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
薬物性肝障害 (DILI) の発現は、医薬品候補薬物の臨床試験中断や、医薬品の市場撤退の主要原因となっている。DILIの発症は薬物や胆汁酸の胆汁排泄あるいは排出系トランスポーターを介した薬物相互作用や薬物-生体内基質間相互作用と密接に関係していると考えられる。本研究では、肝がん由来細胞やヒト肝由来胆管上皮様オルガノイドを膜基材上に単層培養することにより、薬物や胆汁酸の胆汁排泄を定量的に評価でき、それらの胆汁排泄を阻害する可能性のある薬物を評価する試験系を構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
薬物性肝障害 (DILI) の発現は、医薬品候補薬物の臨床試験中断や、医薬品の市場撤退の主要原因となっている。胆汁排泄は、薬物やその代謝物がヒト生体内から消失する主な経路のひとつであり、排出系トランスポーター (ETPs) が重要な役割を担っている。DILIの発症は薬物や胆汁酸の胆汁排泄あるいはETPsを介した薬物相互作用や薬物-生体内基質間相互作用と密接に関係していると考えられる。しかしながら、薬物や生体内基質 (胆汁酸) の胆汁排泄や、他の薬物による排泄阻害作用を定量できるin vitro評価系が乏しいことが課題である。本研究では、薬物や胆汁酸の胆汁排泄を定量的に評価でき、それらの胆汁排泄を阻害する可能性のある薬物を評価する試験系を構築することを目的とした。 令和5年度はヒト胆管細胞オルガノイドを用いた薬物の胆汁排泄評価システムを構築した。はじめに胆管細胞オルガノイドの細胞単層膜におけるETPsのmRNA発現量および局在を確認したところ、薬物の胆汁排泄に関与するP-糖タンパク質 (P-gp) や多剤耐性関連タンパク質2 (MRP2)、乳がん抵抗性タンパク質 (BCRP) が発現しており、それらは細胞単層膜の上方 (A側、膜基材側) に局在していることが明らかとなった。したがって、本評価システムはA側が胆管腔側である可能性が示唆された。つぎにETPsの機能を評価するために輸送試験をおこなった結果、胆管腔側に向かって薬物が輸送されることが示唆された。したがって本評価システムは、薬物の胆汁排泄を定量的に評価できる可能性がある。本研究成果は薬物が胆汁排泄型か否かを推測するためのツールとして、あるいは薬物や胆汁酸の胆汁排泄を阻害することで潜在的にDILIを惹起する薬物を見出す手法として、創薬に役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、ヒト胆管細胞オルガノイドを用いた薬物の胆汁排泄評価システムを構築し、そのETPsの①mRNA発現量、②局在および③機能を確認することを計画した。はじめに①について、ヒト胆管細胞オルガノイドのmRNA発現量を初代ヒト肝細胞および初代ヒト胆管上皮細胞と比較した。その結果、胆管細胞オルガノイドにおいてCK19 (胆管上皮マーカー) およびETPs (P-gp、MRP2、BCRP) の発現量が高値である事が明らかとなった。続いて②について、 胆管細胞オルガノイドを膜基材上で単層膜化させ、ETPsの局在を免疫染色から評価した。ETPsはA側 (膜基材側) に局在し、DAPI (basalマーカー) はB側 (プレート側)、phalloidin (apicalマーカー) はA側に局在していた。これらの結果から、本評価系はA側が胆管腔側である可能性が示唆された。また③について、P-gp、MRP2、BCRPの典型基質を用いた輸送試験をおこない透過係数比 (ER = B to A/A to B) を算出した。各ER値は1.0以上であり、ETPsの阻害薬存在下ではこの輸送方向性が消失しERは1.0に近づいた。したがって、これらはトランスポーターを介した輸送であることが明らかとなった。各トランスポーターの基質となる薬物は、A側方向すなわち胆管腔側に向かって輸送されることが示唆された。 以上の検討より、胆管細胞オルガノイドの細胞単層膜による本評価システムは、上方が胆管腔側になるように配向しており、薬物の胆汁排泄を定量的に評価できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、はじめにヒト胆管細胞オルガノイドの細胞単層膜を用いた薬物の胆汁排泄評価システムを用いて、ヒトにおいて胆汁排泄されることが知られている薬物を基質として輸送試験を実施する。A側 (膜基材側) あるいはB側 (プレート側) に被験薬物を添加し、非添加側の基質濃度をLC-MS/MSなどを用いて経時的に定量することによりERを算出する。さらに、各ETPの阻害薬物の添加あるいはsiRNAによるノックダウン処理を用いた際のERの変化から、被験薬物がどのETPによって輸送されたかを評価する。並行して胆汁酸輸送に関与する事が知られているMRP2が高発現しているヒト肝がん由来細胞株 (Huh-7細胞またはHepG2細胞) を膜基材上で単層膜化させた評価システムを構築し、胆汁排泄薬物の輸送試験を実施する。適宜阻害薬を用いることにより当該薬物の胆汁排泄におけるMRP2の関与を評価し、胆汁酸との相互作用を推定する。 つぎに胆汁酸を基質として輸送試験を検討し、胆汁うっ滞の副作用を有する薬物などを用いて胆汁酸の胆汁排泄を阻害する物質を評価する。これらの検討から、本評価系が薬物や胆汁酸の胆汁排泄を定量的に評価でき、それらの胆汁排泄を阻害する可能性のある薬物を評価する試験系となり得るか否かを判断する。
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