研究課題/領域番号 |
23K14431
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 巧 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (50793858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 神経上皮 / 細胞周期 / 核運動 / 細胞運命 / 神経発生 / 細胞運動 |
研究開始時の研究の概要 |
胎生期の大脳原基において、ある時期から神経前駆細胞は対称分裂から非対称分裂へと分裂パターンを転換する。この転換には細胞周期のG1期の長さが影響すると説明されてきたが、G1期長を調節する仕組みは理解されておらず、実質的に転換の仕組みは不明である。申請者は神経前駆細胞の核の動きと細胞周期の同調に着目し、人為的に核の運動範囲を変化させることで分裂パターンが変化することを見出した。核運動の範囲・時間がG1期の長さを規定し、その長さが結果的に分裂パターンを決定している可能性が想定される。本研究では、(1)核の運動範囲―G1期長―分裂パターンの関連を検証し、さらに(2)G1期からS期への転換の仕組みを明らかにする。
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研究実績の概要 |
胎生期の大脳原基において、ある時期から神経前駆細胞は未分化細胞を産生する増殖性の対称分裂から、分化細胞を産生する非対称分裂へと分裂パターンを転換する。この転換には細胞周期のG1期長が影響すると説明されてきたが、G1期長を調節する仕組みは理解されておらず、実質的に転換の仕組みは不明である。本研究では、細胞周期の進行と同調した脳室帯内での核運動に着目し、その動態がもたらす細胞周期長の調節機構の解明を目指した。 免疫組織学的な解析により、分裂パターンの転換が起きる時期において、脳室帯の肥厚と細胞密度の増加が確認された。また、組織培養を用いたライブ観察により、胎生日数の増加に伴い核運動の速度が減衰することも見出された。発生の進行に伴う脳室帯の状況変化は、核運動に費やす時間を変化させる要因である可能性が示唆された。脳室帯の状況変化が核の運動時間を変化させ、その変化が細胞周期長に影響するのであれば、脳室帯の厚みか細胞密度を人為的に操作することで、細胞周期長に変化が生じる可能性が考えられる。この仮説を検証するために、マウス大脳においてNeurog1/2 あるいはLzts1を異所性発現させて脳室帯を薄くした。FlashTagとEdUを併用して、薄化した脳室帯における細胞周期長の変化を調査した結果、G1期の有意な短縮が認められた。また、ライブ観察により、薄化した脳室帯内の細胞は通常の速度で核運動を行うが、脳室帯が薄いためにG1期に起こる脳室帯下端から上端までの核移動に費やす時間が短縮されることが分かった。さらに、FlashTagと分化マーカーTbr2の免疫染色を併用し、産生された細胞の分化度を調査した結果、薄化した脳室帯において有意に未分化細胞の産生が増加したことが見出された。以上より、核運動に費やされる時間がG1期の調節に関与しており、最終的に分裂パターンに変化をもたらすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説であった「神経前駆細胞において核運動に費やす時間がG1期長を規定し、最終的な細胞運命選択に影響を及ぼす」が検証され、結果が想定通りであったことが見出されたため。
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今後の研究の推進方策 |
脳室帯の厚みと細胞密度が核運動に費やす時間に影響を与える可能性を追加で検証するために、既存のシミュレーション(Shinoda et al., 2018)を再構築し、解析を行う。 神経前駆細胞の核が脳室帯上端へ到達することにより、G1期がS期へ移行する可能性が示唆された。この移行に関する詳細な分子機構を解明する必要がある。現在、分泌因子と機械刺激に関連した因子の阻害剤やそれら因子の活性を示すプローブを利用して、G1-S期移行のトリガーとなる候補を調査している。得られた成果を論文にまとめる。
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