研究課題/領域番号 |
23K14468
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 千裕 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10865447)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 癌微小環境 / 肺癌 / 癌関連線維芽細胞 / 空間トランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
癌関連線維芽細胞(CAF)は、細胞外基質等を分泌して癌の発生や進行に影響する。CAFは微小環境の変化を受けて性質を変えることから、組織の破壊と再生を慢性的に繰り返した間質性肺炎に生じた肺癌では、一般的な肺癌とは異なる性質を示すCAFが存在すると考えられる。今回は、間質性肺炎合併肺癌と一般的な肺癌の空間トランスクリプトームの比較や、免疫染色、培養細胞を用いた検討を通して、CAFの発現する遺伝子や産生するタンパクがどのような違いを示すのか、これらの違いが間質性肺炎合併肺癌の発生や進行にどのような影響を与えるのか明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
2022~2023年に東北大学病院で切除された肺癌症例から間質性肺炎合併肺腺癌(LC with IP) 、間質性肺炎非合併肺腺癌 (LC without IP) をそれぞれ3例ずつ選択し、腫瘍部と非腫瘍部が入る箇所を選び組織マイクロアレイを作製した。株式会社iLACに業務委託し、GeoMx RNA アッセイ (NanoString) を用いた空間トランスクリプトーム解析を行った。上皮マーカーであるpan-cytokeratinと、CAFマーカーであるα-SMAの蛍光免疫染色を行い、Region of interest (ROI)、Area of illumination (AOI) の設定を行った。各ROIをCK+/α-SMA-の癌・上皮のAOIと、CK-/α-SMA+のα-SMA陽性間質のAOIに分けてRNA抽出し解析を行った。α-SMA陽性間質の解析では、LC with IPと背景IPの比較で 86個のDEGs (differentially expressed genes) が特定された。また、LC with IPとLC without IPの比較で 151個のDEGsが検出された。Pathway Enrichment解析では、LC with IPのα-SMA陽性間質におけるサイトカインに対する応答の活性化や、細胞外基質-受容体相互作用の低下が示された。DEGの中から、サイトカインや細胞外基質との関連性があり、CAFでの発現が報告されている遺伝子を選択し、免疫染色を行った。LC with IPでは、LC without IPや、背景IPに比べ、一部のintegrinに発現低下が認められた。加えて、CellChatによる相互作用解析の結果、LC with IPでは、癌-間質間の相互作用がより活性化しており、特に液性因子を介した相互作用が活発であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間トランスクリプトーム解析を行い、間質性肺炎合併肺癌のCAFを特徴付けるマーカーの候補を挙げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
候補マーカーの免疫染色をさらに追加する。さらに、1) 特発性間質性肺炎合併肺癌、2)二次性間質性肺炎合併肺癌、 3) 間質性肺炎非合併肺癌、4)肺癌を合併しない間質性肺炎 それぞれ15例程度について、標的因子のタンパクの発現量・分布を検討するとともに、組織リモデリングとの関連性を明らかにすべくElastica-Masson染色やAlucian-blue PAS染色と比較する。また、培養細胞を用いた検討を開始する。癌組織由来の線維芽細胞の初代培養を行う。加えて、データベースに公開されているRNAシーケンスデータと本研究で得られた結果との比較を行いたい。
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