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肺腺癌における胃腸上皮マーカーの発現と薬剤抵抗性に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 23K14469
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分49020:人体病理学関連
研究機関筑波大学

研究代表者

河合 瞳  筑波大学, 医学医療系, 助教 (50895026)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
キーワード肺腺癌 / 胃腸上皮形質 / HNF4α / A549 / MRP2 / 胃腸上皮マーカー / 薬剤抵抗性
研究開始時の研究の概要

浸潤性粘液性腺癌(invasive mucinous adenocarcinoma:IMA)は胃腸上皮への分化を呈する肺腺癌である。IMAは肺腺癌の中でも経気道散布による肺内転移を好発する予後不良の組織型とされ、分子標的治療の対象となる遺伝子異常の頻度が低く、免疫療法や化学療法にも抵抗性である。本研究は、胃腸上皮分化によってIMAの化学療法抵抗性が獲得されるとの仮説の元、肺腺癌の胃腸上皮分化に関与する分子と、薬剤抵抗性との相関について、ヒトの腫瘍組織と肺腺癌細胞株を用いて免疫組織化学的および分子生物学的に検討する。

研究実績の概要

胃腸上皮化生・薬剤抵抗性に関連するタンパクとして、IMAの細胞膜に発現し、正常の肺胞・気管支上皮に発現しないことが先行研究(研究課題/領域番号:21K15381)で知られているMRP2に着目した。異なるクローン由来の3種類の市販のMRP2抗体を購入し、多臓器の正常・腫瘍組織を搭載したTissue microarray (TMA)を作成し、免疫染色の条件検討を行った。細胞膜陽性像が最も観察しやすかった1種類の抗体を用いて、肺腺癌309症例を搭載したTMAで免疫染色を行った。MRP2の陽性率はIMA: 85%(23/27例), non-IMA: 22%(63/282例)であった。
siRNAによるMRP2の発現抑制実験については、胃腸上皮形質を有する細胞株としてA549を、肺胞上皮形質を有する細胞株の代表としてHCC827をそれぞれ用いて行ったが、いずれの細胞株においても、最大濃度のsiRNAを用いても発現抑制が成功しなかった。
A549はHNF4αを高発現すること、KRAS遺伝子変異を有する肺腺癌細胞株であることから、しばしばIMAの代替として用いられるが[PMID: 34654723]、A549をIMAの代替として用いるべきか、胃腸上皮化生を呈する低分化な肺腺癌として用いるべきか検証するため、39種類の肺腺癌細胞株の遺伝子発現・変異の検索およびゼノグラフトを用いた免疫組織化学的な比較検討を行った。その結果、A549は非粘液性の低分化な形態を呈し、免疫組織化学的にHNF4αの発現・SMARCA4の発現低下を呈し、KRAS, SMARCA4の遺伝子変異を有していた。更に、241症例の肺腺癌を用いた検討で、HNF4α陽性の低分化型肺腺癌でSMARCA4の欠失の頻度が高く、予後不良であることが示された。以上より、A549は胃腸上皮形質を呈する肺腺癌の代替として用いるべきと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

siRNAを用いた機能解析の実験で適切な条件を決定することができなかった。条件検討に時間を要し、研究計画に遅れが生じている。
A549については肺腺癌細胞株の中でも特にMRP2の発現が高いため[PMID: 11410522]、siRNAによる発現抑制実験ではウエスタンブロットの検出感度以下のレベルまで発現を抑制することが困難である可能性を考慮し、MRP2の発現がA549に比べて低いHCC827で条件検討を行ったが、実験の成功には至らなかった。そのため、細胞株を用いた実験よりも優先して免疫染色による検討を進めることとした。免疫組織化学については条件検討、多数症例での染色の評価が完了しており、妥当な進捗を得られていると考えている。
一方、siRNA実験が成功しない原因を考察するにあたり、我々はA549におけるMRP2, HNF4αの発現が極端に高いことに着目し、A549の形態学的および分子病理学的な特徴を詳細に検討するに至った。その結果、A549が胃腸上皮分化を呈する予後不良な低分化癌の代替であることを見出すことができた[Kawai H et al, Virchor Archiv 2024; published online 06 May]。

今後の研究の推進方策

MRP2については、肺腺癌細胞株を用いた機能解析実験の実施が困難であるため、免疫組織化学を用いた臨床病理学的な検討を優先して行う。MRP2の染色は完了しているため、臨床情報とMRP2の発現との相関関係を今後検討していく。現時点では陽性の判定について5%をcut offとしているが、適切なcut off値の設定や、染色パターン(細胞膜頂部のみ、細胞膜全体、等)の条件については今後も検討を続ける。また、その他の薬剤抵抗性マーカー(MRP1等)や、胃腸上皮マーカー(HNF4α, CDX2等)についても、同様の検討を進めていく。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Whole-genome sequencing reveals the molecular implications of the stepwise progression of lung adenocarcinoma2023

    • 著者名/発表者名
      Haga Y, Sakamoto Y, Kajiya K, Kawai H, Oka M, Motoi N, Shirasawa M, Yotsukura M, Watanabe S, Arai M, Zenkoh J, Shiraishi K, Seki M, Kanai A, Shiraishi Y, Yatabe Y, Matsubara D, Suzuki Y, Noguchi M, Kohno T, Suzuki A.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 8375-8375

    • DOI

      10.1038/s41467-023-43732-y

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Update in the AI Diagnosis for Lung Adenocarcinoma Invasion2023

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Kawai, Yasushi Yatabe, Akihiko Yoshizawa, Yasuhiro Sakai, Motoharu Ohkawa, Kazuhiro Hotta, Masayuki Noguchi, Daisuke Matsubara
    • 学会等名
      The 7th Asia-Australasia Pulmonary Pathology Society Annual Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] HNF4a陽性の高悪性度肺腺癌は、BRG1欠失を高頻度に示す予後不良な一群である2023

    • 著者名/発表者名
      河合瞳、三浦珠希、川松夏実、中川智貴、柴綾、石川俊平、坪地宏嘉、萩原弘一、松原大祐、仁木仁郎
    • 学会等名
      第112回病理学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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