研究課題/領域番号 |
23K14487
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 紀子 東京医科大学, 医学部, 講師 (50526176)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 病理解剖 / 小児 / Genetic autopsy / Genomic autopsy / Molecular autopsy / 網羅的遺伝子解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、遺族から同意を得た小児病理解剖例に対し、網羅的遺伝子解析を行う。更に病理解剖組織における異常遺伝子の発現解析を行い、総合的な考察を行う。外来にて、遺族へ結果を説明し、ゲノム解析追加による改善効果を客観的に評価する。本研究により、新たな疾患原因遺伝子の発見や研究につながる可能性が期待出来るだけでなく、より質の高い結果を遺族へ還元するための新しい小児病理解剖モデルを提供することを目指す。
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研究実績の概要 |
小児の病理解剖は、数は少ないものの解剖率は高く、社会的意義が大きいと考えられる。しかし、先天奇形や希少疾患が多いこと、臓器が極端に小さい等のため、実際のところ、死因や死に至った機序を推定することは容易ではない。そこで本研究課題では、従来の病理解剖手技に、網羅的遺伝子解析を加えることで死因判明率が向上するか、より深く病態に迫れるかについて検討を行った。 方法として、2022年からの埼玉県立小児医療センターの病理解剖例において、遺族から網羅的遺伝子解析を行うことに同意を得た症例について、染色体解析ならびに全エクソーム検査を含むゲノム解析(以後、Genetic autopsyと呼ぶ)を行った。病的なゲノム異常がみつかった場合、臨床経過や解剖所見と照合し、死因と関連した異常かどうか、遺伝科医師、臨床医と共に検討した。 2022年~2023年の2年間でGenetic autopsyが行われた症例は、小児病理解剖総数21例中7例(約33%)であった。7例のうち、4例でpathogenicな異常が見つかり、3例では何も検出されなかった。4例のpathogenicな異常のうち、死因に関連した可能性があると判断された異常は3例であった。つまり、死因に関連した可能性があるゲノム異常の検出率は、7例中3例(約43%)という結果であった。3例のゲノム異常は、TNNI3変異、SCN1A変異、Xモノソミーモザイクであり、解析対象となった患児の年齢は0日~11歳、中央値は7日であった。 TNNI3変異を認めた症例では、TNNI3がコードするサルコメア蛋白であるトロポニンIの発現を心筋組織にて検討した。ウエスタンブロット法にて、リン酸化トロポニンIの発現が年齢をマッチングさせたコントロール症例群に比して、発現量が低いことが判明し、心筋細胞レベルでの収縮能低下があったことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標とする解析数は、研究期間の3年間で15例であり、概ね達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、死因に関連した病態を生じた可能性があるゲノム異常が見つかったのは7例中3例(約43%)である。この数字は、文献的に報告されている、法医学分野における乳幼児突然死例における検出率や、NICU患者の死亡例における検出率と比べると、かなり高い。一般的に考えて、病理解剖例は法医解剖例と異なり、元々疾患を持つ患者が対象であるため、より異常が出やすい可能性があるが、まだサンプル数が少ないため、引き続き解析を行って症例を蓄積して判断する。
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