研究課題/領域番号 |
23K14491
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
重松 康之 公益財団法人がん研究会, 有明病院 病理部, 医員 (40749511)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 肝細胞癌 / 大腸癌 / マイクロバイオーム / 腫瘍内細菌 / 発癌 / 再発 |
研究開始時の研究の概要 |
肝硬変を発生母地としない非ウイルス性非アルコール性肝癌が増加している。近年、体内の細菌叢が様々な癌腫の進展や転移再発に関与する可能性が指摘されはじめた。一方で、本腫瘍と細菌叢との関係は未だ不明な点が多い。本研究では、本腫瘍の発癌および再発に関係する細菌を明らかにするため、本腫瘍内にいる細菌叢の探索、発癌および再発と関係する細菌の絞り込みと同定、同定した細菌を持つ腫瘍の病理学的特徴の評価、同定した細菌の起源と体内分布の評価、を行う。
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研究実績の概要 |
1. 肝細胞癌のマイクロバイオームの解析: 当研究では360症例の肝細胞癌患者からの凍結検体から核酸を抽出し、16S rRNAに基づく網羅的解析を準備中である。この研究は、肝細胞癌の発症および進行におけるマイクロバイオームの役割を解明することを目的としている。さらに、組織内の病原菌を検出するための技術開発において、RNA in situ hybridization法の陽性コントロールの作製技術を開発し、これに関する特許を申請準備中である。
2. 大腸癌肝転移巣のマイクロバイオーム解析:大腸癌肝転移後の肝細胞癌の合併と関連する菌を評価するため大腸がんの肝転移を持つ250症例の検体から核酸を抽出し、包括的なマイクロバイオーム解析を実施した。この解析では、細菌及び真菌の同定に加え、特定の病原菌(Fusobacterium nucleatum, PKS-positive E.coli, Bacteroides fragilisの毒素)の定量PCRを行った。F. nucleatumの腫瘍内濃度が全身の免疫応答、腫瘍微小環境、および再発パターンと有意に関連していることを確認し、現在、研究成果を投稿中である。
3. 肝細胞癌に関する新しい知見の収集: マイクロバイオームと肝細胞癌との関係の評価に際して、肝細胞癌の基礎的な知見の収集を目的として、腫瘍細胞とその免疫微小環境との相互作用に焦点を当てた。具体的には、腫瘍に対する免疫応答の開始に重要なタンパク質であるMHC class Iの腫瘍細胞における発現消失が、腫瘍細胞のbiliary/progenitor featureや免疫抵抗性の腫瘍微小環境と関係することを明らかにし論文報告した。また、VETCと呼ばれる組織構築とその免疫抵抗性の腫瘍微小環境が、炎症性サイトカインであるオンコスタチンMの抑制と関連することを明らかにし論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞癌および大腸癌を合わせた約600の検体からの核酸抽出が完了したほか、その約半数の検体において網羅的なマイクロバイオーム解析が完了した。さらに、肝細胞癌における新たな知見として、腫瘍細胞と腫瘍微小環境との関係性を明らかにし、これらの成果は既に論文化されている。これらは、本プロジェクトの大きな進展と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、肝細胞癌検体から抽出した核酸を用いて網羅的なマイクロバイオーム解析を実施する予定である。また、ゲノム異常と腫瘍内の微生物群との関連性が指摘されているため、肝細胞癌検体のゲノム異常についても評価を行う。さらに、大腸癌の肝転移から得られたマイクロバイオーム解析の結果と、先行研究から得られた知見を統合し、特定の微生物と臨床病理学的特徴との関連性を詳細に検討していく。
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